たとえこの身に変えてでも
「地界神様、博士。……僕が、かぐやを助けます」
そう告げると、二人とも互いに顔を見合わせ、飲み込めない面持ちのまま再び僕を見た。
「いや、少年。せやから方法はこれしか」
「もう一人声をかけていない大精霊がいます。それに、彼は強力してくれるみたいです」
「まさか、オリジンか!? なんか知っとったんかアイツ!?」
「あまり褒められた方法じゃなかったですけどね」
何かを察したのか、表情が若干強張った。前のめりになっていた姿勢を少しずつ引き、不安気に唇が震えている。
「いったい、何をする気や?」
「かぐやの精霊を穢れごと、僕の中に取り込みます。かぐやの霊力回路を直接僕に繋げて、オリジンが隔離した部分をそのまま引っ張り込むんです」
「――ッ!! 何を言っとんのかわかってんのか!? すでに精霊一匹喰い殺した穢れやで! どんな苦痛かも分かれへんのに認められるかドアホ!!」
秀麗な姿からは想像できないほど鋭い剣幕で詰め寄ってきた。
しかし、それをそっと抑えたのは、それまでずっと口を噤んでいたガリベニアス博士だった。
「ちょっと待て。……ジン、その方法が可能なら、確かにその小娘はすぐに目を覚ますことになるかもしれん。だが、今コイツが言ったように、お前がただでは済まんぞ?」
「はい。それもオリジンから聞いていますし、重々承知の上での決断です」
「あのなぁ、確実に成功する保証もないねんで!? もし失敗したらどないすんねん。あんたもこの子も、一緒に死んでしまうかも分かれへん」
「そんな事にはなりません」
「なにを根拠にそんな事ベラベラと」
「お前は少し落ち着け」
「いや、無茶苦茶言ってるのはわかっています。でも、これ以上かぐやを一人ぼっちにしたくないんです。ずっと一人で苦痛に耐え抜いて、やっと自由になれたのに……。これじゃあ、悲しすぎますよ」
そう伝えると、僕に掴みかからん剣幕だった地界神様がため息をついて両手を組んだ。
「それで……、あんたが身代わりになってその子が助かったとして、あんたに会われへんその子の辛さは考えたんか? 倒れたアンタを見るその子が何を思うか、よっく考えての決断なんやな?」
「……正直、めちゃめちゃ怒ると思います。昔、溜め池に落ちたかぐやを助けて溺れかけて、ヤマトにいちゃんに助けてもらったことがあったんですけど、その時もすごい怒られて。でも、目を覚ますまでちゃんと待っててくれました」
「ふっ。……だそうだ、姉上」
「はぁ。うちは弁解せぇへんからな? これからの事は全部アンタの責任やで。例えこれで死んだとしても、アンタと白坊主が勝手にやった事にするで?」
「もちろんです!! 僕の信念と、地界神様に誓います」
「……わかった、承ったるわ。こっちで準備しといたるから、着替えて身体洗ってこい」
「ありがとうございます!」
そう言い残し、僕は病室から駆け出した。
あぁ~あ、とんでもなく痛いんだろうなぁ。お腹斬られるのとどっちが痛いんだろ。全身火だるまになった時も凄まじかったし。
でも、今の僕に後悔や迷いは無い。本当の意味でかぐやを救う。でも、こんなやり方はこれで最後にしよう。そして、目が覚めたら全力でみんなに謝ろう。その為にも、絶対に耐えきって帰ってくる。
きっと、待っていてくれると信じて。
ご覧いただきありがとうございます。
今後ともご贔屓に。
木ノ添 空青




