13.突撃!となりの王宮玉座
炎竜帝を攻略して100階層から戻った俺を迎えたのは、歓喜の声ではなく、畏怖の静寂だった。
そりゃそうだわな。
長年行き詰まっていた80階層の攻略を半日で終わらせ、以降、あっさりと100階層まで攻略したとなれば、嫌でも俺の異常さがわかるってもんだ。
出会い頭に、【畏怖の波動】の洗礼を受けた奴らなんか、余計だろう。
1階層からの階段を上がって来るのが伝令の二人だけではなく、俺も居ると知った途端に、ざわめいていたギルドホールが水を打ったように静かになったのは、いっそ見事だった。
【畏怖の波動】は最弱仕様なので、精神が下級で低位階の者なら耐えられない筈だが、そんな素振りを見せる者が一人もいないあたり、冒険者をやってる奴らってのは、けっこう胆が据わってるんだろうな。
魔物と対峙する冒険者ならば、下位卑属であっても、精神のレベルは中級に上がりやすい。by【魔眼】
あ、やっぱり?
このまま、留守番をさせてるエンヤのもとに戻ろうかとも思ったが、俺が消えた途端、ゲオルグ達に降り掛かる騒動を考え、少し付き合うことにする。
代わりに、【異界】の中に右手だけを入れてやると、ベッドの上で心待ちにしていただろうエンヤが、掌に飛び乗ってきた。そのまま一目散に首元へ這いよると、俺の頬にスリスリしながら鳴きついた。
「ピャッ、ピョッ、ピッ、ピィ、ピュイッ」
俺と出会ってから、一度も離れたことがなかったので、凄い勢いで甘えてくる。
ちょっ、どおしよっ、泣きそう…。
「お留守番で寂しかったね。ごめんね」
「ピュッ、ピッ」
たくさん撫でてやると、安心したのか、ご機嫌になって尾を振り始めた。
やばい、萌え死にしそうだ。
あっ、テオの顔が崩れて、肩が震えていやがる。あいつもキュン死したな。
「お帰りなさいませ、殿下」
「ああ、キュッケン。今朝から変わったことはあるか?」
「迷宮解放後、トップクランの攻略メンバー全員が80階層を目指して入りましたが、他は様子見で、ここに残っております」
オスカーの言っていた留守居のキュッケンは、壮年の、いかにも軍人といった感じの男だった。
「80階層から戻った者はいるか?」
「いえ、さすがにそれは。出発は昼を過ぎておりましたので、最速でも、戻るのは明後日の朝かと」
「…ああ、そうだな、そのくらいは掛かるか」
ゲオルグが苦笑したのは、俺達の攻略スピードで考えてしまっていたからだろう。
71階層から80階層までの攻略ルートが確立されていたとしても、無戦闘で階層を抜けられる筈がない。戦闘に掛かる時間、休息に必要な時間、その他もろもろ考えると、それが妥当な日数なのだろう。
「では、我らは先に転移魔法陣で城に戻る。急ぎ準備をせよ」
「はっ、かしこまりました」
胸に手を当てて拝礼したキュッケンが、小走りにギルドを出ていった。
「本部まで、いっしょに行く」
「すまんな」
「いいよ」
ゲオルグと並んで、ギルドの出口を目指す俺達を、ホール内の全員が注視しているが、さすがに話しかけようとするものは、……いたよ。両側から動きを阻止されてなお、こちらに近づこうとしている少年が。
敢えて足を止めて、そちらに顔を向ける。
俺を睨みつけているのは、小柄で線の細い、…少年だよな?
