相棒
「ほら、ぼーっとしてないで、武器は装備したの?」
「え、あ……」
「学校着いたぞ、亜夜歌。短剣、すぐ抜けるようにしとかないと先生にボコされちまうぞ」
歩いているうちに学校へ着いていたらしい。
先生にボコボコにされる、というのは我が校の伝統だそうで、デュエル訓練の日には抜き打ちテストが行われるのだ。といっても全員に行われるわけではなく、ランダムに選ばれた人だけ。学校の敷地内で先生に襲われる、という結構恐ろしいものだ。ここで自分の武器を装備しておかないと、先生に一方的にやられてしまう。生徒たちはそれを恐れて、銃刀法違反にはならない敷地内では常に剣を抜く準備をしておくのだ。
奈留也は肩に背負っていた黒いケースを開け、中のものを取り出す。それは、ロシア製の狙撃銃で、奈留也のメインアーム。しかし先生の奇襲には狙撃は役に立たないので、今は肩にかけ、右腰にコンバットナイフを装備。これは国の許可を受けた店でなら契約という形で手に入る護身用のもので、誰でも使えるように軽くなっている。正当防衛以外で使った、などの契約違反は刑罰を受けることもあるため注意が必要である。
亜夜歌は、スカートにつけたベルトの左右に剣の鞘をセット。そこに二本の短剣を入れ、いつでも抜けるように準備。柄も刃も合わせてシャープペンシルほどの長さのこの短剣が、彼女のメインアーム。学校の敷地内にある生徒専用武器屋で作ってもらったオーダーメイドで、刃の先には細かい穴が空いていて、毒を入れて毒剣にもできる優れもの。そこそこ高かった値段は、オーナーとのデュエルに勝ったことで少し安くしてもらった。入学直後に買ったばかりでまだ活躍の場がなく、これで戦うのが楽しみである。
このりの武器は、とても大きな剣。先が尖った、長くて太めの剣で、左腰から背中の後ろを通して装備することで鞘から抜いた時の反動を利用し、剣の重さを感じさせない力強い戦い方を可能とする。実は鞘も盾のように強い素材で作られていて、背中からの奇襲にも対応。たまに背中から鞘を外して、片手に剣、片手に鞘で戦うこともあるらしい。剣術科の亜夜歌から見たら羨ましい限りの完璧な武器なのだが、唯一弱点があるとすれば、奈留也のナイフの30倍という値段だ。このりのように古くから貿易商でロボットの介入なしに稼いでいるお金持ち過保護な親が買ってくれるならば問題ないのだが。