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うちの娘と娘の幼馴染の好きな人がどうやら一緒のようだ。頼むから修羅場に俺を巻き込むな……え、お母さんもですか?

作者: アホになろう
掲載日:2021/11/20

日菜子はお父さんが好き。

もちろん男の人として好き。

でも、幼馴染の明美もお父さんのことが好き。

異性として好き。

明美は私に聞いてくる。

「ねえ、日菜子、私がお母さんになってもいいよね」

私は答えを返す

「嫌だ」

明美は

「でも、私、小学校のころからカイトさんのことが好きなの」

でも、私は

「ダメ、お父さんは私が生まれたときから好きなの」

お互いに引く気はない。


お父さんはどっちが好きなんだろう?

 俺の名前は大宮海斗(おおみやかいと)どこにでもいる35歳のサラリーマン。2LDKのアパートで娘と二人で暮らしている。


 娘の名前は大宮日菜子(おおみやひなこ)。現在16歳、華の女子高生だ。この子は訳ありで俺が21歳の時、引き取った。


 当時は嫁に裏切られて離婚したばかり。


 他の女性と恋愛や結婚というのを考えることが出来なかったのもあったが、娘の置かれた状態を見るに見かねて引き取ってはみたものの……


 まさか、男手一つで女の子を育てるのがこんなに苦労するとは思っていなかった……。


 特にこの子は発育が良いせいで下着や生理用品を俺が買う時期があったのだがあれは地獄だった。


 なんたって視線が痛い。


 レジのおばさんの目つきなんてゴミを見るような目をしていたよ……。



 今ではお金を渡せば自分で買ってきてくれるので本当に助かっている。


 ――――――あ、それで思い出した。


 また、きつくなったからブラを変えたいと言っていたな。


 確かEカップが合わないって言っていたな。


 成長期だから買い替えが早いのは仕方ないが、どこまで育つんだ……変な虫が寄ってきそうでお父さんはちょっと複雑だ。


 そんな、親の心配など知る由もない我が娘はTシャツにパンツ一枚というラフすぎる格好にてゴロゴロしながら



「ねえ、お父さんお腹空いたー」



 と、飯の催促をしてくる。



「わかったよ、ちょっと待ってろ」



 今日は八月最初の土曜日。


 猛暑日という名にふさわしく日が昇るにつれて日差しが強くなる一方だ。


 特に出かける用事もなく冷房の効いた家で何をすることなく二人でゴロゴロとしている。


 時計の針は12時を指す前に娘のお腹は空っぽのようだ。



「素麺でいいか?」


「うん!」



 作ったものは何でも食べてくれるので正直助かる。


 それに今日は昨日の仕事の疲れが残っているので楽がしたい。


 素麺を湯がいてめんつゆを作ったら完成……超簡単に手早く完成させる。



「出来たぞー」


「わーい、頂きます」


「召し上がれ」



 すると、日菜子は雛鳥の様に口を開けておねだりをしてくる。



「あーん」


「どうした?」



 とは言ったもののどうしてほしいかなんてわかっている。



「お父さん、食べさせて!」


「はぁ?自分で食べなさい」


「ヤダ!食べさせて」



 何故かいつもより甘えている?俺は娘に寂しい思いをさせているのだろうか?


 そういえば、最近、仕事忙しかったからな……


 帰るのも遅かったし……



「もう、本当に甘えん坊だな……」



 俺はヤレヤレと言いながらも娘の口に素麺を運ぶ。



「美味しい!」



 微笑む娘の顔を見て俺は幸せだった。


 ただ、我ながら娘を甘やかせていると自覚はしている。


 だが、血のつながりはないとはいえ、可愛いものは可愛いのだ。


 これ血が繋がっていたりしたらもっと甘やかしてしまうのだろうか?


 ダメなお父さんかもな俺……。



「ねえ、お父さん聞いてよ」


「なにをだ?」


「あのね、酷いんだよ」


「だから、何が?」


「私の欲しいものを欲しいっていうの」



 友達との話なのか?


 何のことなのかさっぱりわからん。



「なんだ、そんなもの。仲良く半分にすればいいじゃないか」


「半分に出来ないから困っているのよ」


「じゃんけんで決めるとかダメなのか?」


「嫌だ。そんなの聞いたことがない!」


「そうか?こだわるんだな」


「当たり前」


「んー、なら諦めたらどうだ?」


「ダメ、絶対に諦められない、絶対に譲れない!」


「じゃあ、交代制とかで使い回しするとか」


「それ、絶対にダメでしょ。倫理的にダメでしょ」


「倫理的にって何がダメなんだ」


「いや、だってその……毎日がいい」


「我がままだな~」


「ぶーぶー」



 何を誰と取りあっているのか話が見えてこない。


 とりあえず、誰にも渡したくないものが娘にはあるのだろうが……喧嘩するほどなのか?



