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3.語り部ちゃん、チョロい

今後週1か週2くらいで更新してきます。

放課後は扉の向こうに掃除機があるかのように生徒が教室から吸い出される。

少しばかり教室に残る者もいるが、すぐに帰っていくだろう。

具体的な内訳は以下の通りである。

部活動に向かうのが約4割、バイトに向かうのが約2割、帰宅するのが約2.67割、誰もみてないのに机の上で三点倒立をするのが約0.33割、その他が約1割だ。


金城時也は普段なら帰宅の割合に属する。

家に帰って、電子の中にある世界を救う使命があるからだ。

しかし今日はひと味違う。

世界を救うよりも、大事な使命がある。

学園ハーレム化計画は今の金城時也にとって何よりも優先すべきことなのだ。


まず、水無月のどこに魅力があるのか、探っていくことから始めることにした。


(今日は、水無月を追跡するっ…!)


モテるやつがどんなやつなのかはわかっているが、結局どうすればあんな風になれるのかと考えた時に頭がブローする。

何から手をつければいいかわからない状態だ。

そこで、自分のスペックに近いと思われる水無月守を掘り下げることで、ヒントを得られるかもしれないと思い至った訳である。


ヤローがヤローをストーカーするという、ラブコメとしてあってはならない展開が、今まさに始まろうとしていた。いや、まだラブコメじゃないからセーフかもしれない。


水無月守は帰宅の部類に属するため、自然に教室を出る流れとなった。

神無月愛子はバレー部の方に行くので彼は今一人だ。

ばれないように、マスクを装着し追跡を開始。

ターゲットは階段を下り、下駄箱で靴に履き替え、校門を出る。至って普通だ。

その後、学校前の信号を渡り、左に曲がってまっすぐ進む。

金城時也の帰り道とは反対方向だ。

彼は水無月守の10メートルほど後ろを歩いているが、全く気付かれる気配はない。


(普通に帰ってるだけだな……)


交差点を赤信号で止まる。

その時だった。


「まーもーる! なーに湿気たツラしてんの!」


声を聞いた瞬間、金城時也に、電撃、走る。


(なにぃいいいいいいいいいいいいいっ!!)


青信号側の横断歩道から歩いてくるのは、神無月愛子とは別のベクトルでコアな男子ファンを多く持つ、嵐野蓮夏だった。


ショートカットの金髪で、ピアスをつけ、スカートを短く捲っている。

一見、素行が悪そうに見える彼女だが、現実は逆だ。

金髪は勿論校則違反である。にも関わらず、成績がどの教科もすごく優秀で授業態度もよく、行事なども積極的に参加することから、教師が諦めて金髪を黙認しているという話は有名だ。

勉強よりスポーツが得意そうな見た目をしているのに、勉強の方が得意というギャップに男たちは釘付けになるのだ。

ちなみに胸は神無月愛子より少し小さいらしい。


そんな彼女が、冴えない男、水無月守に話しかけているのである。


(どうしてトップクラスに可愛い子ばかりと仲良さげにしてんだ!!お、おまいは学園ラブコメの主人公かぁあああ!!)


目の前で起こるラブコメ的展開に、金城時也は脳内フィーバー状態だ。


自分の願望を目の前でまじまじと見せつけられる屈辱たるや、自制心を失いかねない破壊力である。


(落ち着け!落ち着け俺!冷静にターゲットを観察するんだ!)


金城時也は手のひらに人の字を4回くらい書き、高ぶった感情を鎮めた後、ケータイを取りだして弄るふりをする。

さも、歩きながらケータイを弄るのは良くないから立ち止まってるよ的な雰囲気を出して。

そして、交差点側に耳を傾ける。


「嵐野か、別に湿気たツラなんてしてへんやろがい」


「あれ、守って関西弁だったっけ」


「そういや嵐野にはまだ言ってなかったな。これ、呪いなんよ。春休みのある時を境に胡散臭い関西弁しか話せなくなってしもたんや」


(お前のキャラ設定濃すぎるだろ!!もう意味が分からんわ!しかもそんな呪いあってたまるかっ!!)


「まじで!?誰にやられたの?」


(嵐野さんもなんで信じるんだよ純粋すぎかっ?!)


「あ……あ……っ! あぁ、くそっ言えへんっ……」


眉間に手を当て、苦痛の表情を浮かべる水無月守に、嵐野蓮夏は真剣な顔で言った。


「名前を言えない呪いもかけられてんだね」


(無駄にめんどくさい呪いだなおい)


「そうみたいや。ま、そんなに困ってないし、これはこれで楽しいからええわ」


「ふーん、あんたがそう思ってるんならいいんじゃない? あたしもあんまり気にならないし」


(なんで生活に影響のある呪いをなぁなぁで終わらせてしまうんだろうかっ……!)


ここで、目の前の信号が青になった。

歩きながら、少し間を置いた後、話題が変わる。


「バイトめんどくさいなー」


嵐野蓮夏は両手を頭の後ろに持っていき気だるく呟いた。水無月はケータイを弄りながらキレのある関西弁でそれに答える。


「辞めればええやん」


(結論出すの早すぎなんだよなあ!もうちょっと言い方あんだろ!)


「例の先輩に言い寄られるの、嫌なんやろ?

辞めてまえよ」


(なるほど、そういう背景があったのか、さっきのツッコミは取り消そうじゃないか)

意味不明な呪いの話から急にまじめな話になったので、金城時也は成り行きを見守ることにした。


「そうだけど、仕事自体は楽しいし、店長とか他の人は良い人なんだよね」


「彼氏いることにしたらアカンの?」


「いるって言ってるんだけどね、、これがなかなかしつこいやつでさ」


嵐野蓮夏はウンザリだと、細い眉を傾かせる。


「でも別にシカトしてれば害はないから、絡まれるの面倒だけど今のまんまでいいやって思ってる」


「そーか。危ない雰囲気出してきたら店長に言うんやで」


「わかってるよ、心配要らない。前のあたしとは違うんだから」


それを聞いた水無月守は安心したように微笑すると、ケータイをしまい、声のトーンを朗らかにして嵐野蓮夏の名前を呼ぶ。


「嵐野」


「ん?」


「明日、畑目たちとメンコ大会やるんやが、来るか?」


(出たよメンコ大会!いい加減にしとけよまじで!)


「パス」


「絶対面白いぞ?」


(お前のそのメンコ大会への信頼感はなんなんだよ!)


「畑目って別の学校の男子でしょ? まためんどくさくなったら嫌だし、悪いけど遠慮しとくよ」


「そうか……残念だ……」


(メンコ大会断られただけで同志が死んだみたいな声を出すんじゃないよ!)



さて、三話目にして全く女子と絡める気配のない金城時也は、学園ラブコメ主人公感を全身から醸し出している水無月守から、モテる秘訣を見出だすことができるのか?!

次回へ続く!



         〉to be continued〉



終わった終わった。

さっさと帰らなきゃ。

今いけばまだ卵のタイムセール間に合うかも。


え? 家庭的で可愛い?


そ、そんなことないわよ……


そんなこと…


お、お疲れ様でした!


バタン!(扉が閉まる音


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