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蛍の光  作者: 椿
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約束

こんにちは。椿です。

蛍の光『淡く優しい光の粒』の続きです。最後まで見て頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。

数日後、いつものように池の前で座っていたケイは小さく息を吐き、芝の上に横になった。するとホタルが一匹、ケイの周りをくるくると飛び交った後、木々の間をすり抜け姿を消してしまった。

「?」

珍しい動きを不思議に思ったケイは、立ち上がり数匹のホタルと共に池の側を離れ、森の中を進んでいく。

「…おやおや。」

ケイが目を向けた先には少女が一人、先程のホタルを肩に乗せてしゃがみこんでいた。

「また道に迷ったのかい?」

突然声をかけられ、少女―棗は驚き振り返る。彼女の表情は喜びや戸惑いが一度に色濃く浮かび上がり困惑しているように見えた。

「あ…えっと…」

なかなか言葉を紡げない棗を見て、ふっと笑うケイは身を屈めて顔を覗きこんだ。

「うん?」

「…やっぱり来てはいけない?」

ケイは以前と同じように手に顎を乗せ棗の顔を見つめた。

「何故、君は此処に来たいんだい。」

質問に質問を返され、棗は更に戸惑い慌てた。その様子にケイは思わず声をあげて笑う。

何故笑うのかよくわからない棗だったが、心地好い笑い声に先程の緊張は少しずつほどけ、ほっと安堵していった。

「今から言う約束を三つ守れるかい?」

別の問いを投げ掛けるケイに棗は小首を傾げた。

「約束?」

そうだよ、と頷き棗の前に三本の指を出す。

「一つ、此処の事は他の人には秘密にする事。

二つ、僕やホタルの側を離れない事。三つ、―…」

ケイは言葉を区切り、棗の瞳に映る自分を見つけ、一度目を閉じ再び口を開いた。

「笑って」

前の二つの約束とは少し異なるものだったので、棗は疑問を投げ掛ける。

「私が?」

「うん。君がね。」

「いつ?」

にっこり笑いケイは答えた。

「ずっと。」

ずっと!?と声をあげる棗に、ケイは思わず口元を押さえ笑いを堪える。

「嘘だよ。君が笑いたい時に笑って。」

ケイの柔らかい表情を見て、心臓が飛び跳ねる棗。怒るに怒れない様子で顔をほんのり赤くして口を膨らました。

「どうかな。約束…」

「出来るわ!」

話を最後まで聞かずに棗は即答した。ケイにからかわれた事もその要因だが、何より此処に来ても良いと了解を得られた事が嬉しくて胸が弾み、勢いよく声を発していた。

ケイはゆっくりと身体を起こすと周りを飛んでいたホタルに何かを伝えるように顔を寄せる。

「棗」

初めて名前を呼ばれ、棗の体温は一気に上がったような気がした。その様子をケイは愛おしく見つめ言葉を続けた。

「おいで。この間の池の畔に行こう。」

歩みを進めるケイの後ろ姿を見て棗は何とも言えない幸福感に硬く目を閉じ噛み締める。

「ありがとう。」

小さな声で呟き、棗はケイとホタルの後を追った。

「何か言ったかい?」

「ううん。何にも。」

にっこり笑う棗にケイは首を傾げつつも池への道に足を運ぶ。

ホタルが二人の周りを優しく照らしていった。

次話で最後となると思います。

ぜひぜひ、最後までお付き合いよろしくお願いします。

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