「一体、誰とそんなにもめているんだ?」


明美(あけみ)


「明美ちゃんか、元気にしているのか?……って、そういえば、この間、駅前で会ったな」


「え?なんで!」



 先ほどまで素麺に向けていた視線を俺にぶつけてくる。


 俺が明美ちゃんと会ったのがそんなに驚くようなことだったのだろうか?



「なんでって偶然だよ。仕事中に偶然出会ってな」


「……本当に偶然?」



 娘よ……なぜ、俺に疑いの目を向ける……



「当り前だろ、待ち合わせなんてするわけないだろ」


「そ」


「そ、だよ」



 何故か娘が拗ねている。


 ……どうしたのだろう?にしても、明美ちゃんか。


 日菜子の幼馴染で小さいころからよく一緒に遊んでいたよな。


 うちにも何回か来てお泊りもしたもんな。


 まあ、あそこのお母さんの霧子さん……めっちゃ美人なんだよね。


 大和撫子というのか物腰柔らかな性格、黒髪が綺麗でアップにしたときのうなじなんてもうよだれモノなんだよな。


 明美ちゃんも霧子さんに似て綺麗になって来ているし……将来が楽しみだ。






 その後もまったりと休日を楽しんだ。娘と一緒に昼寝をしてすでに時刻は四時を回っていた。



「ちょと、買い物行ってくる。何食べたい?」


「ん~、私も一緒に行く。デートしよ」


「んじゃ、スーパーで考えるか」


「ラジャ~」



 日菜子は額に手を当て軍人の様に敬礼をする。


 俺達は近所のスーパーまで歩いて行くことにした。


 うだるような暑さの中、今日一日使っていない筋肉を使って行きつけのスーパーにて食材購入予定。


 しかし、この暑い中だというのに、日菜子は手をつなぎたいと言って甘えてくる。


 本当に可愛い娘だ。


 今日はオーバーオールを着ているので幼く見える可愛い日菜子になっていた。



「あら、娘さんとお出かけ?」


「ええ、ちょっと買い物に」



 近所の佐藤さんとすれ違ったが仲の良いって羨ましがられる。



「仲が良くていいわね」


「そうですかね」


「それにきて、内の息子は……」



 と話が長くなりそうになったが日菜子が急かしてくれたおかげで早々と話を切り上げてその場を立ち去ることができた。



 5分ほど歩いてスーパーに到着。


 買い物かごをもって何を買おうと物色を始める。



「ん~何にしようかな~?素麺も惣菜も飽きたな~」



 惣菜コーナーに行くも日菜子はお気に召さないようだ。


 まあ、最近忙しくてまともにメシを作ってやれてなかったな。


 やはり何か作ってやるか。


 でも、日頃の疲れからか少々体が重い。やっぱり簡単なものが……



「そういや、ここのところカレー作ってないな」


「だね!お父さん、夏野菜カレーにしよう。あ、日菜子は甘口じゃなきゃいやだ」


「オーケー牧場だ」



 メニューが決まれば買うものは決まったも同然。


 牛肉、ジャガイモ、ニンジン、ナスとカレーに必要な材料を買い物かごに入れていく。


 前回、辛口のカレーを作って不評だったので甘口の固形のルーもカゴに入れる。


 サッと会計を済ませてスーパーの外に出ると



「あ……あつっ」



 冷房によってキンキンに冷えた店内にいたせいで外の暑さが極悪だった。



「カレーだぁ」



 スーパーから荷物を持って帰宅する。


 この暑さの中でも日菜子は元気……まだまだ、元気で可愛い娘だなっと俺も笑顔になれる。


 にしても、少し多めに作れるようにと材料を買い、更にはお米も買ったので少々荷物が多くなってしまった。



「日菜子、持ってー」


「えー、重たいからヤダ」



 どうしよう。うちの娘、超我がままに育っている気がする。


 が、ここは心を鬼にしてお手伝いをさせよう。


 これぐらいは持てないことはないはずだ。


 米袋は無理としても野菜の入った袋なら日菜子でも持てる。



「日菜子、この袋を……」


「こんにちは、カイトさん」



 振り返るとそこにはスラっと背の高い女の子がいた。


 一つに束ねている髪は夕日にあたり赤茶毛のような髪色になっている。


 上は少しゆとりのあるTシャツを着ているのだが、下はフレアパンツを履いているためによりスタイルが際立ってよく見える。



「ん?ああ、明美ちゃん。こんにちは」


「カイトさんはお買い物ですか?」


「そうだよ、今日の夕飯はカレーにしようと思ってね。よかったら食べに来るかい?」


「え?いいんですか?」


「もちろん、明美ちゃんなら大歓迎だよ」


「やった!」



 満面の笑みで喜んでくれる明美ちゃん。


 この子もカレー好きだもんな。



「ちょっと待った!」



 何故かうちの娘が明美ちゃんを睨んでいる。


 どうした、娘よ……仲良しの明美ちゃんだぞ。


 もしかして、今日話していたことが関係しているのか?



