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魔王城から始まる俺の冒険  作者: 暮野
第1章 魔王城での目覚め
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 俺に、魔王が倒された…?


 意味の分からないことを言うレオーノヴィルさん。まず魔王がまだ生きていたことも知らなかったし、それがなんで俺に倒されているのかも分からない。だって、一度起きたときには誰もいなかったし、今も彼しかいなかった。俺は魔王の顔さえ知らないのに、どうやって倒せるって言うんだ。


「……その様子では、本当に分かっていないようだけれど、君に魔王が倒されたのは間違いない」


 俺が一人で混乱していると、俺の様子に気づいたらしい彼はダメ押しとばかりにもう一度そう言った。そして手をあげて俺の後ろを指さす。


「ほら、鏡を見てごらん。私の予想が正しければ、君の目は何か変化があるはずだよ」


 レオーノヴィルさんに促されて、趣味の悪いゴテゴテした派手なドレッサーに近づく。鏡の中の俺に注目するが、うーん分からん。そもそも村にはまっさらな鏡なんて高価なもの無いから、こうして歪まない自分を見るのは今世では初めてかもしれない。


 よく分からないながらに、とりあえず言われた通りに鏡を注視して瞳を観察した。あ、俺の今世の目は紫なのか。こんな不思議な模様が入っているなんて、流石剣と魔法のファンタジー世界……って、ん? 模様?


 今初めて気づいた模様にぎょっとしてレオーノヴィルさんに興奮気味に声をかける。


「レオーノヴィルさん! 大変だ、おれの目が!」

「ああ。分かっただろう。その眼こそまお――」

「どうこうこれどうなってんの!? きも!」


 カーテンから零れるわずかな光しかない薄暗い部屋にいる所為か、瞳孔が光を集めるために開いているのはいい。でも、瞳孔が開いていても関係なくある目の中の模様は許せない。どういう構造なんだ。まさか、目の表面の方に刻まれているのか!? し、視力に影響ないよな…?


 俺がわたわたしながら目の模様を嘆いていると、レオーノヴィルさんは呆れたような視線をよこしてきた。てか、いい加減レオーノヴィルさんいうのつらい。名前長すぎて。


「…それこそが、魔王の証。『魔王紋』だ」「そういえばレオーノヴィルさん。あだ名とか、ないの?」


 …ん? 今、言葉が被って聞こえなかったぞ?


「そうだね、私のことはレオンと呼んでくれ。魔王様」

「わかった。レオンさんだね。あ、おれはティオス・ココルドだ、よ……ま、まおうさま?」


 そういえば自分は名乗るのを忘れていたことを思い出したので名乗ってみるが、その前に言われたことを時間差で理解して首をかしげる。え、今レオンさん、俺に魔王様って言ったの?


 いやいやいや。だってさっき魔王倒されたって言ってたじゃん! どういうこと!?


「ああ。先代魔王、吸血族のリリスカットを君が倒してしまったらしいからね。彼女が消えた瞬間から君は魔王だよ」

「おかしいよね!? おれ、にんげんだし、まおうたおしてないし!」

「そうだね。君は人間で、今は神の保護下にある。吸血族は他種族の血を吸って生きるけど、自分より格上の血を吸うと死ぬんだ。神の保護下にいる子供の血を吸えば、例え魔王でも死ぬのは当然さ。魔王というのは先代を倒したものが次代になる決まりでね。どうやら魔族じゃなくても『魔王紋』を受け継ぐことができるらしい」


 吸血族とは何だ。吸血鬼みたいなものか? 神の保護…というのは、神殿の神様の加護のことか? 成程、お礼を言い終わっていなかったし、ぎりぎりまだ有効だったというわけだ。で、そんな状態の俺の血を魔王が吸って……要するに自滅したのか。間抜けだな。てか、血を吸われてたって地味にショック。俺、吸血鬼になったりするのか? いや、魔王にはもうなってるみたいだけどさ……。


「え、えーっと、どうしたらいいの?」


 魔王になってしまったというのは千歩譲っていいとして、俺はこれからどうすればいいんだ。


「魔界を統治すればいい」

「い、いや、そうじゃなくてさ…。どうすればまおうの地位を…へんかん? できるのかってこと」


 俺がそういうとレオンさんは変な顔をした。酸っぱいものを食べたみたいな。


「……魔界とは実力主義の風潮がある場所だ。王は力が強いものがなるのが習わしで、次代の王は先代を倒すことで決められる。だから、王位を返すことは出来ないし…生きたまま次代に王位を譲るのは難しい」

「ひぃっ! なにそれ!?」


 怖いっ! 魔界ってなんて恐ろしい所なんだ!!


「お、おれみたいに、ふかこうりょくでまおうになった人はいないの…?」

「さあ…。ああ、でも、勇者の剣で魔王が倒されると、次代の王の選定は変わるらしいよ」

「勇者の剣!」


 それなら知っている。恐らく父さんが言っていたやつだ。つまり今は王城にあるはず。


「ねえ、王都に行くにはどうしたらいいの?」

「どうしたらいいもなにも、城がある此処が王都みたいなものだろう」

「えっ」


 城!? なんか派手な造りの部屋だと思ってたけど、ここお城なの!? え、俺不法侵入……?


