表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

2.やはりツンデレは良い

2年に進級してから3日目の登校を終え、授業を受ける。

授業を受けている間はイケイケも陰キャもたいして変わらない。寝てるか、真面目にノートを取っているか、ケータイをいじっているかのどれかに該当するだけだ。

違いが明確に現れるのは休み時間の鐘がなった後。

その時間だけ教室はガラパゴス諸島になる。

様々な種類の生き物が、好き勝手に好きなことをやっている。


先ほどの授業を復習をする優等生。

教卓側にある窓際のストーブで、持ってきてはいけないはずのお菓子を食べながら駄弁るイケイケ。

ケータイをお互いに見せ合って話しながら盛り上がるギャル。

教室の後ろでカバディを始めるフツメン。

誰もみてないのに机の上で三点倒立をしているbaka。

移動教室の準備をしながら、帰りにスタバ行く約束をするフツ女子。

女子が見たらドン引きするような表紙のラノベを堂々と読む千宮司 亜土夢。


もちろん我らが主人公もこの混沌の中にいる。


さて、すでにおかしい状況である。

こんなにもボケの多発している空間に対してどうして彼は脳内ツッコミをしないのか。

答えは簡単。疲れたからである。

2日前に死ぬほどツッコんだため、もうこの状況に対してツッコむ気力がなかったのだ。


イケイケな連中が独占しているストーブとは真逆にある廊下側の机で、金城時也は考えていた。


コミュ力なんて毛ほどもない自分が、どうしたら学園ラブコメのようなハーレム状態を実現できるのか。


今朝の水無月守を見て、ふと思ったことだ。

端から見てあんなにイマイチな男が美女のハートを射止められるのだから、自分にだって出来ないはずはない、と。 


水無月守にはあって、自分には無いもの。

眠そうな目ぐらいしか思いつかない。

幼馴染みという属性が強いからだろうか。

いや、実は魔法少女と契約していて…


などと色々考えた末に、まず、現在の自分のステータスを見直すことから始めてみることにしたのだった。




------------------------------------------------------------------------

(金城時也のステータス表)


見た目     ……中の中の下

成績平均    ……5段階評価で2

筋肉      ……たまにペットボトルの  

         キャップが開けられない

コミュ力    ……コンビニで女性の店員に 

         「温めますか?」と聞かれるだ

         けで心不全になる

特技      ……脳内突っ込み

趣味      ……youtubeのゲーム実況漁り

         ゲーム、マンガ

バイト     ……してない

友達      ……学年での友達人数5人??

ファッション  ……興味ないね。

スポーツ    ……興味ないね。

好きな芸能人  ……2次元しか興味ないね!

好きな食べ物  ……そうめん

将来の夢    ……小説家になろうで一発当て

         てプロ作家デビュー

好きな人    ……うーん、いない

今やりたいこと ……帰りたい

今欲しいもの  ……メロンパン

自分のこと   ……考えたことない


------------------------------------------------------------------------





金城時也はこのステータスを頭に浮かべたとき、すごく異世界転生したくなった。

彼は生まれて初めてトラックに轢かれたいと心から願ったのだ。


だが別に彼はこの世界で生きるのが楽しくない訳ではない。

帰って深夜までゲームするのはすごく楽しいし、休日にマンガ喫茶で気になったマンガを読み漁るのも最高だ。

マンガやゲームは感動や新しい価値観を教えてくれるし、なにより女の子キャラが可愛い。

Youtubeのゲーム実況は縛りプレイや、実況者のトークが満載で見てて飽きない。

生活は普通に充実している。

他人がどう思おうが、自分が楽しければ良かったのだ。


では何故現実逃避したくなってしまったのか。



(こんなんで、モテる訳がないっ……!!)



あまりにも、女の子ウケの悪そうなステータスだったからである。


そして葛藤した。

もしかしたら、こんな自分でも好きになってくれる子がいるかもしれない。だから無理に自分を変えようとしなくても、やりたいことを優先していても良いのではないか? と。


確かに、それも良いだろう。

世界の人口の半分は女だ。

統計学的に言えば余裕で結婚できる。


しかし、彼はそこで終わらなかった。

オスとしての本能がその妥協を払拭したのだ。



(俺はっ!!ハーレムがしたいんだぁあああああ!!)



と。



(鈍感系主人公になって、S級美女ヒロインたちを翻弄したいんだぁああああああ!!)



