第11話 オルトランデ騎士団
翌日。
裕斗とルイーゼは朝早くに団長であるユリウスから呼び出しがかかった。
「ふわぁぁぁぁ……」
裕斗は眠たげな眼で大きなあくびをかます。
「眠い」
「眠い、ではない。さっさとこれに着替えろ」
ルイーゼはそう言って裕斗に服を手渡した。
色は上下ともに黒。
デザインはルイーゼが今着ている物と同じだ。
「これは……」
「ここの制服だ。私は出て待っておくからその間に着ておけ」
ルイーゼはそう言い残し、部屋を出た。
「早く着ないと怒るだろうな」
裕斗はすばやく上着を脱ぎ、制服の袖に腕を通した。
サイズはピッタリ。同じく下も問題なし。
次にベルトを締め、えり首を正す。
――こんなもんでいいか。
「着替えたよー」
「む。着替えたか」
ガチャリ、と音を立てルイーゼがドアを開けた。
「ど…どうかな?似合う?」
「……まあまあだな」
「え~!?ひどくない!?」
「別に似合ってないとは言ってないだろう。バカな事を言ってないで早く行くぞ」
ルイーぜはバッサリと言い捨て、スタスタと先に行ってしまった。
「バ…バカな事…」
軽くショックを受けつつ裕斗もトボトボとルイーゼの後をついていった。
***
ユリウスのいる部屋にたどり着いた裕斗とルイーゼ。
ルイーゼは昨日と同じくドアをノックした。
「入ってくれたまえ」
ドアの向こうから声が聞こえた。
「失礼します」
入室の許可をもらったルイーゼはドアを開けた。
目の前には団長……ユリウス・ヴァーグナーがイスに腰かけていた。
ここまでは昨日と同じ。
だが今日は見知らぬ数人の大人達が部屋の端に立っていた。
いや、一人だけ知っている人がいた。
確かルイーゼと一緒にいた黒髪の女の人だったと思う。
彼女はこちらを一瞥しただけだったが、他の者はジッとこちらをにらみつけた。
「ひっ!」
正直怖かった。
「ルイーゼ、ならびにサカキバラユウト、ただ今到着しました」
「うん。よく来たね」
ユリウスは柔和な笑みを浮かべ、裕斗の前に立った。
「裕斗君は夜ちゃんと眠れたかい?」
「は…はい…」
周りの視線に戸惑いつつ返事を返す裕斗。
「?どうしたんだい?」
「い…いえ…その…この人たちは誰なのかなー?て」
「ああ。彼らか。彼らは我ら“オルトランデ騎士団”の隊長さ」
「オルト…ランデ…?」
聞きなれない名前にまたも戸惑う裕斗。それを見てユリウスは眉をひそめた。
「まだ彼には話してなかったのかい?」
ユリウスはルイーゼに顔を向ける。
「は、はい。申し訳ございません……」
「いや、問題ない。私が話しておく」
頭を下げるルイーゼをフォローしながら再びユリウスは裕斗に顔を向ける。
「オルトランデというのはこの国の名前さ。そして、そのオルトランデを守護する我々は“オルトランデ騎士団”と呼ばれているんだ。騎士団は何隊かに分かれているんだけど、それの各隊長が彼らというわけさ。……まあ、今は一人いないんだけどね」
そう言って、ユリウスは苦笑した。
「何かあったんですか?」
「事情があって、今は他国に行っているんだ」
「なるほど……」
「理解できたかい?」
「はい」
裕斗はこくん、と頷いた。
それを見て、ユリウスは「さて」と言って隊長たちを見すえた。
「諸君に紹介しよう。彼の名はサカキバラユウト……昨日、魔導騎士“ランスロット”に搭乗し、我々を救った救世主だ」
「「「な!?」」」
「「…………」」
事前に裕斗が“ランスロット”に乗っていたことを知っていた隊長一人とルイーゼを除き、隊長皆一様に驚いた。
「こ……こんなガキ……いや、こんな子どもが“ランスロット”を……?」
「そうだ。だから私は彼を戦力として加えたい。我が団に入れることに反対の者はいるか?」
「「「…………」」」
誰も反対の意は唱えなかった。だが、ほとんどの者は裕斗に疑いの目を向けた。
あまり快く思われていないのは心の読めない裕斗にも簡単に分かった。
「……まあ、こんなものさ。皆何も言わないが、本当は君のことを快く思うものは少ないだろう。信用をえるには、君がこれから実績を積んで評価を上げる他ない」
「…………」
それはそうだ。
いきなり見たこともない子どもが現れて今日から仲間と言われても困惑するだろうし、疑いの目を向けるのは当然だろう。
なればこそ頑張ってみようと、裕斗は決意した。
「ではユウト君。これを」
スッ、とユリウスは左手に持っていた剣を裕斗の前に出した。
「これは……」
「私からの贈り物さ。これを受け取ることで君は初めて騎士団に入ることを認められる。逆に言えば、これを受け取れば君はもう一般人には戻れないということだ。……それでも君は、この剣に手を伸ばすかい?」
「…………」
裕斗は躊躇なく剣を掴んだ。
「その話は、昨日決着がついたはずです。今さら逃げたりしません」
「そうだったね。すまない、今さら君を試すような真似をして」
「……いえ」
裕斗は受け取った剣を腰に差した。
それを見届けた後、ユリウスは端に立つ隊長たちに視線を向けた。
「そういうわけで、今日の事は各々の隊員に伝えてほしい、以上、ルイーゼ君、エルザ君を除いて解散とする」
「「「はっ!」」」
隊長たちは返事をすると、ルイーゼともう一人の女性を残し、部屋から出ていった。
その女性は、ルイーゼが隊長と慕う黒髪の女性だった。
「エルザ君、ユウト君は君の隊についてもらう。世話を頼むよ」
「承知しました」
黒髪の女性……エルザは頷くと、裕斗の方へと目を向けた。
「聞いての通りだ。ユウト…といったか。私の後をついてこい」
「は、はい!」
ドアが閉められ、ユリウスだけが部屋の中に取り残された。
「……期待しているよ」
ユリウスは、小さく微笑み、
「この国のために……ね」
その言葉を聞く者は、誰もいなかった。
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