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第13話 エルフとドワーフ

エルザ達と別れた裕斗とルイーゼは階を下り、一階の端にあるドアの前で足を止めた。


「失礼します」


ルイーゼがドアを開けた、次の瞬間、


「だから!何でそうなるんだよ!」


「こうやった方が効率がいいからに決まってんだろ!そんなことも分かんねぇのかお前!」


「効率どうこう以前に死人が出るわ!てめえエルフのくせにそんなことも分かんねえのか!」


「はあ!?脳まで筋肉でできたドワーフに言われたくないないね!」


「んだとこのチビ!」


「チビはあんただろうがぁ!」


ケンカが繰り広げられていた。


ケンカをしている内の1人は白色の髪をした16、17歳くらいの少女で、額にはバンダナを巻いており、両耳は長く尖がっている。


もう1人は50歳くらいのいかつい顔をした男性で、長耳の少女よりも小柄だが、筋骨隆々としていてガタイがいい。


ルイーゼはそんな二人のケンカにハア…と吐いた。


「ハンナさん、アルバートさん。少しよろしいですか?」


ピタッ、とケンカを止めた両者がこちらを向く。


「なんだ、ルイーゼじゃないの。どうしたんだい?」


長耳の少女がにこやかにルイーゼに向けて手を振る。


「例の者を連れてきました」


ルイーぜは裕斗に向けて手を向ける。


「ほう?するってえとお前さんが例のライダー様か。よろしくな」


男はそう言って右手を差し出した。


「は、はい、こちらこそ。僕は榊原裕斗と言います」


「おう。俺の名はアルバート・バーンズ。見ての通りドワーフだ」


「ドワーフ?」


裕斗はアルバートを上から下までもう一度見る。

確かに年齢の割に小柄だし、この筋肉質な体は異世界ものに出てくるドワーフそのままだ。


ということは相方は――


「私はハンナ・アルベルティ。エルフだよ」


やはりこの長い耳。ドワーフとの仲の悪さ。間違いなかった。


「それじゃあせっかくで悪いんだけど、この腕輪をつけてくれない?」


そう言ってエルフの少女……ハンナがさし出したのは、一見何の特徴もない無骨な腕輪だった。


「あ!バカそれは―ムグ!」


「さあ早く早く!」


何かを言おうとしたアルバートの口を塞ぎ、裕斗に腕輪をはめるようにせまる。


「は…はい」


裕斗はせまられるままに腕輪をつける。


次の瞬間、裕斗の体から力が吸い取られるような感覚が襲った。

だが、すぐにそれが収まる。と思ったら、また力が吸い取られる。


そんな感覚が、秒単位で襲ってきた。


「こ…これは!?」


「ハンナさん!?これはいったい……」


「ルイーゼ、魔眼でそいつを見てみな」


「?は…はい」


ルイーゼは困惑しながら右眼の眼帯を外し、その宝石のようなみどりの瞳で裕斗を見た。


「これは…すごいですね」


ルイーゼは驚いたように右眼を見開く。


「腕輪に魔力が吸われた瞬間、彼の魔力が回復している。団長の仮説は正しかったのですね」


「やっぱりそうだったのね。……それで!?魔力の増減具合はどうだった!?」


ズイッ、とハンナはルイーゼに目をキラキラさせながらせまる。


「え?増減が激しくて分かりやすかったですが……」


「でしょうでしょう!?ほらね!私の言ったとおり魔力の吸収率を大きくした方が増減が分かりやすいのよ」


ハンナはアルバートの塞いでいた口を離す。


「だからってあんなん付けたら普通死ぬわ!」


「死ななかったじゃない」


「結果論じゃねえか!」


「あ…あの…」


「ん?」


再び始まろうとした二人のケンカを止めたのは、顔面蒼白になった裕斗だった。


「そろそろ外してもいいですか……これぇ」


「あ!ああ、外してもいいよもう……」


外す許可をもらった裕斗は即座に腕輪を外し、はあはあと息を切らして座り込む。


「だ…大丈夫か、ユウト」


眼帯を付け直したルイーゼが心配そうに肩を置いた。


「い…いや、全く」


言うなればさっきのはスタミナを奪われた直後に回復するのと同じなわけで、一瞬でも疲れるのには変わりない。それが秒単位に襲ってくるのだから、体だけでなく精神的にもダメージが入る。


「それよりもその眼…魔眼…だっけ?それって適性を見るものじゃなかったっけ?」


「ああ、これか」


ルイーゼは眼帯越しに右眼に手をそえる。


「この眼は本来見た相手の魔力を見ることが主なのだ。だが、魔導騎士に乗れる適性者の魔力は赤色に見えるため、あの時はお前が適性者だと分かったんだ」


「なるほどー便利だね」


「いや、それほど便利ではない。魔力が見えるという関係上、その他の物質が見えなくなってしまうし、あまり強い魔力を見すぎると眼にダメージが入る。……それに、私はこの眼があまり好きではない」


「え?どうして?」


「私の眼は他の者と異なるから、よく昔はいじめられたんだ。罵倒され、石を投げられるなんて日常茶飯事だったよ」


ルイーゼは思い出す。


子供の頃、この眼を気持ち悪いと言われ、殴られたことを。

石を投げられ、ケガをしたこめかみの痛みを…。


「願うならば、今すぐにでもこの眼を捨て去りたい」


「なんで?キレイじゃん、その目」


「は?」


一瞬、裕斗が何を言ったのか分からずポカンとした。


「いや、なんていうか宝石?みたいでさ。僕あんまり宝石好きってわけじゃないんだけど、初めて君のその目を見た時、少し見とれちゃってたよ」


「キレイ?私の…この眼が?」


そんなこと、生まれてから一度も言われたことがなかった。


確かに、この眼を気持ち悪いと言わなかった者や、すごい力だという人はいた。


けど、こんなこと…自分のこの忌々しい右眼を単純に綺麗だという人はいなかった。


だからだろうか


「どうしたの?頬が赤くなってるけど」


「!」


ルイーゼは顔を腕で隠した。


「?どうしたの?」


「な、なんでもない!」


ルイーゼは後ろを向いてしまった。


「え?僕なんかやっちゃいました?」


裕斗は訳が分からずアルバートとハンナに質問を飛ばす。


「気づかねえのかよ、この天然」


「だな」


二人ともやれやれと呆れている理由が分からず、裕斗は頭の上に?を浮かべた。


「そ、そんなことよりも魔導騎士のところへ案内してください!」


ルイーゼは話をそらすように声を上げた。


「お、おう。分かった分かった」


アルバートはなだめるように言い、「こっちだ」と奥にある部屋の扉を開いた。


アルバートとハンナが奥の部屋へ入ったので、裕斗たちも入っていく。


「これは…」


そこには広い空間が広がっており、周りには魔導騎士の残骸なのか、鎧の残骸や折れた剣などが落ちている。

さらに何に使うのか不明だが、魔導具らしき巨大な物体が至る所に飾られていた。


そして奥には、白の騎士“ランスロット”と、青の騎士“トリスタン”が立っていた。


「ようこそ、俺たちの大工房へ」


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