日常って難しい
新社会人の皆さんがどこかで一瞬感じたことのあるような、覚えのあるような感覚を、それとなく文字に起こしてみました。
突然ですが、あなたはどんな【日常】を過ごしていますか?
分刻みで設定したアラームに起こされて、慌ただしく家を出る____。
もしくは、朝日とともに目を覚まし、きっちりとした朝食をとって、時間に余裕をもって家を出る__。
まあだいたいこんな感じだろうか?
ちなみに僕はもっぱら前者なわけだけど。
そんなわけで今はギリギリで滑り込んだ満員電車のなかでもみくちゃにされている。
これから学校や仕事へ向かうまだ少し眠そうでいる戦士たちは、みんな制服やスーツをぴっちりと着こなしている。ちなみに僕は今年社会人になったばかりのいわゆる新社会人だ。
未だ抜けきっていない学生気分に、上着の下の会社の制服は頼りなさを隠し切れないでいる。
僕の勤めている会社は日用品や雑貨、食品や園芸品、ペット用品まで取り扱っているスーパーだ。
そんな会社に春から入社した僕だが、この仕事に対して少しやりがいは感じているものの、不安ばかりが募っていく日々で(とくに職場内での人間関係について)ちょっと疲れ気味でいた。
「(ああ…、今日は店長が休みなんだっけ。じゃあ今日はわざわざ店長室に顔を出しに行かなくいいな。)」
それだけが救い。
毎朝出社して店長に『おはようございます』と挨拶しに行くのにどれだけの気力を使っていることか。
いや、わかっている。上司に挨拶をするのなんて当たり前のこと、なんてことは僕もちゃんと知っている。
わかってはいるんだけども!
毎朝そのことを考えるだけで頭はズキズキ、お腹がキュッと痛くなる。
別に店長ものすごく怒りやすい人で、性格も最悪な人ってわけでもない。
むしろどちらかといえば、親しみやすく話しかけやすい雰囲気を持った清潔感のある素敵な上司だ。
それでも、だ。
頭もお腹もキュッと痛くなる。
これは新社会人特有のものなのか、それとも自分が思っているよりも自分が臆病なだけなのか__。
ともかく僕はこれをストレスに感じている。
でも今日はたしか店長が休みの日だ。少し肩の荷が下りたようなそんな気分になって思わず僕は長く大きなため息を満員電車の人ごみの中に吐き捨てた。
僕の今日のシフトは早番だ。
だから、店の開店準備の店内の清掃やレジの設置、店内の照明の点灯などをしなくてはならない。
店の裏口にまわり、従業員入口の扉を開けて店の倉庫を突き抜けた先の休憩室を目指す。
その道中に他の早番のパートさんや社員さんに出くわさないかとヒヤヒヤしている。
朝のこの時間が一番苦手だ。挨拶しなきゃいけないこの時間。
「(今日は誰とも出くわさないで済んだ…)」
ホッと胸を撫でおろしながら休憩室の扉を開ける。
「あ、おはようレイくん。今日は早番やったのねぇ。」
___正直終わったと思った。
パートさんと出くわしてしまった。
少し浅く息を吸ってから、マスクをつけたままで僕は、
「おはようございます。」
精一杯目元で笑顔を作って挨拶をした。
読んでくだっさってありがとうございました。