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第17話 朝食

「はい、お待ち」


コト、と裕斗の席にパンとシチューが置かれる。


「いただきます!」


裕斗は待ちに待った食事に、満面の笑みを浮かべて手の平を合わせた。


ヴァネッサと会った後、裕斗たちは本部へと戻り、そこにある食堂で食事をとるところだった。


ちなみにエルザとシーラは朝食をすませたということでここにはおらず、マルセルは先に団長の元へ向かうということでまだいない。


裕斗はまずパンを手に取り、かじりつく。


少し硬いけど、悪くない味だ。


次に裕斗はシチューに手を出す。

スプーンですくい、スープに浮かんだ肉を口へと運ぶ。


「ん!おいしい!」


肉は柔らかくないが歯ごたえがあるし、スープの方も味は申し分ない。


裕斗はシチューにがっついた。


そんな彼の姿を見て、隣に座っていたルイーゼは微笑んだ。


「そうであろう?その料理はここのコックの得意料理だからな」


「何言ってんのよ。こんなものより帝国の料理の方がおいしいわ」


そう言いながら、向かいに座るヴァネッサは渋々といった感じでシチューを口に運ぶ。


ちなみに今の彼女は白の制服ではなく、オルトランデ騎士団の黒い制服を着ている。


「文句があるなら食べなければよかろう」


ルイーゼの言葉にヴァネッサはムッとした。


「これを食べなくて何を食べろってのよ」


「草でも食っていろ」


「…あんたねぇ!」


またもや両者火花が散る。


――またケンカしてるよこの二人……


これはどうしたものかと裕斗がため息をついた、その時だった。


「あれ?ユウトさん達も今からご飯ッスか?」


そう話しかけてきたのは、八重歯がトレードマークの少女ラウラと銀色の髪をしたクールめな少女シルビアだった。


二人とも、朝食の置かれたおぼんを抱えている。


「そうだけど…君たちも?」


「そうなんスよー。今朝の招集のせいで食べられなくって」


「招集のせいじゃないでしょ。ラウラが起きれなくって遅刻しそうになったのが原因じゃない」


シルビアがジト目でラウラを見る。


「そ…そうッスね…」


「ほんと勘弁してよ?相部屋の私が起こそうとしてもぜんぜん起きないんだから」


「い…いやあ…」


ラウラは気まずそうにシルビアから目をそらす。


それを見て、シルビアはハア、とため息をこぼした。そして、彼女はラウラからヴァネッサへと視線を移す。


「ヴァネッサさん、でしたよね?話はエルザ隊長から伺っています。隣座ってもよろしいでしょうか?」


「……好きにしたら?」


二人の登場に怒りを収めたらしいヴァネッサは隣の席を譲った。


シルビアは「ありがとうございます」と頭を下げ、ヴァネッサの隣の席に座り、ラウラはその隣の席についた。


「ユウトさんはこの後予定とかあるんスか?」


「いや…僕は何も…。ていうか騎士団っていつも何やるの?」


裕斗はルイーゼに質問した。


「騎士団員は普段、壁内外の見回りや食料調達、鍛錬がメインとなっているが…今日は何もないな」


「そっか…」


ということは、今日は一日中暇ということか。


「あ…そういえば」


とそこで、裕斗は窓から見える壁を見た。


「昨日壊れた壁…直ってたよね?あれどうやって直したの?」


自分の記憶が正しければ、昨日“ソルジャー”に破壊された壁が直っていた。

いくらなんでも、一日で直すのは元の世界の技術でも無理だ。


「ああ。あれか。あの壁は特別な魔導具でな。たとえ破壊されたとしても、修復する機能を持っているんだ」


「へー、他の魔導具にも同じような機能ってあったりするの?」


「魔導騎士にも同じく修復能力を持っているぞ」


「え!?あれにも!?」


裕斗は驚いたが、同時に納得もした。


魔導騎士が暴走したのが何百年も前なのに、昨日遭遇した魔導騎士に大きな傷や錆はなかった。

物である以上見られる経年劣化がなかったのは、修復機能のおかげらしい。


「あんた、そんなことも知らなかったの?よく今まで生きてこられたわね」


ヴァネッサは呆れたようにそう言った。


それに対し裕斗は「あはは」と苦笑しながら頬をポリポリと搔いて言った。


「まあ、僕この世界の人間じゃないしね」


「「「…は?」」」


裕斗の言葉に、ルイーゼ以外はぽかんとした。


「こ…この世界の人間じゃないってどういうことよ…」


プルプルと震える指でヴァネッサは裕斗を指さす。


「う~ん。簡単に説明すると、僕は元いた世界で死んじゃって、気がついたらこの世界にいたんだ」


「そ、それじゃユウトさんは死人ってことッスか!?」


「いや、ちゃんと心臓動いてるから生きてるよ。…ごめん、会った時にこのことを説明するべきだった」


――そういえば、自分が転生者だってことをどれくらいの人が知っているのだろうか


「ルイーゼ。僕が違う世界から来ているのを知っている人は今どのくらいいるの?」


「…私が話したのはエルザ隊長とシーラ副隊長とハンナさん、アルバートさん…あとはユリウス団長だけだな」


――うわ、ほとんどの人が知らないじゃん


これはみんなに説明するには骨がおれるなと、裕斗は頭を抱えた。


「…呆れたわ。そんな得体の知れない奴を騎士団の…しかもライダーにするなんて」


ヴァネッサはそう吐き捨てた。


「…どういう意味だ」


「どうもこうもないわよ。違う世界から来たようなよく分からない奴に貴重な魔導騎士を与えるなんてバカって言ってんのよ」


「貴様!今すぐ取り消せその言葉!」


ガタン!とルイーゼは空から立ち上がる。


「何よ!本当のことじゃない!」


ヴァネッサも席から立ち上がる。


――この二人…どれだけ仲が悪いんだ。


「ふ…二人とも落ち着こうよ」


「「あ!?」」


仲裁に入った裕斗をルイーゼとヴァネッサがにらむ。


――こわ


「怒ったってどうにもならないし…ね?一旦落ち着こ?」


「そういうアンタはずいぶん冷静ね。私遠回しにアンタは魔導騎士に乗る資格はないって言ってるのに」


「僕は…まあ、資格がないのは本当かもしれないし」


「?どういうことよ」


「僕は…自分が生き残る力が欲しかった。だから魔導騎士に乗ったんだ。確かにライダーになるよう頼んだのは団長だけど、頼みを受け入れたのは完全に僕自身のためだったんだよ」


「なによそれ…。じゃあアンタが戦うのは保身のためってわけ?」


「そう…なるね」


裕斗が頷くと、ヴァネッサはより一層彼をにらんだ。


「なら、なおさら認められないわ。アンタに魔導騎士に乗る資格なんてない」


そう言うや否や、ヴァネッサは食事の置かれたおぼんを持って席を離れた。


「ちょ…ヴァネッサ!?どこいくの!?」


「どこ行ったって私の勝手でしょ!」


「ご飯は!?」


「もう食べた!」


そう言い残し、彼女はその場を去った。


ヴァネッサがいなくなり、その場はシン…と静まり返る。


「……あはは、静かになったッスね」


ラウラは場を和ませるようにそう言うが、さして空気が変わることはなかった。


「もっと…ヴァネッサさんとお話したかったんですけどね…」


「そうか?私はもう話したくないが」


シルビアの惜しむ声に、ルイーゼはそう答えながらパンを口に含んだ。


「…………」


裕斗はシチューをスプーンですくい、口に入れる。


おいしいと思っていたシチューの味は、冷めていたからかあまりおいしく感じなかった。

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