ココロの穴
「どうして?……青空、青空」
息が苦しくなって、膝がガクガクと震えた。脳裏に笑ってた彩羽の顔が浮かんで、棺桶に閉じ込められた彩羽の顔が浮かんで、最近おさまっていたはずだった発作が私を襲った。
まただ。
また青空に迷惑をかけちゃう。
「睦月?……大丈夫だから。ね。睦月!」
泣いちゃダメって分かってるのに考えれば考えるほど涙は止まらなくなって、立っていることすらうまくできなかった。
「もう、いや……」
「ごめんね、睦月……。ごめん。」
謝らないで。
悪いのは全部私なのに……。
「はあ、っっはぁ。」
青空、ごめんなさい。
私を元気付けようとしてくれたんだよね?
本当はわかってる。
親も友達もみんな。
私がバドミントンが大好きなことを。
でもね、もう私は嫌なの。
大切なものだからこそもう何も失いたくない。
「睦月、かえろ。まだ早かったのに……ごめん。」
試合は?もうすぐコールされるよ?
そう聞きたかった。聞くつもりだったのに。
声が出なかった。
気づいたら私は青空に腕を引かれて会場の外に出ていた。
もう、大丈夫だと思ってたのにな。
バドミントンを見たって彩羽のことなんて思い出さないと思ってたのに。
もう1年が経った。
しっかり傷も癒えた。
それでも、私の心はポッカリと穴が空いたまま、この1年間何で埋まることもなかった。
なのに……
あの女の子は誰なんだろう?
彩羽にそっくりなあの子は……。
忘れていたはずの彩羽への思いが確かにそこにあった。