君へ贈る言葉
後ろから聞こえる歓声は私たちの背中を押して、そして逆に私たちに大きなプレッシャーを与えた。
「一本、落ち着いて決めてこう!」
後ろで咲桜先輩の元気のいい掛け声が聞こえる。
辛かった、本当に辛かった。
全国大会に行ったとはいえ体力も極限まで落ちきっていた私は、バドを再開したあと10分すら走り続けることができなかった。
技があっても体がついてこない。
その時初めて自分が今までどれほど無駄な時間を過ごしていたか理解した。
だけど、頑張りたい。そう思えたのはやっぱり彩羽じゃない、咲桜先輩がいてくれたから。
もう…ホントにやんなっちゃう。
私、こんなにも先輩が大好き…。
「いっぽーん!!!」
軽い音を放って相手のコートに入ったシャトルは弧を描いて私たちのコートに戻ってくる。
先輩が打つ急角度のスマッシュ…。
決まった。
「ナイッショーー!」
笑顔で咲桜先輩に駆け寄ると目を合わせてハイタッチをした。
彩羽、聞こえてるかな?
伝わってるかな?
私はね彩羽が教えてくれた、彩羽との思い出がたくさん詰まったこのバドミントンってスポーツが、大っきらいだった。
だって彩羽がいちいちシャトル打つ度に私の頭の中に現れるから、苦しくて苦しくて怖かった。
こんな私がバドミントンしてて、楽しんでていいのかなって。
でもね彩羽。
私気がついたよ。
ちゃんと気づいた。
彩羽はこうなることがわかってて最初から私にバドミントンを教えたんでしょ?
彩羽が死んでしまったあとでも私がちゃんと笑えるように、彩羽は私にバドミントンを教えてくれたんだよね。
「もう一本!入るよ!」
あとね、咲桜先輩に記憶を残してくれてありがとう。
なんか、最後の最後まで彩羽の想像通りだったんだね。
怖いくらいそのまんま。
だけどやっぱり感謝してる。
精一杯、命をかけて私のために生きてくれて…ありがとう。
ありがとう。
「睦月ー!一本決めてこう!」
青空にもちゃんと謝れたよ。ありがとうって言えたし、…好きだよとも伝えられた。
青空への思いも結局彩羽が気づかせてくれた。
あーもう!
ありがとう、ありがとういってて気持ち悪いね。
そっちで笑ってるなよ〜
彩羽は元気でやってる?
あの飛びっきりの笑顔で笑えてるなら私も幸せだよ。
彩羽…。彩羽。
大好き、大好き!
ホントに…ありがとう。
さようなら…。
「サーッ!!」
また咲桜先輩が点を決めて、1セット先取した。
こうやってなんだって支えられてばっかりだけど、私は彩羽のぶんまで頑張っていかなきゃ!
彩羽のぶんまで精一杯、生きていかなきゃ…
これからもきっとたくさん迷惑かけるけど、私は彩羽じゃない、咲桜先輩と青空と残された人生を一生懸命過ごしていく。
たとえどんなに苦しくても…。
「セカンドゲーム、ラブオールプレイ。」
私の今はまだ始まったばかりだ!




