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ラブオールプレイ  作者: 楓那夏
7/10

ちょっと前のお話 ②

それからというもの私はバドミントンに明け暮れた。

何をしてても第一に考えるのはバドミントンのこと。勉強よりも友達とのお出かけよりもバドミントンが好きになった。


私の小学校の範囲にはもともとバドミントンの少年団はなくて、だから少年団とまではいかないにしろやりたい人を集めて小さなクラブチームを作った。

もちろんそのメンバーの中には青空もいた。


夏休み、午前中はバドミントンをしてお昼寝して、午後はみんなで宿題をやって、そんな生活が毎日続いた。

そんな生活が毎日続くんだと思っていた。


8月の下旬。私たちは初めての公式試合に出ることになった。

買ったばかりの真新しいユニフォームを着て、右も左もわからない私は彩羽の背中についていくしかなかった。


そして始まった1回戦。

私を待っていたのは絶望だった。


初めての大きな体育館。知らない人からのたくさんの眼差し。

私が感じたのは今までの生活からは考えられないほどの緊張と恐怖だった。


今まで何度も何度も繰り返しやってきた練習もすべてがゴミのように消えていった。


無理だ…。


初めてする本番コートへのあいさつ。

その時もうすでに足はガクガク震えていて、始まった試合、一本目のサーブもやっと回ってきた2回目のサーブもプルプル震えてネットを超すことはなかった。


私たちは負けた。

それはそれは本当にあっけないほどに。


強くなりたい。


その時私は切実にそう思った。

隣で緊張もあまり見せないで、普段と同じ様子の彩羽。

そんな彩羽に見合うようなちゃんとしたペアになりたかった。


私のバドミントンへの執着心はそれからますます大きくなっていった。

成績はガタ落ち、バドミントン以外に特技と言えるもんは何にもなくて、人を寄せ付けなくなった私には次第に友達も少なくなっていった。


だけどいい。

彩羽さえいれば私はどんな場所でもどんな環境でも生きていける。

彩羽がいれば私は無敵になれる。


迎えた翌年の同じ大会。

私たちは地区8位、その次の年小学6年の時には地区優勝し関東大会にまで勝ち進んだ。


もう緊張も恐怖も感じなかった。


私たちの毎日はそれからも続いて中2の時には全国大会ですら優勝を勝ち取った。


これからもそうやって2人でバドミントンをやっていけるはずだった。


だけど…


中3で部活を引退して私たちは泣く泣く受験勉強を始めた。

近くにバドミントンの強豪校があったから彩羽とそこを目標に頑張っていた。


そんな夏のはじめ。


彩羽が学校に来なくなった。

それだけじゃない。

音信、家も引っ越していて、そして誰に聞いてもその詳細について教えてはくれなかった。

みんな知っているような顔をして私にだけは何も教えてくれなかった。


12月。

久しぶりにあった彩羽はベットの上でやせ細り青白い顔をしていた。

もう話すことすらできないほど衰弱していた。


「なんで…。」


私は何もできなかった。

ただただ驚いて、現実を受け入れられなくて、戸惑い、悲しみ。

そうやっているうちに彩羽はこの世を去った。

苦しそうにこの世界から消えていった。


私は彩羽のことを考えるだけで過呼吸になるようになった。

思い出に触れるたび彩羽の笑顔が脳裏に浮かんで苦しくなった。

だから彩羽が教えてくれた、彩羽との思いでがたくさん詰まったバドミントンは私にとって何よりもの苦痛になった。


「私、もう2度とバドミントンはしない。」


志望校を県外に代えて、それからあてつけのように勉強してやっとの思いで決まった合格。


その合格発表の日、私は青空に吐き捨てた。

彩羽が死んで私がバドミントンを辞めても、練習をし続けた青空に向かって最悪な言葉を吐き続けた。


「バドミントンなんて大っ嫌い。」


それでも青空はずっと、何も言わずに私の手を握っていてくれた。

青空だけは私から離れていかなかった。

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