「明美ちゃん、お母さんが夕飯作っていたらまずいでしょ?だから、今日は帰ったらどうかな?」



 なるほど、一理ある。


 確かに急に招いて霧子さんに迷惑をかけるわけにはいかないな。


 流石、我が娘!



「大丈夫です。ちょっと待ってください」



 明美ちゃんはスマホを取り出して、音声通話を始める。


 スピーカーで話を始めるので俺達にも声が聞こえてくるのだった。



『どうしたの、明美?』


「お母さん、今日、日菜子の家で夕飯食べて帰るね」


『あら、迷惑になるんじゃないの?』


「大丈夫、カイトさんが誘ってくれたの。それにお母さんは今日帰りが遅くなるでしょ」



 なるほど、そういうことか。


 仕事が忙しいと帰って家事をするのも大変だろう。


 女手一つで育てているんだ。立派な人だよ霧子さんは……


 少しばかりだが話をしておくかな。


 まあ、久しぶりに4人で食事するのもいいかもな……普通のカレーだけど。



「明美ちゃん少しお母さんと話をしてもいいかい?」


「え、はい。どうぞ」


「あ、どうも大宮海斗(おおみやかいと)です」


『ふぇ!カ、カ、カイトさん……あ、あの、すみません、うちの娘が』


「えっと、今晩カレーなんですが、それでもよかったら霧子さんも一緒にどうですか?」


『わ、私もですか?』


「はい、お口に合うかどうかわかりませんが」


『ありがとうございます。それじゃあ、お言葉に甘えて……後ほど伺いますね』


「ええ、お待ちしております」


『はい、その……仕事が片付き次第、直ぐにカイトさんのところへ伺いますね!』



 霧子さんを誘ってみたものの……なんか最後は気恥ずかしさで顔が火照ってきた……いい年してなにしてんだろ、俺……でも、霧子さんの声……艶っぽいのがたまらん。


 正直、女性不信になっていた俺がここまで心を動かされる女性に出会うなんて今後ないのでは?っと、思ってしまう。


 だけど、霧子さんのようにおしとやかで外見も整った女性なら相手に不自由はしていないだろう。


 だからこそ、霧子さんに好意を向けてもまた裏切られる恐れが頭をよぎり先に進む気にはなれなかった。


 まあ、でも俺も妄想の中だけなら霧子さんを……おっと顔に出そうなのでやめておこう。


 娘達の前だしな……



「「むぅ」」


「?」



 霧子さんとの通話を終了すると、何故かうちの娘と明美ちゃんのほっぺがリスのように膨れ上がっていた。


 何をしているんだ?


 っと、早く帰ってカレーを作らないと霧子さんが来てしまう。



「ほら、帰って早くカレーを作るぞ」




 霧子さんが帰ってくるまでにはカレーを完成させておきたいので二人を急かす。


 すると、日菜子が甘えてくる。



「お父さん、抱っこ」


「おいおい、今の状況だと無理だ。諦めろ。逆にお父さんの荷物を持ってもいいだぞ」



 するとそれを明美ちゃんが持ってくれると提案してくれる。



「大丈夫です。私が持ちますね、カイトさん」


「そう?それじゃあ、お願いしようかな」


「はい、将来のために任せて下さい」


「将来……そうだね、気が利くお嫁さんになれるよ」


「そ……そんな……私……なんて」


「大丈夫、明美ちゃんは美人さんだし、最高のお嫁さんになれるよ」


「はぅ……」



 ちょっと揶揄いすぎたかな?


