初めての苦戦 前編
初めての本格的なバトル回です
ゴブリンアビスは周囲を警戒すると周りには誰の気配も見当たらず再びゴブリンアビスはイチノを探して辺りをさまよっていた
「大丈夫か ? イチノ」
「ふぇ ?」
リュウセイは「疾走lv1」と「気配削除lv1」でイチノをさらうと近くにあった岩の陰に隠れている
「な、なんでお前がここにいるっ !?」
イチノは嬉しさ半分でそう言う、今のイチノの目にはリュウセイが白馬に乗った王子様に見えているのかもしれない
「なんでって……クエストを受けたから ?」
リュウセイは不思議そうにしているとまだ近くで彷徨っていたゴブリンアビスがこちらに気づき向かってくる
「まずい ! 気づかれた、イチノ逃げるぞ !」
リュウセイはイチノの手を引っ張り「疾走lv1」で距離を離そうとするがゴブリンアビスに先回りされた
こんな状況にも関わらずイチノはまだうっとりしている、かわいいが状況と場所を選んでほしいと思うリュウセイ
「クソ……なんでだ、『愛眼』 !」
思わず弱音を吐いてしまったリュウセイはすぐに「愛眼」を発動しゴブリンアビスのステータスを見ると驚きを隠しきれない
名前:ゴブリンアビス
レベル:15
体力:800
物理的攻撃力:2000
物理的防御力:1400
特殊攻撃力:100
特殊防御力:50
魔能力:毒分泌、???
スキル:物理的攻撃力強化lv3、鉄壁、剣術lv1、疾走lv2、咆哮lv1
好感度:0
リュウセイは空いた口が塞がらないほどに驚くが武器を構え、攻撃体制に入る
「……イチノ、下がっててくれコイツ相当強い」
「私も戦うぞ ! これ以上借りを作るのも嫌だからな」
リュウセイはあたかもイチノがそう答えることを分かっていたかのように口元を緩める
「フヒッ、そうか、ありがとう」
リュウセイは念のためイチノのステータスを「愛眼」で確認して見ると、後悔することになる
「まじか」
名前:イチノ・ルーン
レベル:21
ランク:D
体力:200
物理的攻撃:600
物理的防御力:120
特殊攻撃力:400
特殊防御力:120
固有能力:集中
スキル:剣術lv3、体術lv2
適正職:剣士、ナイト、暗殺者
好感度:50
ほとんどのステータスが自分よりか高くて特に物理的攻撃力なんかはレベル20代にしたらトップクラスだ
何よりも驚いていたのはイチノが自分のことを少しでも好いてくれているという事実に困惑していた
「いくぞ ! 私を攻撃しようとしたこと後悔させてやろう」
イチノも小太刀くらいの長さのナイフを構えると試合開始のゴングが鳴ったかのようにゴブリンアビスがイチノめがけて襲いかかる
「うがあああああああああああ !」
ゴブリンアビスは「咆哮lv1」を使うと今まで聞いたこともないくらい大きな音にイチノとリュウセイは少し怯み隙ができてしまう
そんな隙をゴブリンアビスが見逃してくれるはずもなかった2人に大きな剣を振りかざすが、とっさの回避で攻撃をかわす
「間一髪だったな……大丈夫かい ? イチノ」
「ん、あぁ、少しかすっただけだから大丈夫だ……」
イチノは攻撃を受けた方の腕を庇いながらもゴブリンアビスへの攻撃を止めようとしなかった
ゴブリンアビスの咆哮で呼ばれたのかはわからないがゴブリンが大量に現れる
「イチノ、このゴブリン達は僕が相手をする、ゴブリンアビスの足止めを頼む」
「わかったわ……けどこういうのって普通あんたがやることじゃないの ?」
イチノの言うことは正しい
普通は主人公がボス的存在を倒し仲間がボスの取り巻きを倒す、これが一般的だがリュウセイとてまだ何もわからない奴の相手なんかしたくはない
「うっ」
まさにその言葉はリュウセイの急所を突いた、致命傷だ
(いや、まぁね、イチノは僕よりか強いから大丈夫じゃね ?)
