表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名も無き物語~無能の白銀騎士~  作者: 木ノ添 空青
騎士への道編
81/83

武道場の思い出

「私は今、とても残念な気持ちでいっぱいです……」

 事の経緯を洗いざらい全て話し終えると、かぐやはふくれっ面でそう言った。

「面目次第もございません」

 硬い板床の上で正座したまま、深々と頭を下げる僕たち二人。

「……ねぇちょっと、なんであたしまで頭下げてんのよ」

「いいからちょっと黙っててください」

「聞いてるのかな? お二人さん」

「「あっ、はい」」

 僕たちの正面に向かい合うように正座しながらも、顔はどこか不満げにそっぽ向いていた。

「……あのね、みんなにも迷惑かけちゃったし、心配させちゃってるっていうのもわかる。でも、だからって、こそこそ後を着けて探るっていうのは違うんじゃないかなぁ」

「違いますかぐやちゃん。ジンくんたちの心配を煽ってしまったのは私です。ごめんなさい」

 違う。きっかけになったのは、風花さんからの相談じゃない。かぐやを信用出来なかった僕たちの問題だ。

「ごめん。別にかぐやの言葉を信用してないとか、そういう事じゃなくて。ただ、昨日は、かぐやらしくないっていうか、なんか気になっちゃって」

「……そんなこと、ないよ」

 正座した膝の上で、その真っ白な手が固く握られた。

 それから、暫しの沈黙が稽古場に訪れた。聞こえるのは、各々の微かな呼吸と、床板に擦れる衣服の音。

 沈黙を破ったのは、かぐやの少し後ろに正座していた風花さんだった。

「かぐやちゃん、ひとまず稽古に戻りませんか? ジンくんもティナちゃんも、元々はかぐやちゃんの稽古を見学に来たのですから。せっかくなので、見ていってもらいましょう」

 その言葉に、かぐやは固くしていた身体を跳ね上げ、身体ごと後ろへ振り返った。

 どんな表情をしていたのだろう。風花さんがうなづいたのを確認し、不安気な面持ちで視線を戻し、小さく返事をした。

「……はい、わかりました」


 ◇◆◆◇◇◆◆◇


 少し身震いしてしまいそうな床板の冷たさ。対照的に、湿度を余分に含んだ生温い空気が、鼻から肺へと流れ落ちる。

 稽古場の端に正座した僕と、痺れが切れたらしい脚を伸ばして座るティナ先生。

 かぐやの稽古風景を覗きに行こうという、あまりにも大雑把な密偵ごっこの結果、即刻バレて今に至る。

 数々の騎士たちの成長を見守ってきたであろうささくれた壁に、滲む汗を飛ばしながら打ち合う、二人の木刀が音を響かせている。

「……」

 本来ならば、バレてお説教までされた原因について、ティナ先生をチクリチクリと糾弾したいところなのだが、目の当たりにしている光景が、僕からその余裕を奪い去っていった。

「ねぇ、さっきも言ってたけど、かぐやって随分変わった立ち回りなのね。あんたの知ってる時からなの?」

「知ってるもなにも、あの型は……」

 見覚えがあった。かぐやと出会う前であれば、即座に知らないと答えていたんだろう。

 剣の柄ではなく、刃の根元の辺りを握りしめ、逆手に持って風花さんの打ち込みを弾くその姿。僕の脳裏では、まったく同じ型で戦って見せた、あの少年の無邪気な姿が蘇っていた。

「……ヤマトにいちゃんと、同じだ」

 かぐやの実家は剣術道場で、ヤマトにいちゃんも門下生だと言っていた。あの戦い方は、道場でお父さんから教わっているって話も聞いたことがあった。

 でも、かぐやは門下生じゃなかったはずだ。そしてそのまま、あの事件があったんだ……。

 ――待って。ということは、かぐやは誰にあの剣を教わったんだろう。

 黒い髪を背後に束ね、必死に汗を流している少女。少しずつではあるけれど、かぐやの不調に繋がる原因に指先が触れたような気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