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何人いる?  作者: 山奉行
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【ブックマーク1500記念】トリーゼンベルクの戦い

 ルテティア軍の到着を確認したヴィスワ軍は、トリーゼンベルクの包囲を解いて少し離れたところにある尾根に沿って構築しておいた陣地まで撤退した。


 くそ、やられた。あそこに陣取られると苦労するぞ。俺は軍議で毒づいた、こうなるとアリサカ銃の持ち出しを止めたアルベルトの判断は正しかったことになる。俺はかなり愚痴ったけど


「モブさんも判ってると思うけど、アリサカ銃の機構が他国に渡ったらそれだけで脅威になるんだ。アレは国外には出せない。何とかハルノハラ銃で対応してくれ。この銃だって他国から見たらオーバーテクノロジーの塊なんだぞ」


と言われた。まあ、アリサカ銃のコピーが出回ったら俺もアルベルトも胃痛で死ねるし、実際こうやって銃の性能差を埋めてくるからな。


 向うの指揮官は有能だ。銃の射程に差があっても、尾根の斜面に隠れるように兵を配置したら関係なくなる。銃は直射しか出来ないから見えない所には当てられないんだ。大砲もたっぷり配置してるしかなりの被害が予想できる。


 総攻撃を2回やったには兵士もあまり減ってないし、最初からこうなる事を予想してたな。ここで俺達が引いたら包囲を再開するし、時間をかければトリーゼンベルクの住民に不満が出る。力押ししたら被害が相当出るし、勝てないかもしれない。上手い事考えたものだ。


 おまけに、騎兵隊が後方を荒らしてるという情報まで入って来た。補給線を荒らされたらシュヴァイニッツ公国に糧秣を頼らなくてはいけなくなる。するとさらにトリーゼンベルクの住民に不満が出る。


 多少の損害覚悟で押し切らないといけないか。まさに向うの思う壺だな、たとえ負けても十分な損害を与えれば無敵の存在じゃないと自国の兵士に理解させられるし、銃の鹵獲が出来れば戦力の差が埋まる。


 結局、俺がやらないといけない事は、防御側に有利な土地で陣地に籠った敵を短期間で圧勝しなければいけないという事か。無茶言うな。


 とりあえず、アルベルトにも相談しよう。装備に関してはアイツが一番詳しいからな。


「てなわけで困ってるんだが、何か秘密兵器無いのか?」


「そりゃ勿論あるに決まってる。重擲弾筒と擲弾器~」


 未来から来た青い猫みたいな喋り方は止めろ。あと、お前が死んでから声優変わったらしいぞ。それは置いといて小型の迫撃砲とグレネードランチャーか。武器の言い方が旧日本軍なのは仕方ないとして、迫撃砲としてもずいぶん小さくないか?


「そりゃ、歩兵の支援用にしか考えてないからギリギリまで小型軽量化したんだよ。重擲弾筒の方でもせいぜい600メートル位しか飛ばないから気を付けろ。」


 とりあえず、砲兵小隊には渡してあって訓練もしてるのに、何で俺にだけ秘密なんだ?うん、その方が楽しいからか、なるほど死ね。


「ごめんなさいちょっとした悪戯です許してください」


 いきなりの土下座に度肝を抜かれつつ、話を元に戻すことにする…後でミレーユにチクっておこう。


 迫撃砲だから命中精度もお察しくださいだが、向うは密集してるから榴弾だし当たれば痛いな。こっちは散兵な上に向うに榴弾は無いから当たっても数人が死亡するか負傷するかで済む。これで恐らく五分だから後は前装式と後装式の連射力の差で押し切るか。


「あと、こっちが本当の秘密兵器だ…」


 なるほど、これは確かに秘密兵器だ。開発したばかりでこっちはまだ訓練すらしてないが、確かにこの状況では有効だ。




 翌日、ルテティア王国宰相にて将軍という事で、俺が全軍への訓示を行うことになった。モブさんに代わってくれと頼んだが断られた。こういったのは一番偉い人がやらないとダメだそうだ。ひどい。


「ルテティア人よ、ルテティア人よ。敵方であるヴィスワ人は我々を嗤う。何故か?我々が新型の武器を持って調子に乗ってる弱虫だと笑っているのだ」


 兵士がざわめく、つかみはOKだな。


「それは事実か?ルテティア人は俺が作った武器のせいで勝ってるだけなのか?いや、違う。ルテティア人の勝利は我々の力が、勇気が、優れているからの勝利だ。俺はそう信じている。ルテティア人よ、丘の上には我々を嗤うヴィスワ人が待ち構えている。丘の上を見ろ」


 ここで少し間を置く、おし、ちゃんと兵は丘の上に目がいってるな。


「何故奴らは丘の上に閉じこもっているのか?それは我々の事が怖いからだ。武器ではない、ルテティア人の力を、勇気を恐れているからだ。俺はこの戦いの勝利も疑ってない。我々の力と勇気を疑ってない。さあ、丘の上で震えているヴィスワ人にルテティア人というものを見せてやろう!」


 ここで俺とモブさんが一個師団づつ、東と西に分かれる。中央はマクシミリアン殿下にお願いして牽制だけお願いする事にする。散兵戦術の訓練をしてないと被害が大きくなるからで、決してシュヴァイニッツ公国軍の力を侮ってるわけではない。事前の打ち合わせ通りいけば、最後の止めに動いてもらう事になる。


 配置につくと、既に支援砲撃は始まっていた。だが、実はあまり期待していない。見たところしっかり防御用の陣を構築してきるので、野戦の撃ちあいみたいにはいかないだろう。