リュウセイは無数のゴブリンを一瞬で葬る
「まぁ、こんなところか」
すると力が湧いてくる感覚がした、あの時と同じ感覚
自分のステータスプレートを確認するとニヤリとし袋にしまう
リュウセイは急いで嫌々ながらもイチノの応戦をしようと向かった
「イチノ、大丈夫か ?」
「あぁ、なんとか」
見るからに大丈夫ではない、服も体もボロボロだ、そして武器にもヒビが入っている、それでもイチノの目は諦めてはいなかった
「これでどうだあああ !」
その時「パキン」と何かが折れたような音がして振り向くとイチノのナイフはゴブリンアビスに傷一つつけることができずに折られていた
「なんで……」
イチノの顔は絶望でいっぱいになってしまい動けなくなってしまう
「うがあああああああああ !」
「イチノ ! 攻撃が来る、避けて !」
イチノは聞こえてはいたが動くことはできなかった
「クソッ……」
ゴブリンアビスが剣を振りかざすとイチノに届くことは無かった
「あんた……」
イチノがやっと気が正気に戻ったかと思うと目の前の光景に絶望した
リュウセイがイチノを庇った時に受けた腕の傷を庇いながらゴブリンアビスと戦っている、いや守っているからだ
「はぁぁぁぁぁっ !」
リュウセイは「気配削除lv1」と「疾走lv1」を上手く使いゴブリンアビスの背後を取る
「これでどうだ」
一番防御の薄い肩の関節部分を狙うが大したダメージになっていない
「これでもダメか」
ゴブリンアビスは魔能力「毒分泌」で自分の体をコーティングしていくそれはまるで毒で作られた鎧を纏っているようだ
より一層硬くなったゴブリンアビスの体にリュウセイの攻撃は通るはずもなく
イチノは再び絶望した
(もうダメよ、おしまいだ、勝てるはずがない、逃げるんだ)
「リュウセイ、もういい、にげ……るぞ ?」
逃亡を促すために一度リュウセイの方を見るとリュウセイは何か思いついたように笑っていた
リュウセイは再びゴブリンアビスの背後に回りもう一度腕をナイフで切りつけるとゴブリンアビスの腕は切れていた
その腕をよく見て見ると切れたというより溶かされた、その表現が適切であろう
リュウセイは拳に「分解」を纏った要領でナイフに分解を纏いゴブリンアビスに攻撃していたのだ
「フヒッ、どうだゴブリンアビス」
「うがああああああああああああああああああああああああああああああ !」
ゴブリンアビスはまるで興奮したのか怒ったのかわからないが「剣術lv1」と「疾走lv2」、「物理的攻撃力強化lv3」を使う
なおかつリュウセイがやったように「毒分泌」を剣に付属させて攻撃してきた
「マジかよ」
リュウセイもこれはやばいと思いながら攻撃をかわす
それから何度も何度も「分解」を使いながら切りつけるがゴブリンアビスは目立った傷もなく攻撃を続けている
「魔物には魔心といって心臓のようなものがあるの ! そこを突けばきっとゴブリンアビスだって死ぬはずよ !」
さっきまで空気のようだったイチノがとうとう口を開いた
「魔心ってどこにあるんだよ……」
「わからないけど心臓みたいなものだから心臓の場所じゃない ?」
「了解 !」
再び「疾走lv1」を使いながらゴブリンアビスの懐に潜り込むとナイフを心臓に差し込んだ
「もう死んでくれよ……」
しかしゴブリンアビスは死んでいない
「ごめんなさい ! 魔心は魔物によって場所が違うみたい……」
リュウセイは苦虫を噛み締めたような表情をするとゴブリンアビスの体のある場所に赤く光る場所が見えた
(まさかこんなにわかりやすいわけないよな……こんないかにも弱点です ! 突いてくださいと言わんばかりに……)
だめもとでゴブリンアビスの赤く光っている場所にナイフを差し込むとゴブリンアビス急に大人しくなった
「やったか…… ?」
「おい ! それフラグ !」
その時のリュウセイの目にはイチノが一級フラグ建設士に見えていた
「があああああああああああああ……」
すぐにフラグを回収するかのようにゴブリンアビスは動き出した
「やっぱりか、あぁ、クソなんで……」
リュウセイが再び弱音を吐くと第2ラウンド開始のゴングがなったような気がした
後編に続きます…
しつこいようですがブクマ、評価、感想などが…ほしい、その様子はまるで飢えた野獣
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修正済み