 明美ちゃんは顔から火が出そうなぐらい真っ赤になっていた。


 反対に日菜子は別の意味で真っ赤になっていた。



「むぅむぅ」



 明美ちゃんを褒めて自分をほめてくれないとふくれっ面になる日菜子。



「あの……カイトさん」


「どうしたの明美ちゃん?」


「えっと、その……手をつないでもらってもいいですか?」



 霧子さんが女手一つで育ててきた明美ちゃん。


 父親に甘えるということに飢えているのだろう。


 まあ、手をつなぐことぐらいお安い御用だ。



「ああ、いいよ。いつでも繋ぎたいときに繋げばいいさ」


「ほ、ほ、本当ですか!?」


「もちろん」



 明美ちゃんは俺の開いている右手を握ってくる。


 その手は小学生の手ではなく女性らしい可愛い手になっていた。


 大きくなったなぁっとしみじみ思う。



 明美ちゃん甘えたいのもあるけど、少しばかりだが照れくさいってのもあるのだろう。


 耳まで赤くなっている。



「な、な、な……もう!お父さん!?」


「どうした、日菜子?」


「お父さん、もう一つの荷物、日菜子が持つ」


「そうか、それじゃあ、お願いするよ」


「それと、私も手をつなぎたい」


「いや、でも脇にはまだお米を抱えているから」



 俺は軽い荷物を左手に持ち脇に米袋を挟んで抱えていた。


 ただ、いくら荷物を持ってもらっても脇に米袋を抱えて手をつなぐのは少々難しい。



「じゃあ、腕組む」


「そのほうが助かるよ」



 俺は米袋を抱えた。そして、その腕にしがみついてくる日菜子。



「えへへ」



 まだまだ子供だなっと思ってしまう。


 半面、大きく育った双丘の柔らかさが俺の腕に伝わってくる。


 ああ、この柔らかいのが他の男に揉んだり吸われたりするのか……うん、考えただけで無性に腹が立ってきた!



「カ、カイトさん……私も日菜子と一緒がいい」


「ん?ああ」



 なるほど、同じようにしたいのだな……なんだかんだ言って幼いころは姉妹みたいに育ってきたからな。


 一緒っていうのがいいのだろう。


 なんか今はいがみ合っているみたいだけど、本当は仲良しなんだろう。


 安心したよ。



「どうぞ」


「は、はい……失礼します」


「明美ずるい!」



 日菜子はやけに明美ちゃんに突っかかっていくなぁ。


 そんなに渡したくないもの……まさか、だけど恋愛関係!?



「ずるくない。カイトさんの許可取ってるもん」


「私のお父さんだから私がダメっていたらダメなの」



 なんだ、日菜子はお父さんが取られると思っているのだな。


 そして明美ちゃんはお父さんが欲しいのか。


 まあ、俺と霧子さんが結婚でもすれば明美ちゃんのお父さんになれる……


 ――――――――――――――――――だぁー何を考えているんだ俺は!



 霧子さんはあんなにも美人なんだ。


 再婚相手なんて探す必要なんてなくて自然と寄ってくるだろう。


 それでも再婚していないってことは再婚する気がないのか?


 まあ、普通に考えたらあんな美人がシングルマザーってのもおかしな話だ。いくらでも相手はいるだろう。



 ――――――再婚か……今度、それとなしに聞いてみよう……かな?



「ダメじゃない。それに日菜子の方がずるい。この間だってそう……私の方が先に好きになったの」


「違う、私の方が早かった」



 いつまで喧嘩してるんだ?


 はぁ……もしかして、今朝の話か?まだいがみ合いが続いているのか。



「なあ、二人とも仲良くしようよ」


「「お父さん(カイトさん)は黙ってて」」


「……はい」



 俺は二人の仲裁を諦める。


 ただ、アパートに帰るまで二人の訳の分からない口論は止むことはなかった。



 そして、俺達はアパートへと帰ってきた。



「お父さん、今日は私がお父さんの奥さんの様にカレー作るの手伝ってあげる」



 帰ってきて直ぐに日菜子は料理の準備を始める。



「ちょっと、日菜子ずるい。カイトさん私もカ、カイトさんの奥さんの様に……」



 珍しいこともあるものだと思ったが、明美ちゃんも俺の手伝いをするといって台所に立ってくれる。


 二人の手伝いがあるおかげで思った以上に早く料理が完成しそうだ。


 これなら霧子さんが帰ってくるまでに間に合うだろう。


 カレーが完成するまで俺はスマホを取り出して上映している映画をチェックしていた。


 と言っても、俺が見るのはアニメだ。


 特に"神界"監督の作品は気に入っておりその新作が明日公開される。




 うちの会社では「この年でアニメなんてとバカにする同僚」と「絶対に何があって見に行くと豪語する同僚」とに二分される。


 果たして霧子さんはどっちなんだろう……明美ちゃんに聞いてみようか……


 そんなことを考えていると俺のスマホが鳴る。


 同じ会社の如月さんだ。


 彼女は男性社員が全員満場一致で美人と答えるほどの美貌を持っている。


 昨年、大学を卒業してうちの会社に入ってきた可愛い後輩である。



「もしもし、どうしました?」


『先輩、お休みのところすみません。如月です。あの昨日の事後処理はありがとうございました』


「ああ、例の件ね。気にしないで、俺は立場上やる必要があった。仕事だよ」


『でも先輩がいなかったらこの土日返上してやっても終わってないです』


「まあ、いいじゃないか。もう終わったことだ。それにあの量を一人でやった如月さんはすごいよ。皆、それは褒めていたよ」


『先輩も……そう思います?』


「ああ、もちろん」


『……よかったぁ~』



 俺が怒ったりしていると思っていたのだろうか?