 二時間程の支援砲撃の後、合図の花火を打ち上げて前進を始める。予想通り向うの砲撃が始まって来た。向うの砲弾は、ボンバー○ンが使うような導火線付きのアレを打ち出す原始的な榴弾が半分と、鉄球を打ち出すのが半分くらい。だが、ここで今回用意した秘密兵器がうなる。


 師団に一人いる魔力の高い魔法使いに持たせた親魔法陣と、小隊長に持たせた子魔法陣の二種類だ。


 前にも説明したが、この世界は全ての物に魔力が存在している、もちろん空気にもだ。高速で物体を打ち出すと射出された物体が空気中の魔力を破壊していくので、魔力の流れを見る魔法陣があればかなり遠距離からでもある程度着弾点と着弾のタイミングを見る事が出来る。


 魔法使いが持つ親魔法陣はそれを察知して、危険な位置にある子魔法陣に情報を伝達する。子魔法陣の機能は親魔法陣までの魔力の抵抗を無くして親魔法陣からの警告を受信できるようにするだけ、つまり俺の指輪の魔法陣の応用である。問題点は小隊長の半分くらいは銃を撃つ魔力が足りなくなることだが、生存性を高めた方が総合的な戦力は高くなるから仕方ない。


 もちろん、大砲の弾が発射されてから着弾するまでは数秒しかないのだが、鉄球の弾なら直接当たらないと被害は無いし、榴弾でもそこまで範囲が広いわけじゃないから結構被害は減らせる。まあ、密集陣形を取ってたらこうはいかないけどね。


 砲撃とかの察知をする魔法陣自体は結構前からあったのだが、【乾杯】に刻まれた魔法陣の解析でこんな応用が出来た。これで、元が【乾杯】じゃなければ最高なんだが、どうしても忌まわしい記憶が蘇る。


 斜面の半ばくらいで、こちらの重擲弾筒の射程距離に入る。砲兵小隊はここで擲弾を撃ちまくってもらう。上手い事大砲の射撃が止んだ。砲を壊すことが出来たか、砲兵を避難させる事に成功したんだろう。今なら安全に斜面を上がる事が出来る。


 斜面を登りきると、柵と塹壕が待ち構えていた。それも怖いけど真に恐ろしいのはその後ろの大砲である。思ったより残ってたのがさらに恐ろしい。


「擲弾器で砲と砲兵を狙え、あの中には散弾が詰まってるぞ!」


 擲弾器、今で言う所のライフルグレネードの原始的な物である。詳しく説明すると長くなるので割愛するが、小銃に取り付けて手榴弾を100メートル位飛ばせるという、沢村栄治いらずの優れものである。もちろん肩を壊す心配もない。


 そこまで命中率は良くないが、集中して運用する事で大砲の列に穴が開いた。


「敵陣中央、大砲が壊れたところに集中して突撃!」


 軽装備の突撃隊に指示を出す。勿論塹壕に籠った敵に撃たれるが、どうせマスケットだから連発が効かない。一発か、せいぜい二発食らったら塹壕までたどり着く。そしてそのまま突っ切って塹壕の後ろまで抜けていってしまう。


 突撃隊の狙いは塹壕の後方に居る敵士官と砲兵だ。彼らを抑えれば効率的な反撃は出来なくなる。その後、残り全軍で塹壕を制圧する。いわゆる浸透戦術というやつだ。


 偉そうに語っているが、この辺の戦術を考えたのはモブさんである事は言うまでもない。だから全軍の指揮を任せるって言ってるのに、なんで俺にやらせようとするんだあの男は。


 それはさておいて、両翼の塹壕線を制圧したらそのまま前進してモブさんの師団と合流する。


「おうお疲れ様、大変だったか?」


「こっちは損害が戦死500の戦傷1500くらいかな?結構やられたよ。モブさんの方は?」


「大体俺も同じくらいだな、予想通りとはいえ損害が出るのは嫌なもんだ」


 そして合流した俺達は、そのままさらに前進して本陣に襲い掛かる。突撃部隊が敵士官を抑えておいたおかげで、本陣には両翼が壊滅したという情報がはいっておらず、前線の突破に比べてはるかに楽に本陣を潰走させる事ができた。毎回こうなら楽なんだけどなぁ。


 そして今度は取り残された中央の塹壕線に攻撃を仕掛けに行く。当たり前だが本陣が壊滅した後で戦意などあるはずもなく、尾根の正面―つまりシュヴァイニッツ公国の兵が居る方―に向かって敗走していき、次々と捕虜になっていく。散発的な抵抗はあるが、今回牽制しかしてなく疲れていないシュヴァイニッツ兵に叶う訳もなく、一日でトリーゼンベルクの戦いと後世言われる戦いは終わった。


「とりあえず、こっちのやる事は全部終わった。後はミレーユと義父上でよろしく頼む」


 こう書いた使者を早馬で王都に送る。シュヴァイニッツ公国の損害が殆どないから後の治安回復とか残党の対応は任せていいだろう。兵を纏めてゆっくり帰るとするか。


 この戦いの損害は、ルテティア軍が戦死1200の戦傷3500、シュヴァイニッツ公国が戦傷120に対し、ヴィスワ王国側は戦死1500の戦傷4000、捕虜が1万に行方不明が5000と一方的な結果になった。


 これにより、シュヴァイニッツ公国はルテティア王国と正式に同盟を結んだが、一部前公爵派とヴィスワ王国の脱走兵が潜伏して火種は残る形になった。

仕事が、仕事が忙しいですorz


次の投稿は総合評価4000記念になると嬉しいなぁ(ぼそ

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