新しいドア
校門の前の桜並木道、咲き誇る桜の香りが私の鼻腔をおそった。
道の両サイドでは各部活動の先輩方が才能のある新入生を手に入れようと争いを繰り広げていた。
溢れかえる人、騒がしい笑い声。
すべてを無視して私は誰の目にも止まらず校内へ入った。
くだらない。
度の過ぎた運動は学力の低下を招きかねない。
貴重な10代という月日をそんなものに捧げてしまっていいのだろうか?
そんな考えにふけっていると無防備だった私の背中に手が置かれた。
「むーつき!」
振り返るとそこには幼馴染みでアパートのお隣さんの青空が立っていた。
「先行かないでよー。断れなくて困ったじゃん。」
黒縁メガネ、クルクルとうねる髪の毛と裏腹にやけに整った容姿を持つ幼なじみは少し困ったような笑顔をして私に笑いかけた。
優しくて優しすぎて情けない彼。
小さい頃からずっと同じ夢を追いかけていた仲間だった。
こんな私のことも好きだと言ってくれる大切な親友だった。
「……ごめん。」
元々住んでいた家からだいぶ離れたところにあるこの高校で私は新しい生活を始める。
変わってしまった私で。
青空はとっても心配してわざわざ同じ学校に入学してくれたけど、誰も私を知らないこの場所で、バドミントンから離れて生きていくと私はきめたんだ。