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緊急

事件を振り返っていた蓮見に、ある人物から電話がはいり……。

 補足をしていくのなら、春川の事件の直後、私は立浪さんの元へ訪ねる。当初はあの事件について協会を調べるのが目的だったが、あれは既に解決しているのでもういい。

 そこで立浪さんから協会を調べる権利の代償として、脅迫状の犯人を突き止めてほしいと依頼される。彼いわく「警察という国家権力が介入するのは協会にとってよくない」とのこと。私はそれを承諾し、本格的に事件に参入した。

 そして水島さん殺害の日の昼間も、私は彼と会っている。そこで協会について質問して、脅迫状を見せてもらった。

 そうだ、私はあの時にも何かを感じた。そして今もその正体がわかっていない。ただ「足りない、欠けている」と感じた。なにが足りなかったのか、欠けていたのか。

 守島さん殺害の時も、あそこに私はいて、彼女を含めた代行から脅迫状を見せてもらっていた。ファイルにはそのメッセージも載っている。


●守島さん宛のメッセージ

『代行を止めろ』『ひどい目にあうぞ』『許さない』『天罰がくだる』『あそこに近づくな』   

●桐山さん宛のメッセージ

『代行をおりろ。地獄にいくぞ』

●江崎さん宛のメッセージ

『過ちを犯すな』『やめろ』『協会をやめろ』『罪をつぐなえ』『地獄におちろ』

●大蔵さん宛のメッセージ

『協会から離れろ』『やめろ』『あそこに近づくな』『つぐなえ』『地獄におちろ』

●立浪さん宛のメッセージ

『協会から離れろ』『代行をやめろ』『あそこは危険だ』『つぐなえ』『協会は危険だ』


 そういえば、どういうわけか桐山さんには一通しか届いていなかったんだ。さて、それはどうしてだろう? 他の人達は全部五通届いていたのに。

 しかし、こうして改めて見返してみると、本当にこのメッセージに意味があるのかどうか分からなくなってくる。似たようなものばっかりだ。これをリスクを犯して残しているのだから、犯人は何を考えているんだよ?

 そしてこのメッセージに加え、事件現場に残された三通。あれが全てか。事件解決に絶対に必要なものだ。なにか、なにかあるはずだ。

 意味があるはずといえば、教祖だ。

 三日前、私と教祖が初めて対面したあの日、彼は別れ際に「この事件の犯人は俺だ」と宣言した。言葉の真偽はわからないが、彼がそう口にしたのは間違いない。あれも何か意味があることだったのか。それとも、でまかせか。でまかせなら、どうしてあんなことしたのかってことになる。


「……振り返ってみると、色々ある事件だね」

「そうだな。そのくせ今現在、犯人のしっぽも掴めない」

「いや父上、手がかりはあると思う。さっきから何か感じているだ。きっと、この資料から、ないしは私達が経験したことから大きなことがわかるはずだよ」

 私はそれを確信している。父は何も言わない。信じてくれているんだろうけど、確証がないものだから、はいそうですかと言うわけもいかないんだろう。なにせ父は本物の刑事、証拠がないと動けない。

「蓮見刑事」

 ストライプのはいったスーツを着た若い男性が、受付まで走ってきて父を呼んだ。父は立ち上がり、その刑事に寄って行くと、彼は父の耳元でなにか伝えた。こっちには何も聞こえない、ただ父の表情が見る見るうちに厳しくなっていく。

「なんだと。本当か」

 父が確認すると若い男が何度も頷く。それと私のスマホが震えだした。こんな時に誰だと、ちょっと苛立ちを覚えながらも液晶を見ると、『着信:胡桃沢さよ』と表示されていた。

 私はすぐに電話にでる。

「さよちゃん、申し訳ないけど今少し忙し――」

『せ、先輩っ、助けてっ!』

 通話をさっさと終わらせようとしたのに、電話口から切羽詰まった彼女の悲痛な声が聞こえてきた。息が荒く、はあはあという息遣いまでこっちに聞こえてくる。

「さ、さよちゃん? どうしたんだ? なにがあった?」

「レイ、大変だ。桐山が犯行を自供した」

「父上、ちょっと待って――え、自供?」

 父がこくりと頷く。頭が真っ白になるが、また電話口でさよちゃんが叫んだ。

『せ、先輩がっ、春川先輩がっ!』

「ちょ、ちょ、ちょっとまってくれ。さよちゃん、なにが起きているの?」

『春川先輩がっ! 大変なんですっ!』

「なにがどうしたんだよ? 落ち着いて話してくれっ、君は今どこにいるんだっ」

 父が電話をする私の様子を見て、ただ事じゃないことを悟ったのか「どうした?」と訊いてくる。私は首を左右に振って「わからない」と返答した。

「さよちゃんっ、聞こえるか?」

『先輩がっ、せ……先輩がぁっ』

「なんだよ春川がどうかしたのか。しっかりしてくれっ」

 今にも泣きだしそうな声で、何度も彼女は「先輩が」と繰り返した。

「春川がどうかしたのっ?」

『拐われたんですっ!』

 ようやく会話らしい会話が成立したが、彼女の返答は私の予想をはるかに超えたものだった。春川が、拐われた? え、誰に? 何のために? というか、なんで?

 頭が真っ白になってしまって、口が動かせなくなった。しかし電話口でもはまださよちゃんがなにか叫んでいる。そしてその声に混じって、もう一人の声が聞こえてきた。それは彩愛ちゃんの叫びだった。

『レイ姉っ! ハル姉がっ、ハル姉が殺されちゃうっ!』

これ6章おわり。

最終章へといきます。

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