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何人いる?  作者: 山奉行
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【ブックマーク1500達成記念】シュヴァイニッツ公国にて

 ヴィスワ王国2万が1200人で守ってるルテティア王国のヘッセン砦を攻略できなかった事が知れ渡り、周辺国ではルテティア王国との同盟論が湧き上がって来た。一部のヴィスワ王国と同盟を結んだ国では緘口令を布いて、国内の混乱を抑えていたが、ここシュヴァイニッツ公国にはヘッセン砦の英雄がいたので、それが出来なかった。


 何といっても、敵方であるルテティア王国がその勇戦ぶりを認めて、対等の立場の不戦条約を結ぶ提案をしてきたのだ。国民はヘッセン砦の英雄であるマクシミリアン公子の帰還を熱狂的に迎えて、ルテティア王国との同盟を国に訴えかけた。


「予想はしていたけど、ここまで世論が盛り上がるとはなぁ。父上とマルレーネ嬢はストレスで気絶してるんじゃないの?」


 乳兄弟のオットーに話しかけると、彼は苦笑交じりでこう答えた。


「頭に血が上りすぎて卒倒ならありえるかもしれませんね。ここまで国民が熱狂してしまっては、条約を断りようがありませんですから。ましてや、実際はボロ負けで情けをかけてもらっただけだと知ってればね」


 元々、シュヴァイニッツ公国はヴィスワ王国とルテティア王国を両天秤にかけることで生き残って来た。


 ヴィスワ王国の方がルテティア王国に比べて国土は2倍、人口も1.5倍あるため、単純な国力ではヴィスワ王国の方が大きい。だが、ルテティア王国は国の西側ほぼ全てと南の一部が海に囲まれているのに対して、ヴィスワ王国は北側に少し海に面しているだけのほぼ内陸国である。そのため、防衛に必要な兵力は比べ物にならない。


 実際かつて何度もあった国境紛争ではほぼ互角であり、両天秤にかける形で国境地帯にいくつかの小国が生き残っていた。我が国もその一つである。


 ただ、先日王太子が父王を幽閉する事によって始まったルテティアの内乱により、ヴィスワ王国が影響力を増やしていった。我が国も公子、つまり俺ががヴィスワ貴族と婚約を結んでヴィスワ王国の同盟国になっている。


 ヴィスワ王国は元々拡張政策を取っている国なので、そのまま併合される事になると言われているし、このままいくと多分そうなるとは俺も父上も思っている。問題は、ヴィスワの属国は大体の国が本国からの圧政と重税に苦しんでる点だ。


 親父は自分だけは贅沢出来るような条件を出してきたヴィスワ王国に国を売る気満々だが、俺はあいつ等を信用していない。


 婚約者として送られてきたマルレーネは、顔だけは美人だが平民に対して情の欠片もない。俺の性格をヴィスワ王国側は判っているわけだから、こんなのを送ってきても喜ぶ訳が無い事は分りきってるはず。もちろん国民からの人気は最悪だ。


 おまけに、高々子爵令嬢である。つまり、シュヴァイニッツ公国はなめられてるわけだ。


「いいかオットー。いつも言ってる通り公国臣民を幸福にするのが俺の目的であり使命なんだ。もちろん全員幸福にするのが不可能なのは判ってる。でも、俺のせいで国民が全員不幸になるのは耐えられそうにない」


「ならば、手っ取り早いのは陛下を排除してマルレーネ嬢をヴィスワに送り返し、速やかにルテティア軍を引き入れる事ですな」


 いやちょっと待ってくれオットー。確かに手っ取り早いが、ほんの僅かでも計算通りに行かなかったら、シュヴァイニッツ公国内でヴィスワ王国とルテティア王国が戦争になるじゃないか。ウサギは寂しいと死ぬが、俺は国民が不幸になると死ぬんだぞ。判ってんのか?


「そのためにルテティアから銃を供与されたのでしょう。ヘッセン砦の英雄として軍はほぼマクシミリアン様支持で固まっております。今ならクーデターだろうが陛下の暗殺だろうが何だってできますよ」


「どうしてお前はそう過激なんだ。出来る出来ないと、やりたいやりたくないは別だろう。そりゃ俺にとっては国民こそが一番だが、だからといって父親殺しとか婚約者殺しに抵抗が無いかと言われたら、間違いなくあるに決まってる」


 確かにルテティア軍の装備はとんでもない何てレベルじゃない。ベルリオーズ公爵にアリサカ銃と呼ばれてる新型銃を見せてもらったが、あれまんま38式歩兵銃じゃないか。


 あんなもの用意されていたら、こちらの火縄銃に毛が生えたような銃なんて大人と赤ちゃん位の差がある。だが、転生者じゃない俺以外の人間にはその差が判らないんだ。マトモに開発して行ったら500年くらい経たないと作れないなんて、俺だって知らなかったら信じない。


 だからといって、父親や婚約者をどうこうするのは抵抗がある。前世の俺は無能な2代目社長で、会社を人任せにしたあげくブラック企業として有名になり、責任を取って追放された。自分の下に居る人間を二度と不幸にさせないと誓ったのは嘘ではないが、その為の障害が親と婚約者とはねぇ。


 国民の声を聞いて、父上が方針を転換してくれればいいのだが、あの王権神授説の申し子みたいな父上じゃ無理だろうからやっぱり俺がやるしかないのか。本当に嫌だけどそれしか手が無いからなぁ。


