アカイキオク
※鬱展開につき閲覧注意だゾ☆(ゝω・)vキャピ
では、ごゆっくり。
「わたしちょっと見てくるね?」
「うん」
「にいさん! いるんでしょ!? 聞いてる!?」
そういって、小さい姿が二階へと消えてすぐの事だった。
「きゃぁぁぁ!!」
「――ッ!? かぐや!?」
急いで後をおって二階へ駆けあがった。二階の一室、空き部屋だったはずの扉が開け放たれている。
「かぐ……ッ!?」
その一室は、床一面、真っ赤な水溜りになっていた。部屋の隅には、頭のない三人の身体。
「……っぐ! た、タスケ、テ……」
「かぐや!? ヤマトにいちゃん!? なにしてんのっ!?」
どういうこと!? そこには、真っ赤な両手でかぐやの首を締め上げるヤマトにいちゃんの姿があった。
「なにしてるの!? こんなことやめて!!」
駆け寄ってその手を掴んでも、表情一つ変えずに固く力を込めている。
「やめてよ!! ダメだってばぁ!!」
「――ッ!?」
突然僕の手を振り払い、少し後ろへ引いた。一緒に、首を掴んでいた手も外れている。
「かぐやっ! 大丈夫!?」
「えほっ、ゴホッ!!」
「……貴様、白の精霊か。また我々の邪魔を」
「ヤマトにいちゃんっ! なにいってるの!?」
「おのれ、半端な呼び方をされて自由にも動けん」
なんだろう。周りに倒れているモノを見ちゃいけない気がする。
「忌々しい……。ようやく召喚の供物を得たというのに。貴様は早めに消しておこう」
全身に血を浴びた少年が足元に落ちていた剣を拾い上げ、ゆっくり、ゆっくりと近付いてくる。
「やめて……。やめて、ヤマトにいちゃん!!」
「消えろ、白の精霊」
「やめてぇぇ!!」
振り上げた右手に大粒の涙を浮かべたかぐやがしがみついた。
「もうやめてよ!! なにしてるのにいさん!!」
「鬱陶しい……。離れねば貴様から刻むぞ」
「やだ!! もうやめてよ!!」
「退け」
「きゃっ!!」
「かぐや!?」
振り払った切っ先が掠めたらしく、左腕から血が流れた。
「……っ! にいさん! いいかげんにしてよ!!」
「そうだよ! どうしちゃったの!?」
呼びかけには応えず、再び振り上げた剣。だ、だめだ……。身体が動かない。
その時だった。ヤマトにいちゃんが持っていた剣を落とした。咄嗟にそれを拾い上げ、正面に向けて構える。
「……ジ、ん。オれヲ、そ…ノケン、で、サ…せ」
「ヤマトにいちゃん!?」
「は、ヤク、お、まエを、ころス……」
手が震えてる……。
「エイ、ゆ、うごッコデ、ヤッたミ、たイ二……、はヤく」
「なにいってるの!? そんなのやだよ!!」
「ジ、ん…か、グヤ、を、ま、モレ……、お、オレ、を……、殺してやる」
「――ッ!!」
固まっていた右腕が振り下ろされた。まだ僕と身長も変わらない少年の拳が床板を砕く。寸前で身体を捻り、どうにかその拳を避けられた。
「……ッぐ、うぅっ」
必死に込み上げてくる感情を呑み込む。今僕を動かしているのは、ヤマトにいちゃんが確かに口にした言葉、「かぐやを守れ」。
「…ふ、……うぅ…ッ、うあぁぁ!!!」
瞳をきつく閉じ、目の前に立っていた小さな身体に白銀の剣を突き立てる。気味の悪い感触と音に全身が小刻みに震える。
「ぐっ……、貴様、ゴブッ…、悪魔、相手に、無駄な、コト、を……」
耳元でそう呟くと、自分を貫いているであろう刃を掴み、信じられない力で押し返してきた。
「……ジン、…かグ、や、ハ、サビ…し、ガりダ…カら、ヒとり、ボッ…ち二、すルナ……よ」
「――ッ! ヤマト、にいちゃん……」
「か、グやヲ、たの、ム、な」
「わかった! わかったから!! 剣を抜いてよ!?」
いつの間にか、再び深々と突き立てられている。
「グっ…、小癪な!!」
再び強く押し返され、共に仰向けに倒れこむ。
「――ッ! ジン!! はやく、かぐやを殺したくないっ!!」
「ッ!! ヤマトにいちゃんから、出て行けぇぇ!!」
剣を引き抜き、突き立てる。何度も何度も。
もう、ヤマトにいちゃんが動くことは無かった。全身は、彼の血でずぶ濡れになっている。一呼吸遅れ、全身が凍え始めた。
「……ヤマトにいちゃん、なんで」
部屋の角で、頭を抱えて無言の涙とともに震えている少女。ゆっくりと彼女に近付き、そっと抱きしめて、まだ震えている声で呟いた。
「……ごめんなさい。本当に、ごめん。ヤマトにいちゃんが、ヤマトにいちゃんがッ……」
「……ないで」
「……え?」
「チ、チカヅカナイデ、コナイデ、コロサ…ナイデ、ヒトゴロシ」
頭にのぼっていた血が引いていくのがわかった。
「ッ!!…は、はぁ…はぁ……!!」
後ずさると、手が冷たくなった何かにぶつかった。
「ぼ、ぼくが……殺したッ……!?」
吐きそうになって顔をそむけると、血塗れの壁紙と床板。無造作に転がった三人の身体と……。
「ウッ、あ…、うあああぁぁぁぁ!!!」
僕は、その場から逃げ出していた。
家族全員を失い、そのうちの一人、しかも大好きだった兄を、いつも一緒にいた僕が目の前で殺した。そんな地獄のような部屋にたった一人置き去りにしてしまったんだ。
ヤマトにいちゃんとの、最後の約束も果たさずに……。
ご覧いただきありがとうございます。
今後ともご贔屓に。
木ノ添 空青