と。



自分が今、本当に欲しいものはメロンパンだっただろうか。いや違う。



(おっぱぁあああああああああああい!!)



そういうことだ。


自分と向き合うことがとても辛かったのか、その目には涙が浮かんでいた。

泣きそうな顔で天井を見上げているのを、水無月守が好奇の目で見ていることなど、彼は全く気づいていないだろう。


腕を組み、大会社の社長の如き貫禄でもって、現状打破の方法を検討する。


だがこれが全く思い付かない。

何から手をつけるべきなのか、どうればモテるようになるのか。

そもそも男となら普通に会話できるが、女の子と会話となると心不全になる。まずお母さんで練習すべきか。いや駄目だ。お母さんは……お母さんはなんか違う!


(くそっどうしたらいい……)


最近全然使ってない頭は高回転に耐えきれずエンジンブローを起こし、脳内で白煙を撒き散らした。


そこへ、一人の男が声をかける。


「金城君やったっけ? 泣きそうな顔してる思ったら難しい顔してどないしたんや」


水無月守である。

本家の関西弁というよりは、ネット民がふざけて使う時の関西弁のように聞こえるのは気のせいだろうか。


「今朝も俺の後ろで怖い顔しとったやんけ」


金城時也は思った。


(関西弁で饒舌に語りかけてくるお前が一番こえぇよ!! お前のキャラ設定どうなってんだよ!)


「あ、えーと……」


学園ハーレム化計画の脳内会議をしていたとは死んでも言えない。

しかし、エンジンは絶賛空回り中である。


「その……少子化問題を俺が解決しようかなって、ちょっと考えてただけだよ」


と、彼はとてつもなくキモいことを言った。


(やばい…しくじったっ!子どもいっぱい作ります宣言しちゃったよ俺ぇええ!)


まるでごまかせていないのにも関わらず、自信たっぷりのドヤ顔が、謎の説得力を産み出したのだろう。或いは、違う意味に捉えられたのかもしれない。

水無月守は金城時也に尊敬の眼差しを向けていた。


「まじめなこと考えるんやな。金城君は」


「ま…まあ、たまにだけどね! へへっ!」


(凌げた……っ!これぞまさに…僥倖っ!!)


絶大なミスである筈だったが、何故か好印象で済んだ。

普段の行いが良いからかもしれないと金城時也は思ったが、語り部の私が全力でそれを否定しよう。お前はゲームやってるだけだ。


「俺もちょっとは見習わんとな」


「ええっとごめん、水無月君でいいんだよね? 」


「え? ああ、自己紹介がまだやったな。水無月守や。同じクラスやさかい、よろしくな!」


「え、あ、よろしく…へへっ!」


軽く握手を交わした後、水無月守は廊下に消えていった。


(なんて爽やかなやつっ…!)


水無月守は、思ったより快活なやつだった。

しかし同時に疑問が浮かんだ。


こんなに馴染みやすそうな雰囲気なのに、新しい教室になって3日間、神無月愛子と以外、誰かと話している所を一度も見ないのはなんでだろう?



          〉to be Continued〉



っはぁ~…ようやく終わったぁ。


……語り部やるのしんどくなってきた。


なんで語り部って堅苦しく言わなきゃいけないのかなぁ。


私この主人公生理的に無理だし。


もうやめちゃおうかな~……



……………




べっ…別に!!止めてほしくて言ったわけじゃないんだからね!!



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

『おまけ』


(千宮司 亜土夢の意味深なステータス表)



見た目の自己評価……自分ではよくわからないけ

         ど、周りからは良くキリト

         に似てるって言われる。

成績平均    ……5段階評価で、もう少し頑

         張れば5かな。

コミュ力    ……話そうと思えば話せる。

筋肉      ……腹筋が割れてはいる。

特技      ……二刀流。

趣味      ……狩り。

友達      ……そこそこいるかな。

ファッション  ……自分では良くわからないけ

         ど最先端だねって言われる

バイト     ……飲食店だよ。

スポーツ    ……サッカーとかは軽くできる

好きな芸能人  ……芸能人とか、憧れたことな

         いからわからない。

好きな食べ物  ……牛肉の赤ワイン煮込み。

将来の夢    ……小説家になろうで一発当て

         てプロ作家デビュー。

好きな人    ……えー、教えない

今やりたいこと ……サーフィンかな。

今欲しいもの  ……一人の時間。

自分のこと   ……悪いやつじゃない。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