「仕方ない、父上にはご退場頂いて、ルテティア軍を呼ぶとしますか」


 オットーにいくつかの指示を出して、俺は深くため息をついた。




 マクシミリアン様と秘密裏に同盟を結んでシュヴァイニッツ公国までお送りした後、戦後処理のため鹵獲したヴィスワ王国の新型銃を見て俺は驚いた…レベルの低さに。


 いやこりゃないだろう、試射したらおかしいとか思うだろう普通。まず前装式なら椎の実弾みたいに後ろに凹みを作ってライフリングにかませるようにしないとダメだろう。それをしないで、発射ガスが漏れないようにギリギリのサイズで弾を作るから装填が大変なんだ。俺の銃も38式実包…つまり38式歩兵銃の弾を完全に再現するには精度が足りなかったんで、椎の実弾の技術を応用してライフリングにかませるようにしてると言うのに、その辺の知識が足りないのか?


 そもそも、知識があったらボルトアクションにしてるか。


 さらには、ライフリング刻み過ぎだ、4条| (刻みが4本)もあれば十分なんだって。おまけに弾を何回転させるつもりだ…これ、よく暴発しないな。


 なんていうか、適当な知識でライフル銃の真似をやってみただけって感じだ。これならあと100年はこちらが優位に立てるな。そこにやって来たミレーユが向うの銃はどうなの?って聞いてくるので、最高の笑顔で答えてあげた。


「この銃は出来損ないだ、食べられないね」


 ごめんなさい調子に乗りました、そんな魔法を当てられたら死んでしまいます。真面目な話に戻すと、設計図が流出した可能性は少ないと思う。ライフリングの刻み方とかが日本式じゃないし、そもそもボルトアクションを真似しないとか考えられない。


「じゃあ、どういう事?誰かが同じような事を考えて開発中って事なの?それとも向うにも転生者がいて、その人が開発したのかしら」


「恐らくは後者だろうね。ライフリングをこんなに刻むようになったのは前世の俺がもう普通の町工場の親父になってからだから。いくつかの銃は銃底に改造しようとした跡があるから、ボルトアクションにしようとして失敗したんじゃないかな?下手すりゃマスケットそのまま使った方がいいような仕上がりだ」


「それなら、マクシミリアンにあげた銃で何とかなりそうなのね。一般兵用の銃で大丈夫なのか心配だったんだけど」


 俺もあの銃で性能が大丈夫なのかちょっと心配だったんだけど、この程度の技術だったら性能で負けないから勝てないまでも負けはしないだろう。


 後残った問題は、この鉄くずにしかならない鹵獲した銃をどうやって再生するかだ。




 1ヶ月後、ヴィスワ王国はシュヴァイニッツ公国にて公子による反乱があり、公爵から支援要請があったとして6万の兵でシュヴァイニッツ公国に攻め込んだ。首都トリーゼンベルクはヴィスワ王国との国境に近い所にあったので、あっという間に包囲された。


「いやー6万に囲われると大変だねぇ。敵の数が多すぎてどうしようもないよ」


「なに呑気な事言ってるんですか。こっちは2万人しか居ないのにルテティアが救援に来るまであと1週間はかかるんですよ。そこまで持たせないとどれだけの国民が犠牲になると思ってるんですか」


 いや、その通りなんだけどね。今更じたばたしても仕方ない。幸いにしてこの町は中心をエッシェン湖のほとりにあるので、完全に包囲するのは物理的に不可能だ。食料も、豊富とは言い難いが1ヶ月位の篭城には十分に間に合う。後はルテティアの援軍が間に合うまで耐えるだけだ。


 籠城戦というのは地味な作業だ。相手が攻めてきたら応戦するだけでこちらからは基本何もしない。敵方は総攻撃を2回ほどかけてきたが、こちらの防衛線を突破できずに撤退している。塹壕とライフルマスケットと言われるタイプの銃があるだけで大分違う。


 元々、ルテティアはアリサカ銃を重要拠点とか精鋭部隊にしか配備せず、一般兵はこちらに供与してもらったものと同じハルノハラ銃という名前の銃を使ってる。幕末のあたりの歴史は結構好きだったんで覚えているんだが、スプリングフィールド銃のもじりかよ。


 この銃は一発づつ弾を込める形式の銃なのだが、銃身にライフリングを刻んであって、椎の実弾というちょっと特殊な弾を使っている。勿論アリサカ銃の方が高性能なので、何で全部アリサカ銃にしないのかと聞いたら、銃と弾の生産性が段違いらしい。ただし、これでも有効射程は700メートルくらいあるので、マスケットとは性能差がかなりある。


 町が国境からはちょっと高い所にあるので、向うが攻め上らないといけないのも有利な点だ。突撃しようにも速さが出ないしすぐ息切れしてしまうので撃退しやすい。砲撃も湖側には届かないので市民の被害もほとんど出ていない。全く、ご先祖様はいい所に町を作ってくれた。


 何より、もう少し粘ればルテティア軍が来てくれると皆信じている。そのため、士気が高いまま維持できているのは何より大きい。これなら一週間なんて簡単に粘れるだろう。



 そして、ヴィスワ王国が2回の総攻撃でトリーゼンベルクを陥落させる事が出来ず、長期戦の様相を呈してきたころでルテティア王国軍4万が救援に到着した。

8月前半まで仕事が忙しくなるので、更新頻度が下がります。

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