 本当に仕事をしているだけなのであまり気にされるとこちらも意識してしまう。



「ねえ、お父さん、だれと電話しているの?」


「ああ、会社の人だよ」


「ふーん、それにしては随分と楽しそうに話しているし、相手褒めてるし、優しいし……私のことほったらかしだし……」


『どうされました?』


「すみません。ちょっと娘が……」


『あ、ごめんなさい。お忙しいところだったんですね。では手短に用件だけ伝えます。明日、お時間ありますか?今回のお詫びによかったら……』



 ふむ、どうやら気にしすぎのようだ。ここは断らせてもらう。折角の行為ではあるが明日はちょっと……な。


 それにまだ、二年目だ。ミスを犯す何て普通にある。


 それをフォローするのが先輩の役目みたいなものだ。



「如月さん、気にしすぎです。失敗は誰にでもあります。俺だって失敗しますから、もしその時に如月さんの力が必要な時はお借りします。それでいいじゃないですか」


『え、あの、その……はい、わかりました』


「それじゃあ、おやすみなさい」


『……はい、おやすみなさい』



 ふー。真面目でいい子なんだけど、真面目過ぎるところがあるのかもな。今まで気が付かなかったけど。



『ごめんください』


「あ、お母さんだ」



 どうやら霧子さんが来たみたいだ。俺は()()()玄関へと霧子さんを迎えに行く。



「お疲れ様です。早かったんですね」



 玄関のドアを開けるとそこにはスーツを着た霧子さんがいた。


 この人は若くして明美ちゃんを産んでいるので女子高生の娘がいるとは思えない程若く見える。


 正直、明美ちゃんのお姉さんと言っても問題がないのではないかと思ってしまう。


 ただ、女性不信の俺にとってこの人も夜は乱れるんだろうなって考えると……。


 霧子さんの経験人数が気になるところだ。二桁はあっても驚かないだろうな。



「仕事急いで終わらせてきたもので……それよりも親子で迷惑をかけてごめんなさいね」


「そ、そ、そんな迷惑だなんて。霧子さんみたいに美人になら迷惑かけてもらいたいぐらいですよ。」


「ぇ?」


「あ、あ、あ、冗談。冗談ですよ、アハハ」



 どうしよう、失言だ。どうやって誤魔化そう……。


 俺が焦っていると霧子さんは飲み物を渡してくれる。


 準備してくれたみたいでそれをお礼にと俺に差し出してくれる。



「あの、これ飲み物買ってきたんですが――――――どうしましょうか?」


「ありがとうございます。みんなで飲みましょう。あ、どうぞ……遠慮なく上がってください」


「お邪魔します」



 あれ?――――――霧子さん、顔を合わせてくれない。


 俺が余計なことを口にしたから引かれたかな。




 その後はみんなでカレーを食べた。育ち盛りの日菜子と明美ちゃんはお代わりまでして沢山食べた。本当にこの年になって思う。料理を作って誰かに食べてもらうことがこんなにも幸せなんだって……。



「「「ごちそうさま」」」


「お粗末様です」



 俺は食後

のデザートにスイカを用意していたのだがカレーをお代わりした上にまだ食べれるだろうか?


「スイカ食べるか?」


「「食べる~」」



 うむ、これが若さか!胃袋にすら疲れというものを感じさせない……うらやましいな。



「それじゃあ、これ片付けますね」


「いや、霧子さん。ゆっくりしてください」


「これぐらいはやりますよ」


「でも、仕事で疲れていませんか?」


「大丈夫、明日はお休みですから」


「そ、そうですか。では、俺もやりますので一緒に」


「はい、お手伝いさせていただきます」



 俺と霧子さんの二人で食後の片づけを行う。デザートとして出したスイカは娘たち二人が食べていた。


 二人で肩を並べて食器の片づけをしているのだが、ちょっと集中できないでいた。なぜなら明日、映画に誘うかどうしようか悩んでいたのだ。それとなく探りを入れてみることにした。



「あの、霧子さん。お休みの日は何をしているんですか?」


「そうですね、普段出来ない掃除とかやってますよ」


「へ、へぇ」


「「……」」



 あれ?会話が続かない。俺ってこんなに口下手だっけ?それに霧子さんも少しばかりだが落ち着きがなく感じるが……気のせいかな?



