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猫と夕暮れ

作者: ある


前すごく気分が沈んでる時の話。

ちょっと遅めの年賀状を出しに友達の家の帰りのこと。少し道に迷ってしまい、帰ろうとした時にはもう夕暮れ時だった。まだ一月だったこともあり、外は冷え切っており門限まではまだ時間があるはずなのにとても暗くあたりはしんと静まり返っていた。

友達の家から帰る時、昔良く行っていた駄菓子屋の前を通った。財布を持っていたので気まぐれでお菓子を買おうと駄菓子屋に入りお菓子を選んでいるといつの間にか店主のおばあさんが店の方へ顔を出していて、私が頭を下げた。「今、雨は降っているかい?」と聞かれたので、いいえと答えた。

そのお婆さんは、私が小学生だった頃と比べ痩せ、腰が曲がり大きな目だけがこちらを睨んでいて居心地が悪かった。

前はとても気さくでいつも笑っていたような記憶しかなかったので驚いた。その後お菓子を選ぼうと店を歩き回っているとそのお婆さんも着いてきた。まるで監視されているようで少し気持ち悪かった。丁度お菓子を選び終わったのでお会計をしてもらった。三つで65円。少し高いなと内心思いながらお金を払い店を出ようとすると不意に「雨は降っているかい?」と聞かれたので「いえ、降っていませんよ。」と答え店をでた。

家に帰っても楽しいことも無い。いっそこのまま適当に歩いてみようか。そう考えていた時不意に猫の鳴き声がして、下を見たら着いてこいと言うかのようにもう一度鳴いて歩き出した。

しばらく行くとスイと家と家の間にある隙間に入り込み、なおも私を誘うように二、三度鳴き声がした。

空が暗くなり始め、その猫の体を見失った私がその隙間を覗いていると鋭く光る双眸を見つけた。その瞬間私は恐怖を覚えた。

このまま着いて行き、殺されたなら嫌なことから解放されるのかもしれないという考えが頭をよぎるがその前にただ怖かった。私は逃げ出した。暗くなり始め、黄昏とも呼ばれる空の色を感じながら。

湿気が気持ち悪かった。曇り空に今にも襲い掛かられるかのような恐怖を抱えて家まで全速力で走った。いつも50メートルも走れば痛みを訴える足も不思議と動き、苦しいはずの呼吸も感じなかった。家に着くなりすぐに鍵を閉めた。

怖かった。

あの猫がもし私を追ってきていて、そのうち大きくなって襲いかかってきたら。

とても怖く、その日はろくに眠れなかったことを覚えている。

あの時もしも着いて行ってたらどうなったんだろうね。夕暮れ時のことで今思い出してもゾワっとする。



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