「あ、まさか、人界の方の王都か? それなら直ぐに行くのは無理だろう」


 なんだ勘違いか。てかそもそも魔界とか人界とかって何だろう。


「どうして? そもそも、人界とか魔界って何?」


 俺の言葉にレオンさんは顔を顰めた。すんません。一般常識でしたか。


「……この世界は三つに分かれている。人間が住む人界、魔族が住む魔界、獣族がすむ獣界だ。三つは独立しているが、互いに行き来することができる。昔はよく侵略戦争があっていたが、今は平和条約が結ばれていて国交もある」


 レオンさんは言いながら指で宙に丸を三つ書く仕草をした。すると彼の指の奇跡に合わせて青く光る線が現れる。青い丸が三つ出来ると、今度はその丸同士を矢印でつなげた。


「そんな中、十年程前に先代魔王リリスカットが侵略宣言をしたが、人界の勇者に封印されてしまった。そもそも、魔王というのは『魔王紋』を受け継ぐものが名乗る称号なんだが、何故か人界の神殿に眠る剣で『魔王紋』を切ると『魔王紋』が魔王から消えるんだ。そして『魔王紋』が奪われた奴が死ぬと、何処からか新たな『魔王紋』を持つ奴が現れて魔王になる」


 ほうほう。魔界の王の証が何故か人界の剣で消えるなんて不思議な話だ。


「リリスカットは封印されただけだったし、彼女の『魔王紋』はそのまま彼女に残っていた。しかしまあ、魔王である彼女を永遠に封印することは不可能だからな。先日その封印が解けて復活し、そのまま復讐のために人界に行ったらしい」


 父さんはなんで魔王を倒さなかったんだろう。勇者の剣はあったんだよね…?


「神殿を壊して、ついでに食料を手に入れて浮かれてたんだろう。神の保護下にあるお前の血を吸って自滅したんだ。あいつは昔からどこか抜けているからな」

「……そういえば、どうしてレオンさんはおれをにくんでないの? 王さまをたおしちゃったんでしょ? おれ」


 ふと疑問を感じて彼に尋ねる。俺は気を失っている間に血を吸われただけとはいえ、彼からしたら王様を倒されたのだ。こうも友好的に敵に接することができるのか?


「確かに私はリリスカットとは旧知の中だ。しかし、魔族というのは同族に対する情というのが薄くてね。人より長い時間を生きるし、別れを惜しむことは少ないんだ。それに現魔王に逆らうようなつもりはないよ」


 うーん…分かったような、分からんような。種族の違い、かあ。


「で、なぜ君が人界に行くのが厳しいかというと、リリスカットが復活宣言をした後で人界は警戒態勢にあるし、魔王が倒されたことも知らない。とりあえず文書で代替わりしたことを伝えてからじゃないと何もないまま会うのは難しい、ということだよ」

「うえぇ、めんどくさい……。どうしてこんなことに…」


 文書とか。六歳児に何させようとしてんの? 俺文字読むのもやっとなのに!


「しかし、そうなると協力者が必要だね。私は人界の文字を書けないし」


 どうやらレオンさんは初めから俺に文書を書かせる気は無かったらしい。そらそうか。俺の見た目的に読み書きがしっかりできるようには見えないよな。よかった。


「当てがあるのか?」

「うむ。彼女に頼んでみるか…。少し待っていてくれ」


 そういうとレオンさんはさっきみたいに指で何かを書きだした。青く光る線を目で追うと、どうやら鳥の絵らしい。レオンさんが鳥の絵に向かって手をかざし、何かを唱えるとポンッという音とともに鳥が現れた。すげえ!


 レオンさんはその鳥に伝言を頼んだらしく、何かを伝えると鳥はまた音を立てて姿を消した。


「ね、ねえ! 今の、まほう?」

「ああ、そうだよ。遠くにいる人と連絡が取れる魔法。難しくないから君も使えるようになるよ」


 すげー! 漸く剣と魔法の世界の醍醐味を味わえるってわけだ!!


「やった! やり方教えて?」

「いいよ…といいたいところだが、それは後にしよう。今から会う彼女の方が魔法には詳しいし、教え方も丁寧だから」

「えー。すぐがいいのにー」

「はは、すまないね」


 ぶーぶー言いながら不満気にする俺に笑いながら頭を撫でるレオンさん。ま、しょうがない。ここは我慢しよ。


「あ、そういえば」

「ん?」


 俺の機嫌が直ったことに気づいたらしいレオンさんは頭から手を退ける。


「いろいろ教えてくれてありがとう!」


 一人虚しく魔王城に取り残されていた俺に、親切にいろいろ教えてくれたことに対してのお礼を言いそびれていたことに気づき、慌ててお礼を言う。ニカッとした笑顔も忘れない。


 俺の笑顔を見てレオンさんは一瞬呆けていたけど、すぐに彼も笑顔になって「どういたしまして」と返してくれた。


 知らない場所で一人きりだった時は不安だったが、レオンさんと一緒ならどうにかなりそうだと思った。


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