名前:ヒルデ・ネッツァー
年齢:24歳
性別:女性
種族:ヒューマン
属名:下位卑属
属性:無属性
職務:冒険者
所属:冒険者クラン『炎熱迷宮の探索者』
出自:ケゼルバルト国アヒム・ネッツァー第十二子
固有スキル:生活魔法(Lv10)
獲得スキル:棒術、鑑定(魔具)
思わず二度視。しかし、変わらず。やはり、女性…。
いや、どう見たって、小柄な少年にしか見えないんだけど。
冒険者になる女性というのは、どの種族であろうと、ハズレ者扱いである。故に髪は短く切り、化粧はせず、服も冒険者向けの女性服はない為、男装になる。by【魔眼】
はい、残念なお知らせ第二段。
この世界に、色っぽい冒険者のおねーさんはいませんでした。
「何か用?」
「あ、あんたが、80階層と90階層のエリアボスを倒したっていうのかっ」
「そうだよ。ついでにさっき、100階層のボスも倒してきたけど?」
「――っ、そ、そんなっ」
え~、何で、この世の終わりみたいな顔になるかな~。
「100階層もかよ…」
「うわ、きっついなぁ、トップクランのメンツまる潰れじゃねぇか」
「なあ、あいつ、あれだろ?ブルーノの妹」
「ああ…、炎竜に兄貴を殺された復讐者か」
「そうそう。自分じゃどう逆立ちしたって、直接倒せはしないから、公算の高そうなクランのサポートメンバーになったっていう酔狂な女な」
俺の一言を切っ掛けにして、ホール内が徐々に喧噪にまみれていく。
「アルダナーリ」
少し焦った感じの声で呼ばれ、俺は、女から視線を戻した。
「ピギャッ」
途端、エンヤが抗議の声を上げる程の力で引き寄せられ、気づいたらゲオルグに縦抱きにされていた。
「ええ~っ、なにこれ~」
「文句は聞かん、いくぞ」
周りを近衛の四人にガードされながら、ギルドホールを突っ切る。
「ちくしょうっ、なんであんな奴にっ」
後ろから聞こえてきた怨嗟の声は、残念ながら、俺の胸に少しも響きはしなかったが。
ギルドの側にある守備隊の本部に連れ込まれた俺は、違う意味で好奇の視線に晒されながら、貴賓室らしき部屋へと辿り着いて、漸くゲオルグの腕から下ろされた。
「いくら俺でも、あの程度で酷い事はしない、…と思うよ?」
「ピィッ」
俺の逡巡と、エンヤの憤慨に、ゲオルグは困ったような目をするだけで何も言わず、俺の頭をくしゃっと撫でた。
「ゲオルグ?」
首を傾げて問うてみるが、答えはない。
「転移魔法陣の用意が出来るまで、菓子でも食べるか」
「すぐにご用意致します」
「アルダナーリ様、こちらのお席にどうぞ。ここには王宮のパティシエ自慢のレシピで作られた菓子が用意されているのですよ。ぜひご賞味ください」
「お茶は、アリダナーリ様のお好きな着香茶を淹れましょう」
思いっきりはぐらかされて憮然となるが、手際の良過ぎるシュテファンとテオに絆されて、気がついたら目の前の菓子に手を出していた。
「うわっ、すっごい美味しい」
「そうでしょう?これで一月は日持ちするという奇跡の焼き菓子なんですよ」
食感はフィナンシェに近い柔らかさだが、味は濃厚な果実の甘味の中に、混ぜられた何かのピールから感じるわずかな酸味が絶妙なバランスを取っている菓子だった。
「ピヨッ、ピッ」
エンヤの方も、好物のルビーロイヤルを出され、ご機嫌になっている。
うん、こりゃもう、俺たち『チョロインズ』だな。まあ、別にいいけどね。
「王宮のパティシエかぁ、他にも凄いレパートリーがありそう」
「そうですね、季節毎のレシピを考案していると聞いておりますよ」
「アイスクリームは?」
「はい。食後のデザートとして、男性にも人気がございますから、王宮にも城にも様々な種類が用意されていますね」
冷蔵、冷凍は魔道具で可能だが、一番小型のものでも50万はするので、庶民には普及していない。だから、外食産業が盛況なんだろう。その所為もあって、街中では専門店が流行っていた。
ただ、東門近くの店は、安さを優先してか素朴な味が好まれるのか、シャーベットに近いものばかりだったので買う気にはならなかったが、王宮ならば素材を贅沢に使ったアイスクリームがある筈だと思い、問うてみれば、期待通りの返答が返ってきた。
「お好きですか?」