「あの、カイトさん」


「は、はい!」


「あの、明日公開される映画があるんです。ただ、そのアニメなんですが……」


「えっと、霧子さん。実は俺もその映画に誘おうと思っていたんです」


「そうだったんですね、よかった」


「「ちょっと待った!」」



 ダイニングから大きな声が聞こえる。



「お母さんずるい。カイトさんを独り占めしないで」


「お父さんもずるい。明日、如月さんて会社の人の誘い断っておきながら明美のお母さんと楽しもうとするなんて」



 日菜子と明美ちゃんが話に入ってくる。日菜子の話はまずい。気を使わせてしまうかもしれないが……どうする……。



「こ、こら……なんてことを言っているんだ」


「あの、カイトさん。もしかして用事がありました?」


「いえ、ないです。暇です。だから大丈夫です」


「そうですか良かった……」



 ホッと胸をなでおろす霧子さん。どうやら気を使わせてしまったようだ。すみません、霧子さん。俺は霧子さんの誘いならどんな誘いを断っても霧子さん優先します!って言えれば楽なんだけどなぁ。



「お母さん、なんでそんなに顔真っ赤なの!」



 確かに少しばかりだが赤くなっている。化粧のチークかと思ったが耳まで赤くなっている。



「本当だ、霧子さん大丈夫ですか?」


「え?だ、だ、大丈夫ですよ。最近暑いですから」


「いえ、心配です。ですから、向こうでゆっくりしてください。残りは俺がやりますので」


「あっ」



 俺は霧子さんの手を引いてダイニングに置いてあるソファーでくつろいでもらう。



「霧子さんはお客さんですからゆっくりしてください」


「でも……」


「俺に霧子さんをおもてなしさせて下さい」


「では、お言葉に甘えてゆっくりしますね」


「ええ、片付けが終わったらまた後で」


「後で……はい!お待ちしております」



 その後、キッチンに戻って片付けの続きをしようとしようとしたのだが、日菜子と明美ちゃんが何故かすごい言い争いをしていた。



「もう、明美!なんでこんなことになっているのよ」


「知らないわよ。私だってあんな顔みるの初めてだもん」


「こんな伏兵に負けるなんて絶対に嫌」


「私だって嫌だよ。誰にも渡す気なんてないもん。大人びている私なら彼との相性抜群のはずだもん」


「私だって渡す気はない。それに、私には巨乳(ぶき)があるから大丈夫」


「ぐぬぬ、ふん、もしかしたら小さいほうが好きかもしれないよ」


「にゃー、それは否定できないかもしれない。薄々だけどそうじゃないかと」


「それに私の方が愛している自信がある」


「ない!それはない!私よりも愛している人なんていないもん」



 もしかして、二人は今、恋バナでもしているのか?しかも、どうやら好きになったのは同じ人ってことか?これは流石に俺もどうすればいいか分からん。


 仕方ない、これは片付け……明日でもいいや。戻って霧子さんと一緒にテレビでも見ていよう。


 俺が戻るとソファーの前にあるテーブルの上には缶ビールが置かれている。既に2本は空になっているようだ。霧子さんっていける口だったんだな。この短時間で350mlとはいえ2本を開けてしまうとは。



「あれ?」


「スピー」



 缶ビールで酔ったのか?それか、よほど疲れていたのだろうか。ソファーの上では霧子さんが寝息を立てていた。



「どうしよう……」



 正直、俺はどうすればいいか迷った。ただ、霧子さんの寝顔を見ているとなんだが、娘の日菜子のように可愛いと思ってしまう。


 そういえば、あの子は高校生になってもどこでも寝るから俺がベッドによく運ぶ。



「よいしょ」



 俺は日菜子が小さいころを思い出しながら霧子さんを自分のベッドへと運んだ。それにしてもいい匂いだな。香水?いや、化粧?ファンデーションか……この人、薄化粧なのにここまで綺麗だからホントすごいよ。芸能人でもここまで綺麗な人はあまりいないだろうと俺は思ってしまう。


 にしても、俺はどこで寝よう?いや、簡単なことだ、ソファーで寝ればいい。


 今日の霧子さんはスーツだな……少し苦しそうだな……っと思いYシャツのボタンを一つ外す。やましい気持ちはない、そう……やましい気持ちはない!



