向日葵
「いつまでそうやって下を向き続けるの?」
青空に連れられて体育館の外でひとで休んでいた私の前にはさっきの女の子が立っていた。
「下を向いたままでいつまで青空くんの足を引っ張り続けるつもり?」
「……。」
何も言い返せなかった。
間違いなく私は青空の足を引っ張っている。
さっきの試合だってあのまま続ければ間違いなく青空は決勝まで行けたのに、私のせいで戦わずに負けてしまった。
『あんた青空くんのなんなの?』
不意に中学の同級生に言われた言葉を思い出した。
確かにそうかも。
私と青空はただの幼なじみ。
私には青空の足を引っ張っていい理由なんてどこにもない。
「七瀬睦月。12月12日生まれ。小学4年の時にバドミントンを始めてその才能は1年で開花。小学6年の時に関東大会に出場、中学2年で全国大会優勝……。
2年経った今はただの帰宅部。」
まるで雑誌の紹介文のように私のプロフィールをさらりといってみせた彼女に感じたのは紛れもない不審感と恐怖。
「知ってるよ。私がどれだけ君に会いたかったか。君は私の、みんなのあこがれだったのに。」
「憧れなんてされるほど……私は立派じゃない。」
「立派だよ。いや立派だった、かな。」
「私はっ!」
彩羽がいなくちゃ何もできない、人間のクズ。
「一人じゃ何も出来ない。」
「確かにそうかも。彩羽ちゃんと君はいつだって二人で一人だった。」
私達は二人で一人。
彩羽も昔そう言っていた。
彩羽がいなくなった今私は一人にもなることができない。
「でもね、睦月ちゃん。あなたは生きてるよ?
これからも生き続ける。このままでいいわけない。彩羽ちゃんはそんなことのぞんでない。」
彼女はまるで彩羽のことを知っているかのような素振りを見せた。
「……あなた、誰?」
「私は彩羽ちゃんに頼まれて君に会いに来た!
救世主なのですっ!」
汗だくのユニフォームのまま敬礼をしてみた彼女はまるで向日葵のような笑顔で私に笑いかけた。
「私の名前は結城咲桜!
私ともう一度バドミントンしよっ!」
自分勝手で人の都合なんか全く考えない彼女を理解できなかった。
だけど彼女からは懐かしい優しさの匂いがした。