「もちろん」
「殿下は、ドライフルーツをお酒に漬け込んだものをバニラアイスと混ぜて食されるのが、お好きなのです。ですから、城の方にも、たくさんの種類を常備しておりますよ」
所謂ラムレーズンアイスみたいなものだな。
期待を込めた目でゲオルグを見遣ると、ふわっと笑われた。
「いつでも用意してやるから…」
その後の台詞は、大きなノックの音に遮られる。
「入れ」
「失礼致します。殿下、転移魔法陣の準備が整いました」
「そうか、すぐに向かう」
「はっ」
顔を出したキュッケンに返事を返し、ゲオルグが俺を見た。
「いつ来る?」
「明日の2時に玉座の間へ直接」
「…そうか」
今は、既に5時を過ぎてるが、王に猶予を与えては、ろくな事を考えなさそうなので、さっさと突撃するに限る。
「椅子を用意しておくから、そこに座るといい」
「りょーかいっ」
謁見時に椅子が置かれるなんて、前代未聞だろうが、それだけの相手なんだと周囲に知らしめるには、いい手段になるな。
俺は、椅子に腰掛けたまま手を振って別れを告げ、【異界】に戻った。
さて、そこからは【異界】のカウチソファに寝転んで、寛ぎながら視ていたが、城に戻ったゲオルグから直接告げられた俺の訪問予告に対する王の狼狽振りは相当なものだった。
しかも最初に、この状況も俺に視られていると忠告されての事だったので、何を言うわけにもいかず、青褪めたまま、ゲオルグの上申に頷くしかないようだった。
翌朝に緊急招集された御前会議も、同じようにゲオルグの忠告から入った上に時間もない為、誰も何も言う事が出来ず、粛々と謁見の準備が進められていく事となった。
絢爛豪華という言葉が相応しい王宮の玉座の間は、両サイドが中庭に面したガラス張りになっており、謁見のみならず、園遊会や夜会などに広く活用されているらしい。
その、一段上がったひな壇に置かれた玉座の対面の位置に、これまた無駄に豪華な装飾のついた肘掛椅子が一脚用意された。これは、同じ都市国家連合の国王が訪問してきた時に使うもので、本来は玉座に並んで置かれるもののようだ。
この情報は、準備していた者たちの会話から拾ったんだが、それを踏まえて視れば、入場してきた家臣達の反応の仰々しさも理解できるという感じか。
この謁見の場に立ち会うことを許されたのは、王位継承権持ちの王族と公爵家の当主に、宰相を含む五人の重臣と政務部の局長クラス、軍部からは将官クラスの幹部達だった。
帯剣しているのは、王族の近衛だけで、それぞれ自身の主君の後ろに控える形になっている。
まあ、俺相手に武装なんかしても、何の役にも立たないのは自明の理なので、これまでの慣習に則っただけのようだ。
シュテファン達が、同じ近衛の立場にある者達に、主を守りたければ、決して俺に歯向かうなと念を押していたしな。それどころか、いざとなったら主の口を塞げなどと、不穏当な発言までしていた。
ひな壇を正面に見て右側には王位継承権者と公爵に将官――いざとなったらその身を盾にする気だろう――が並び、左側には宰相以下の文官が序列順に並び終え、最期に、登場を告げられた王が、近衛を伴って、ひな壇奥の扉から玉座に現れた。
一斉に拝礼した者達に頷いてみせ着座すると、俺の予告した時間になるのを待ち構える。
皆が固唾をのんで待つ中、俺は時間ぴったりに、玉座と椅子の間に、迷宮でのドロップ品を一斉に出現させた。
床から湧き上がるように現れたそれらに、野太いどよめきが起こる。
いやさ、この場、男しかいないのよ。
着飾ったご婦人もいるのかと思っていたが、王妃すらいねぇという、実にむさ苦しい空間になっていた。
「さて、無駄な口上はいらないから、早速交渉に入ろうか」
「なっ!いつの間に!?」
「どこから来たっ!?」
「転移の前兆はなかったぞ!」
突然、椅子に座った状態で話し掛けた俺に、御前会議に出席しなかった者達から声が上がる。
今日の俺は、玉座の間という事も鑑みて、かなりドレスアップしていた。デザイン的にはゴシックロリータに近い黒ベースのミニドレスに、黒レースのレギンスとヒールブーツで、いかにもな雰囲気を演出している。
もちろん、首回りには、可愛らしいエンヤが、おとなしく纏わりついていた。
