一話
東方Project、
その作品群からなる幻想の世界観に
多くの人々はファン、信仰者、厨…となった。
この物語は魅魔信仰者の物語である
「魅魔様」
学生が集まり、混じりあう廊下の中心で
仕事や仲間への指示等と忙しい平常の合間、
長身黒髪の少女は歩きながら、そうつぶやいた。
「会長」
「いやなに、一人事ですらない、つぶやきさ」
その言葉を疑問に思う、同年で庶務の少女の問いに
黒髪の少女はさっと返しつつ、
仕事に話題を変える。
「それより、次の予定はゲーム部・電脳遊戯部との
統合についての話し合いで
電脳研究部だったね」
「はい」
「少し長くなりそうだから、
君は私の代理として雑務科と共に不良の掃除を
彼らの行動パターンなら、
あと十分近くで吸い始めるはずだ」
「了解です」
僅かな会話と共に庶務の少女は掃除に向かい、
黒髪の少女は微かにそれを見届けると、
歩むべき場所へ歩きだしていた。
そんな会話漂う、
ここは自由と混沌ひしめく、私立無法学園。
そして、黒髪の少女の名は淵崎魅騎。
一年にして生徒会長になった強者にして、
東方…いや魅魔狂信者である。
「魅魔様だ」
と軽いメタを挟む合間に
電脳研究部の扉の前に既に着いていた彼女は
勢いのまま扉へと方向転換と軽い停止、
数回のノックと共に扉の前で声を響かせる。
「失礼、生徒会の魅騎だ、
予定していたように、統合の話を」
……ザー…………………ザー………………………
しかし、その声に反比例するかのように
扉の中から聞こえる声は微か。
(…機械音以外、聞こえない)
魅騎はこの状態に異常性を感じていた。
(この時間帯なら、通常は研究、
パソコンやスマートフォンの組み立て、
販売、配送、その他雑務で三名以上は居るはず、
それが機械音のみとは…)
疑問に思いながらも鍵の確認をすると、
さらなる疑問に突き当たる事になる
(鍵は開いている?、なら)
「入るのみ!」
「な、」
内部に入りきった瞬間、魅騎の五感が知ったものは
本来のパソコン等の機械とそれらになり得る、
そうであった、部品といった実務品や
歴代の部員の趣味等からなる
漫画にゲーム機、カセットやDVDやBDといった
コレクションらで満ち溢れる、
そんな自らが知る内部ではなく、
ただ、上も下も無い黒一色の明るい世界。
そんな、異常に対する認識を終えた時、
ガシャリと勢いよく、少女の後ろの扉が閉まる。
「何、」
思わず叫び、軽く振り返り、
そして、振り戻した魅騎の前には
先程まで感じさえしなかった、
帽子を被る、黒ずくめの少女が居た。
「こんにちは、淵崎魅騎さん」
魅騎は彼女を知っている。
「電脳研究部一年、白導無隷か… ここはどこだ」
「…「フリーダム・ファイター」をご存知で」
「夢を利用した独自システムによる
高リアリティと専用機器の携帯性で人気ある
会員制のVRゲームだったか」
「ええ」
「ここが電脳空間として、機器を使用するどころか
私の五感の認識圏内になかったのだがね」
「…扉を境い目に理を捻じ曲げ、
電脳空間と繋げました」
会話の果てに辿り着いた答えの
理不尽さに魅騎は面食らい言葉を放つ
「なんだそりゃ」
……………………………………………………………
……………………………………………………………
僅かな静寂の後、
動揺を軽く引きずりながら、
魅騎は疑問を投げる
「それで何をさせたいんだ」
「無論、ファイト…決闘です」
疑問にそう返すと無隷は前進、
左側に伸ばした右手に何処からかメスを一つ、
持ち、横に振るう
だが、それが辿り着く事はなかった
魅騎は右腕の裏拳でお互いの前腕部同士を
ぶつける事で防ぎ、
逆に左腕からの正拳突きを喰らわせ、
魅騎は納得し、答える
「なら、改めて名乗ろう、私立無法高校
生徒会会長 一年、淵崎魅騎」
「私立無法高校
一年、電脳研究部、白導無隷」
無隷もまた名乗り返す
名乗りを互いに終え、
静かに魅騎が声をかける
「勝負」
言い終わると共に
魅騎は前に飛びながら、左斜めに体をずらし、
左脚を軸とした空中半左回転蹴りを放つ、
対して無隷は横に避け、
脚に向かって右手でメスを振う、
が魅騎は上半身を逆側に回す事で逆回転、
同時に左斜めだった体を垂直に戻す事で、
強引に半右回転の後ろ蹴りに捻じ曲げる事で、
躱しつつ、無隷を打ち飛ばし、
地へと倒れ込せる
…だが、無隷は淡々と逆再生の様に立ち、
「変えますか」
と蹴りに関する疑問をただ問う
間を置いた、魅騎の返答
「…血筋でね」
言葉の後、互い動かず
…………………………………
…………………………………
静寂に四分の時が流れ、
先に動くは淵崎魅騎
前進してから、左足で踏み切ってのヤクザキック。
対して、無隷は微かに左に避け、メスで切り返す
だが、その斬撃を魅騎は上半身を前へ倒しつつ、
右側に捻じ曲げる事で回転し浮き避け、
同時に右足を軸とした空中左回転蹴りを打ちきり、
蹴り飛ばす
……………………………………
先程と異なり、
何かに納得しているような顔で
無隷は逆再生の様に立つと、口をきる
「噂と血筋通りのようで…」
その言葉に魅騎は
返事替わりの軽い笑顔を返し、切り返す
「味わうだけかね」
「それでは…」
無隷は右手を掲げ上げ。
多数のメスを上空へ吸い込まれる様に飛ばす。
「“黒の雨”
逃れられますか」
その言葉と共に、数本のメスを放つ。
無論、一直線に放たれただけのメスは
避けられた。その瞬間、
上空からメスの雨が降り落ちる!!
僅かな驚きから魅騎は軽く首を横に振ると
右斜め後ろに引き避ける…が、
そこへも雨は降り落ちた
されど、それを避けつつ魅騎は前へ進み、
無隷の数歩前へ無論、雨は降り落ちる…が
それを分かっていた魅騎は
雨に左腕で裏拳を当て防ぐ
「見事」
そう言い切ると、魅騎は右手を引き
微かな空白の後、無隷へ正拳突きを打ちこみ、
決闘の幕は降り、空間が微かに揺らぐと
機械と嗜好品で満ち溢れた場所へと飛ばされた。
魅騎は微かな笑顔と共に口を開く
「部室内か」
「ええ」
無隷は軽く返し、問う。
「どうでしたか、決闘は」
魅騎は返す。
「面白い」