純白の光明
どれくらいの時間が経ったんだろう。あっという間にも思えたし、とても長い時間にも思えた。
初めて守り抜いたかぐやの隣で、ずっと手を握り続けていた。
「入るで、お二人さん」
「地界神様、それに博士も」
「お前、一度着替えに帰ったらどうだ? 血生臭くて小娘もたまらんだろう」
「へ? あぁ、そういえば帰ってきてそのまま……」
「その前に少年。改めてその子の事を伝えときたいんやけど」
「おい、今は……」
「黙っとけ。遅かれ早かれいう事になんねやったら、先に言っといたほうがええ。それに、聞きたいこともあるしな」
どうやら、いい話ではなさそうだな。でも、僕も地界神様には同意だ。先に詳しく聞いておきたいし。
「わかりました。聞かせてください」
「まず、その子と少年はどういう関係なん?」
「幼馴染なんです。ほんとに小さい頃、ずっと一緒に過ごしてきた、僕にとって家族みたいな……」
それから、僕とかぐやの関係をすべて伝えた。憶えている限りの全てを。
楽しかったことも、辛かったことも。話下手だから行ったり来たりの話になったけど、何も言わずに静かに聞いてくれた。
「そか、少年にとってその子は大事な人なんやな。あんたのやった事は辛かったと思うけど、うちはその決断を責めたりせんよ。よう頑張ったな」
「地界神様……。ありがとうございます」
「だからこそ、言わなあかんな。聞いたかもしれんけど、その子の中におった精霊は、切り離された精霊の間でまだ暴走を続けて、とんでもない量の穢れを吐き出しとる。その子が目ぇ覚まさんのはそのせいや」
「やっぱり、そうですか。オリジンからも聞かされていました。今の状態は、ただのその場しのぎだからって」
「でな、正攻法として考えた治療手段は、常に三人以上の精霊術師に今日から十年くらい、毎日絶やさずずっと治癒術をかけ続けてもらう事しかないと思うねん」
「――ッ!? じゅ、十年間、ずっと!? それじゃあ、かぐやが目覚めるのは」
「どんだけ早くても十年はかかる、大精霊にも協力を頼んでみたんやけど、全部断られたわ。でも、冷たいなんて考えんで欲しい。それが精霊に仇なすって事やねん。精霊に罪はないんや」
「……っ、そんな」
ようやく自由にしてあげられたのに、ここからまた10年眠り続ける。
今度は精霊もいない、本当の一人ぼっちで……。
『大丈夫、まだ方法はあるよ』
ここは、精霊の間? ってことはオリジン!?
「なにか知ってるの? まだ助けられる!?」
『手がない訳じゃない。でも、あまり褒められた方法じゃないけど』
「なんでもいい! 教えて!」
『……かぐやの中にいる精霊を、穢れごとボクの中に取り込む。そうすればかぐやの穢れはどうにかできるし、また精霊を宿すことだってできる』
「その方法って……」
『うん、とても負担が大きい。それに、ボクだけじゃない。取り込む場所はここなんだ。宿主さんも一緒に暴走する精霊の穢れを受けることになる。その苦痛からはどうあがいても逃げられないし、途中で止める術もない。でも、ボクの力なら、主様の言っていた方法よりも早く宿主さんを解放してあげられる』
「……そっか。どうしようオリジン」
『どうって?』
「僕、今すごく嬉しいんだ。これからとんでもなく苦痛な時間が待ってるのに。オリジンが助けてくれることがすごく嬉しい」
『えぇ、悩む余地はないのかい? 痛いの苦手な癖に』
「頑張れるよ。僕にはオリジンがいるんだから」
『本当にいいんだね?』
「オリジンこそいいの? こんな僕の我がままに」
『ボクは主様に神殺しの脅威が無いようにしているだけだよ』
「そっか。ありがとう、オリジン」
少しずつ遠くなる白い世界に、僕は何度もありがとうを伝えた。
戻ってきた現実に流れる沈黙。
申し訳なさそうな表情をしていた二人に、僕はそっと呼びかけた。
「地界神様、博士。……僕が、かぐやを助けます」
ご覧いただきありがとうございます。
いよいよ一つ目のフィナーレへと差し掛かりました。
下手くそな文章ですが、何卒最後まで、彼らの躍動を見守ってあげてください。
今後ともご贔屓に。
木ノ添 空青