「…人形?」
言われると思ったぜ。というか、狙ってたがな。
「アルダナーリ、この迷宮のドロップ品と引き換えに、望みがあるということだったな?」
王族の列に並んでいたゲオルグが、一歩前に踏み出して来た。
途端、今度は違う意味のどよめきが起きる。
ゲオルグがこの場を仕切る事の意外さに驚いているようだ。
多分、本来は左側のトップにいる宰相が仕切るのが定石なんじゃないだろうか。
「うん、ふたつね」
けどまあ、俺にそんなものは関係ない。
俺の望みがふたつあると知って、少し目を見張ったゲオルグに微笑み、王に視線を移す。
名前:エアハルト・ホルガー・オーバルト
年齢:60歳
性別:男性
種族:ヒューマン
属名:上位卑属
属性:無属性
職務:オーバルト国国王
身分:オーバルト朝第二十四代国王
出自:オーバルト朝第二十三代国王マルクス・シュテファン・オーバルト第四子
固有スキル:生活魔法(Lv7)
獲得スキル:剣術、馬術、毒耐性、舞踏、聴覚強化、拡声、回復魔法(Lv10)
ゲオルグとは違い、金茶の髪に瞳の色は灰色。それなりに鍛えた身体つきをしているが、どうしてもゲオルグと比べて見劣りがする。だが、王としての威厳はある男だな。
「ここにある迷宮のドロップ品の対価、あんたになら簡単に出せるものだよ」
ざわっと不穏な空気が漂うが、事前の徹底が効いているのか、面と向かって声を上げるものはいなかった。
きっと、王に対する不遜な態度に不快感を感じているのだろうが、それ以上に、俺の異様さが彼らの口を閉ざしているんだろう。
ちょっと頭の回転の良い奴なら俺のヤバさはわかるだろうし、【畏怖の波動】を感じても普通に立っていられるのだから、ここに呼ばれたのは優秀な人材ばかりだと思われるしな。
「アルダナーリとやら、それは…」
「アルダナーリ・イーシュヴァラだ、王よ」
「うっ…」
不機嫌な声で、【畏怖の波動】のレベルを少し上げると、途端に王の身体が震えだす。
横に並ぶ者も、軍人はまだ耐えているが、それ以外の者達は真っ青になり、今にも倒れそうだ。
ただし、ゲオルグとシュテファン達には、【闇の棺】を掛けるという依怙贔屓は、絶賛発動中だけどな。
「…アルダナーリ・イーシュヴァラよ」
「シャアアアアアッ」
今度は、エンヤが激しく威嚇した。
「…アルダナーリ・イーシュヴァラ殿」
「なに?」
【畏怖の波動】を弱めることで、その対応が正解だと暗に伝えてやると、王の身体から力が抜ける。
「余になら叶えられるという、貴殿の願いとはなんであろうか?」
「ひとつ、王宮内への出入りを許可すること」
「なっ!」
「ふたつ、この国が俺の身分を保証すること」
「はっ!?」
驚きの余り立ち上がってしまったらしい王は、そのまま固まって動かなくなった。
ただ、視線だけは、あちこちに動き回っているので、頭の中は大変なことになっているんだろう。
まあ、早いとこ俺との縁を切りたいんだろう王としては、一番避けたい事柄を要求されているんだから、しょうがない。
俺は、返答を急かす事はせず、椅子の上で優雅にふんぞり返った。
周りの者達も、俺に聞かれる事を憚って何も言えずにいるが、漂う気配が迷惑千万だと伝えてくる。
しばらくの間、外向きは静寂、内向きは怒号の嵐が飛び交っていたであろう場に一石を投じたのは、やはり俺の事をわかってるゲオルグだった。
「アルダナーリ、そのふたつを望む訳を教えてくれるか?」
「うん。ひとつ目は、これからもゲオルグのとこには気安く遊びに来たいからだね」
途端、場の空気が変な風に変わったが、知らん。
「ふたつ目は、他の国に行く時に、顔を隠してても通用する身分証が欲しいから」
次には、周り中から妙に脱力した雰囲気が漂ってきた。
「簡単でしょ?」
「そうだな」
俺に応えて、ゲオルグが王へ視線を移す。
「陛下、ここに並ぶドロップ品の対価としては、破格かと存じますが?」
破格も破格、安く見積もっても10億は超えてるからな。
王も、その辺を素早く算段したのか、ふむ、と頷いて、腰掛け直す。
「確かに、この品々の対価としては破格であろう。貴殿への対価は、本当にその程度で良いのであろうか?」
破格過ぎて、裏読み中かな?