「あれ?どこへ行くんですか?」


「へ?あ、ご、ご、ごめんなさい」



 どうやら起こしてしまったようだ。


 だが、目が半分も開いていない。



「スピー」



 また寝た……どうやら寝言だったようだ。ビックリした~。


 俺は理性が保てているうちに部屋を出た。



 明美ちゃんも今日は泊まれるように布団の用意をした。日菜子の部屋に客用の布団を敷き準備している間に二人は風呂に入ってもらう。


 どちらが先に入るかまた、喧嘩でもするのかなっと思っていたが、日菜子が譲り明美ちゃんがそれに従う。っと、拍子抜けするぐらい息ピッタリだった。


 さっきの喧嘩はやはり痴情の縺れか……俺には何も出来ないな。





 深夜0時を回りふと娘達が気になった。二人が喧嘩していないだろうか。夕食後の修羅場が脳裏に浮かぶので俺は日菜子の部屋をそっと覗く……そして、大人しく寝ている姿を確認して安堵した。



「よかった~」



 我が家のソファーは簡易ベッドになる製品で以外にも快適に寝ることが出来るという謳い文句がついたソファーだ。ただ、この機能を今まで使ったことがないのでどんなものかと思っていたが、これが意外にも快適だった。これは朝までぐっすりと寝れそうだ。


 そして、ソファーで寝ていた霧子さんを思い出した。



「うん、部屋のベッドに運ぶ必要がなかったな……これなら十分に休める」




 ◇





 朝、起きるといつもと違うことに違和感を覚える。あれ?と思ったが少しずつ昨日の記憶が蘇る。あ、そうか、霧子さんにベッドを貸したからソファーで寝たんだった。


 ただ、ソファーベッドの寝心地は良かったのだが、どうにも体が重たい。疲れているのだろうか?そう思って自分の身体を見るとそこには可愛い寝顔の明美ちゃんがいた。


 何故か下着姿で俺の上に乗っている。



「あれ?なんで明美ちゃんが、しかもその格好」



 俺はもしかして……いや有り得ない。久しぶりにぐっすりと寝た。熟睡なんてここ最近あまりなかったんだ。



「おはようございます。カイトさん」



 声が聞こえて、心臓が口から飛び出そうになった。


 キッチンから透き通った綺麗な声が朝の挨拶をしてくれる。そう、霧子さんだ。当然ながら、俺は――――――――――――血の気が引いた。



「お、お、おはようございます。あ、あ、あのですね、これは」


「うふ、カイトさん、分かってますよ」


「え?そ、そうですか。良かったぁ」



 俺はやましいことは何もしてない。明美ちゃんが寝ぼけてここにいるだけ……のはずなのだ。でも流石霧子さん。この状況をよく理解しておられる。流石、明美ちゃんのお母さんだ。



「私には手を出さないのにうちの娘には手を出すんですね」



 ちょっと待った!何も分かっていない――――――弁解をせねばと思ったが日菜子が来て騒ぎ始める。



「ああ、明美酷い。お父さんを取らないで」


「ち、違う。明美ちゃんはたぶん、寝ぼけてここに」


「嘘だ、嫌だ!明美が私のお母さんになっちゃう、うわーん」


「なるか!」



 本気で泣き始める日菜子。


 それを見て霧子さんは笑みを浮かべながら俺達の様子を見守っている。が、その笑顔がちょっと怖い。



「カイトさんが私の息子になるのですか?はっ、ということは私は日菜子ちゃんのおばあちゃんになっちゃいます」


「だから、なりませんって」


「ふふ、冗談ですよ」



 頬に手を当て優しく微笑む霧子さん……しかし、やはりどことなしか怒っているように感じる。


 冗談と言ってはくれているが……どこまでだろう?



「もう、揶揄わないでください」


「ごめんなさい、あ、そうそう昨日のお礼に朝食を作ったのですが」



 今更ながら霧子さんのエプロン姿に気が付く。そして、キッチンからいい匂いがする。匂いのする方を見るとそこには朝食が4人分、用意してあった。



「すみません、こんな豪華な朝食を」


「豪華だなんて、普通の朝食ですよ」



 ソファーから見える限り、ご飯に味噌汁、里芋の煮物にだし巻き卵と俺が理想とする朝食が我が家のダイニングテーブルの上にあること自体、すごいことなのだが……



「普通なんですかね……」


「はい、だから遠慮なく食べて下さい」


「ありがとうございます」


「そのままでは動けませんからちょっと待ってくださいね。明美、起きなさい」



 霧子さんは俺の身体の上で寝ている明美ちゃんを起こしてくれた。中々起きない明美ちゃんにアイアンクロウをしている霧子さんは少し怖かった……。


 明美ちゃんがいなくなり俺も体を起こした。


 俺は自分の部屋に戻り着替えをしていた。そこへ日菜子がやってくる。



「お父さん!日菜子も明美も結婚できる歳なんだよ」


「ああ、知っているよ」


「日菜子は(お父さんと)結婚できるよ」



 日菜子は何が言いたいのだ?


 まさか、結婚したいとかいいだすんじゃ……?


