「鏡よ、鏡、鏡さん、世界で一番美しいのはだ~れ?」と聞かれ、試しに「白雪姫」とか言ったら修羅場になりかけた鏡の話
リハビリ作品十作目。
「第3回下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞」参加作品の為、1000文字以内の超短編です。
「鏡よ、鏡、鏡さん。世界で一番美しいのは誰?」
「それはあなたです」
「うふ、ありがとう」
オレ、鏡。
毎日こんな風に聞かれ、答えてあげている。
けれど、時々思う。
オレばっかり見てないで、周りにも目を向けてみるべきだと。
そう、そして、正直同じ答えを言うのにオレは飽きた!
だから、言ってみた。
「鏡よ、鏡、鏡さん。世界で一番美しいのは誰?」
「それは白雪姫です」
美しかった顔は歪み怒りに震えている。
「白雪、姫……それって鏡さんと同じクラスのあの子のこと?」
「そうそう、白雪さん、あの子もあなたに負けず劣らずかわいいですよ」
「鏡さんはああいう子が好きなの?」
「え……ちょ、ちょっと、高井さん、落ち着こうか」
オレ、鏡アキラ。
毎日、同級生のお嬢様、高井妃に「鏡よ、鏡、鏡さん~」と聞かれ答えてあげている。
これ、バイトである。
死ぬほど貧乏なのである。
そして、俺が山でキノコの刺身を頂いて麻痺っていたら助けて頂き、我が家の懐事情を知られた結果、高井さんを褒めるお仕事を頂いたのである。
「どうなの、鏡さん?」
高井さんが迫ってくる。めっちゃいい匂いがする。高級な匂い。
そして、笑顔が怖い。でも、美人。
「白雪姫さんのほうがかわいいの?」
白雪姫。俺が住み込み及び学校込みバイトによって通学することになった学園のクラスメイトである。
色白で、髪も真っ白というか輝いていて銀に見える。
ぶっちゃけモテる。美しい高井さんとかわいい白雪さんは学園の二大美女だ。
「そっか、そっか……ちょっと私、毒を盛ってくるわ」
「待て! もってくるっててへんに寺だよね!? 大盛並盛の盛じゃないよね!? いや、前者でも怖いのは怖いけど!」
「だって! 鏡さんが! 白雪姫がかわいいって!」
「お前が一番好きだよ!」
静寂。
「……な、な、な、なら、いいわ」
まあ、色々あって、俺は高井さんと付き合っている。
マジで色々あった。
内臓マニアのハンターに襲われたり、天才クソガキ七人組に社会的抹殺をされかけたり、アツアツの鉄板の上で戦わさせられたり。
結果、色々倒して、付き合うことになった。
そして、今に至る。
「鏡よ、鏡、鏡さん、貴方が世界で一番好きなのはだ~れ?」
「えと……高井妃、貴女ですよ」
「うふふ」
うん、流石にこれはオンリーワンだわ。
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