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氏親の謀略1

永正2(1505)年。


今川氏親(以下氏親):「これはこれは牧野殿。よくぞ参られました。」

牧野古白(以下古白):「今川様。此度は如何様な御用件でありましょうか。」

氏親:「先年。早雲が岩津へ出陣した際、牧野殿の協力により所期の目的を達成することが出来たことの御礼を申し上げたくご足労願ったわけなのでありまして。」

古白:「これはこれは有難きお言葉。」

氏親:「今後も御助力願いたく思っております。そこで今回。牧野殿に一つお願いしたいことがございまして……。」

古白:「どのような事柄なのでありましょうか?」

氏親:「早雲からの報告によると、岡崎の松平は一筋縄にはいかない手強い相手であると……。」

古白:「私もそのように感じております。」

氏親:「その松平を制することが出来ないと牧野殿の本貫地を安泰なものとすることは難しい。」

古白:「松平は我が領地と隣り合わせの地でありますからな。」

氏親:「そこで牧野殿にお願いなのでありますが。」

古白:「なんでありましょうか?」

氏親:「憎き松平を討つべく牧野殿と松平との境を為す長沢の地を。我が今川が駐留することが出来るようお貸し頂きたいと考えております。」

古白:「!?長沢の地にございますか……。」


(宗長:「宝飯郡の最西端に位置する長沢は東三河と西三河を分ける要衝の地。この場所を今川に明け渡すと言うことはつまり、今後古白が西へ領地を拡大することを事実上。放棄する。東側は既に今川の影響下にあることを考えますとこれ以上の発展を望むことは出来なくなることを意味します。当然、そのような要請に応じることは出来ない古白は……。」)


古白:「長沢の地は松平と直に接しているばかりか、今川様の駿河遠江から最も遠方の地であります故。松平に急襲された時、矢面に立たされる危険性がございます。私としましては(唯一の危険地帯であります)西側を今川様に守って頂けることは大変有難いことなのでありますが。今の情勢で長沢を拠点とすることは避けたほうがよろしいかと……。」

氏親:「現地に精通しているそなたが申すことを無下に扱うことは出来ぬな……。とは言え今後も続くことになる松平との戦いに際し、一時的なこととは言え。我が軍が到着するまでの間。牧野殿が単独で守らなければならないことは避けなければならない。常に我が今川の部隊が東三河の地に居ることによって、松平の動きを牽制したい。そのための場所は無いものか……。」

古白:「それでありましたら私が先年統治することになりました馬見塚の岡は如何でしょうか?」


(宗牧:「馬見塚の岡は律令制時代。渥美郡の郡衙が置かれていた場所。」)


古白:「かの地の北には大河・豊川が流れ。」


(宗長:「豊川はもともと豊川・牛久保・小坂井と続く段丘の下を南西に向かって流れていたのでありましたが、その後、流れを変え、この時代にはちょうど馬見塚の岡の北を流れていた。」


古白:「その豊川によって(北西方向から進行することになる)松平からの攻撃を防ぐことが出来るばかりか、(豊川の北は牧野古白影響下の宝飯郡)我が牧野が先鋒となって松平の進撃を防いでみせます。」

氏親:「牧野殿が背水となってしまうのであるが……。」

古白:「宝飯郡は我が本貫地。そこを守れずして、今川様の力となることは出来ませぬ。お任せくださいませ。」

氏親:「相分かった。そなたの申す通り、馬見塚の岡に城を築くと致そう。その城は、元々そなたの領地である故。管理も牧野殿にお任せ致します。」

古白:「有難きお言葉。早速、取り掛かります。」


(宗長:「……と氏親は、馬見塚の岡に城を築かせるべく、そこに根を下ろす渡辺平内次に対し馬見塚からの退去と、その代替地(三相)を与え、馬見塚に暮らす百姓も豊川下流域へと移転。これによって生まれたのが今の馬見塚であり、古白が築いた元の馬見塚は今橋と称されるようになりました。」


(宗牧:「……古白が帰った後。」)


早雲:「牧野は殿のことを警戒しておりますな。」

氏親:「叔父上もそのように感じられてましたか。」

早雲:「自らが切り開いた領地を好き勝手使われるのはどこも面白くありませぬし。」

氏親:「我が今川が松平をも押さえてしまうと。」

早雲:「これ以上の発展も望めなくなる。」

氏親:「それ故。西三河と境を為す長沢に。」

早雲:「我が軍が駐留させるわけには参らぬ。」

氏親:「そしていつ我らが敵になるともわからぬ故。」

早雲:「宝飯郡の対岸の馬見塚に封じ込めてしまおう。」

氏親:「如何致そうか?」

早雲:「とりあえず造らせてみましょう。そこで殿に申し上げた通りの行動。松平の抑えとして粉骨砕身取り組まれるのであれば。」

氏親:「今後も東三河の重鎮としての役目をお願いし。そうでなければ……。」

早雲:「(遠江でやって来たことと同様)踏み潰すまで。」


氏親・古白双方の思惑が交錯する中、馬見塚の岡に新たな城が築かれることになるのでありました。

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