 ダメだ!まだ早い。


 お父さんは許しません!



「うん、出来るね。でも、日菜子にはまだ早いからダメ」


「なんで!好きなの、愛してるの(お父さん……ううん、カイト!)」



 かなり真剣に迫る日菜子……まかさこんなにも早く娘が結婚を考えるなんて。


 それよりも相手は誰だ?


 父親としてどう接すればいいのだ?


 だが、まだ日菜子は高校生だ。



「……わかった。だが、高校を卒業するまでその話は置いておけ、その時に気が変わらなかったら俺も考えるよ」


「……本当?(カイト、私を女としてってこと?)」



 日菜子の顔が急に明るくなる。



「ああ、もちろんだ」


「絶対だよ、約束だよ……ヤッホー」



 飛びあがるように喜ぶ日菜子。そんなに惚れているのか。


 だが、今はまだ俺は相手の男に会いたくないな。


 大切に育てた娘をまだ他所へやるわけにはいかない!


 それに気持ちの整理が……父親って辛いな。



 その後、着替えを済ませたところに明美ちゃんがやってくる。


 どうやら、俺に謝りに来たようだ。



「あのカイトさん、先ほどはすみませんでした」


「いや、気にしてないから」


「えっと、カイトさん……私はもう結婚できるんです」



 ん?さっき日菜子とも同じ話を……ああ、まさか同じ人が好きなんだっけ?


 そうか、寝ぼけたとしても同衾したようになっているし、嫌な思いをしちゃったんだな。


 なんか、不憫だ。


 多分、彼のことを好きなんだろうな。



「えっと、本当に気にしないでだから明美ちゃんも気にしないで」


「いえ、でも……どう思われるか気になるし(お母さんに……)」



 好きな人にどう思われているか気になるよね。


 おっさんの意見だけど、フォローを入れておこう。



「大丈夫、(君の好きな彼は)君しか見えてないよ」



 明美ちゃんほど可愛い子がフラれるなんて考えられないもんな。



「え?私だけ……(オンリーユーって意味?)」


「ああ、もちろんだ」


「あ、あの……私……その時はしっかりとしたお嫁さんになります」


「明美ちゃんなら大丈夫、既にしっかりとしているよ」


「キャー、恥ずかしい……カイトさん、ありがとう」



 明美ちゃんは火照った顔を両手で覆って逃げるように俺の目の前からいなくなる。


 明美ちゃんのウエディング姿は綺麗だろうな。


 でも、霧子さんがオーケーする男性にしないとダメだぞ、明美ちゃん。



「あの、カイトさん」



 明美ちゃんが出ていってその後に霧子さんが部屋にやってきた。


 なんか入れ替わり立ち代り人が入ってくる。



「食事が冷めますのでお早めにお願いします」


「あ、すみません」



 どうやら朝食を早く食べるように呼びに来てくれたのだ。


 そうだよね、直ぐに着替えてリビングに戻るつもりが娘達と話していたから遅くなってしまった。


 折角、作ってくれた料理が冷めてしまうなんて勿体ないもんな。



「あと、娘のことなんですが」


「はい?」


「えっと、その……まだ、高校生なので、避妊はお願いします」


「いやいやいやいやいやいや」



 霧子さん……もしかして本気にしていたの?


 どうしよう誤解を解かなくては……。


 先ほどの発言後、霧子さんは俺と顔を合わせてくれない。そして、すぐにリビングへ戻るために踵を返して向きを変える。



「あ、あと……その……」



 背中越しに何かしゃべろうと立ち止まったので俺はチャンスと思い弁解をしようと思ったが



「霧子さん、聞いてください――――――」


「もし……もしもですが……わ、私なら、いつでも……ありのままのカイトさんを受け入れますので」


「……え゛?」



 霧子さんはこちらを向くことなくそのままリビングへ足を運ぶ。


 俺は霧子さんの言ったことを理解するのに少しばかりだが時間が掛かった。


 おかげで朝食が少し冷めてしまったのだが、霧子さんの手料理だからだろうか?……とても温かい味に感じた。


貴重なお時間を頂きましてありがとうございます。


また機会がありましたら他の作品も読んで下さい。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] うーん、出てくる女性たちが揃って極上の美少女、美女だと書いてある(つまり放っておいてもモテそうなキャラ)なのに、主人公カイトの一体どこに惚れたのか、全く分からないです。特に容姿も言及さ…
[良い点] 超男前(内面)なお父さん! [一言] めちゃくちゃ面白かったです!
[一言] 引き取ったとしか書いてないので、養子縁組してないんかな?と勝手に解釈しときました。 詳しく書くとそれはそれで重たい話になっちゃいますしね。
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