「逆に怖い?なら、本音を言おうか?」
「…出来うるなら」
「俺の持つスキル、異界、魔眼、超再生は、俺から生きる為の努力を放棄させる」
「放棄…?」
「異界は、無限に広がる俺だけの領域だ。そこには、俺と俺の従魔だけが存在でき、俺の意思で一部の空間のみを時間停止にする事もできる」
誰も聞かないので知らなかったが、俺の【異界】は、スキル大全に載っている【異界】とは違ってるらしい。そっちの【異界】は時空魔法系のユニークスキルで、時間停止機能のついた大容量の収納空間というだけだった。
これで、頭の回転が速い奴は、俺がただの転移を行っていたのではないと、気づいただろう。
「魔眼は、この場に居るだけで、あらゆるものを同時に視ることができ、あらゆる事柄を知る」
知覚範囲に限りがあることは内緒だ。
「超再生は、傷を受けたと感じる前に元に戻す。生命維持の為に食事を摂る必要もなく、空腹を感じることもない」
呆然となる王の顔から、俺の人外度合いを低く見積もっていたんだな、と推察した。
「だから、今の俺には、金銭よりも娯楽を得る手段の方が重要なんだよ」
「…娯楽」
「そう、娯楽。日々生きる為の努力をしている者には悪いけど、その必要がない俺は、この世界を視るだけじゃなく、実際に感じて楽しみたい。異界での生活を潤す為の道具も欲しい。その為に、毎度この国で起こした様な騒動を繰り返すのはごめんだ。だから、確固たる後ろ盾のある身分証が欲しいんだよ」
「ああ、だから、顔を隠しても通用する、なのであろうか?」
「その通り」
そこかしこから、ほう、という納得したような呟きが聞こえる。
「となれば、それなりの身分となるが…」
ちらっと視線が宰相の方へ流れる。
「…顔を隠す事が許されるのは、身分の高い未婚の女性のみになりますが」
へっ?男はダメなの?
顔を隠すというのは、それだけで後ろめたいことがある証拠と認知されている。ただし、身分の高い未婚の女性に限り、婚姻前のトラブルを避ける意味で、顔を隠すことが許されている。by【魔眼】
はあっ!?おまえ~っ、前は、そんなこと言ってなかったじゃねぇか!何?俺、恥さらし?
アンノウンの性別は両性であり、男性ではない。by【魔眼】
あっ、忘れてたわ。そうだ、俺、今は両性で、男でもあり女でもあるんだった。なら、女でも通せるか。
などと、内心で漫才を繰り広げつつ、落としどころを見つけ掛けた俺に、ゲオルグの爆弾発言が飛んで来た。
「では、アルダナーリ。私の娘になれば良い」
「へっ?」
「ピッ?」
「なっ!」
「殿下っ!?」
「ゲオルグッ、何を言っておるっ!」
場を騒然とさせたゲオルグは、どこ吹く風で、更に言い募る。
「私には、生涯、子はおらぬものと思うていたが、おまえのような愛らしい娘が出来るのであれば、望外の喜びとなろう。どうだ、嫌か?」
「…嫌じゃない」
ここまで、言われて断る筈もない。第一、ひとつ目の望みは、ゲオルグとの縁を切らない為のものだったんだからな。
余談だが、俺を『娘』にと言ったゲオルグに、王を始めとした全員――シュテファン達は除く――が、ゲテモノ好きを見るような目を向けたので、ちょっと威圧したら、皆、口々に言祝ぎ始めて、呆れた。




