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エマーランドにようこそ!  作者: 北郷 信羅
セクション1 電波なクラスメイト
5/28

5,AKD

西青浜高校では、5月に学園祭が開催される。そしてその時に各クラス出し物をすることになっていた。クラスの団結力を高める目的があるようだが、昭裕にとっては最悪のタイミングであった。

何しろ、「ニーターパン(鼻から)流血事件」の後である。

意図していなかったとはいえ、ニーターを追い詰めた彼はクラスメイトたちから「嫌な奴」のレッテルを貼られかねない状況に立たされていたのだ。


「何か案ある奴いるかー?」

担任が問う。

「……」

クラスはしんと静まり返った。誰か意見出せよー的なあの空気である。

「ニーター、何かない?」

クラスメイトの1人が訊いた。こういう時、クラスで目立っている人が指名されるパターンも他の高校と変わらない。

「えー、あるよっ」

夏海はあっけらかんとした様子で答える。あの事件のことは、全く気にしていない様子だ。

「なになに?」

「演劇」

「え……演劇?」

夏海の意見に、皆驚く。いや、普通の意見なのだから普通は驚かないが、普通でない夏海が普通の意見を言うと、普通でないことを言うと予想していただけに逆にその普通さに驚いてしまうのだ。……さて、何回「普通」って言ったでしょう?

「どんなのやるの?」

「『木綿豆腐殺人事件』だよ」

おぉ!とクラス全体がざわめいた。普通ではなさそうな意見だからだ。……もう「普通」いいか。

「ど、どんな話なの?」

夏海はニッコリと笑う。

「詳しくはWebで!」

「行くな!」

昭裕のツッコミに夏海は

「ナイス!」

と親指を立てる。

「いや何が!?」

「えーと、それでね。この話は推理モノなのです」

昭裕をスルーして夏海は説明を始めた。


♦ ♦ ♦


ある街の通りで殺人事件が起きた。被害者は平平平平さん(仮)。フツーの会社員だ。


「またその名前かよ!」

昭裕が突っ込む。

「まあまあ。仮だから許してやってよ」

「自分で言うなよ!」


平平さん(仮)は周囲にビルが林立する通りで頭から血を流して亡くなっていた。そして彼の周りには潰れた木綿豆腐が……。

警察はビルの窓から投げ下ろされた何かが平平さん(仮)の頭に当たったのだと読んだ。しかし、肝心の凶器が見つからない。困り果てた警官たち。

しかしここで探偵が登場。

「凶器は皆さんの足元に散らばっているでしょう?」

その探偵は言う。

そう、凶器はあの木綿豆腐だったのだ!警察の誤算は「豆腐では人を殺せない」と始めから決めつけていたこと。だが時速120kmという速度を持った豆腐ならば、十分に人を殺せるのだ。ビルの高い所から投げ下ろせば、犯行は可能ということになる。


「探偵の活躍によって事件は無事解決!めでたしめでたし!」

「いや、確かにめでたいけど!めでたいけど……なぜに豆腐!?」

昭裕がやっぱり突っ込む。

「斬新でしょ?」

「いや、斬新っていうか、ホント事件よりもお前の方が謎だよ……」

「いいねえ!」

悟が言う。

「胡麻豆腐じゃなく木綿豆腐って辺り、センス感じるなあ!」

「いや分かんねえよ!」

悟は夏海と相性がいいらしい。昭裕はこの頃、それを痛烈に感じるのだった。

「そうでしょそうでしょ」

夏海は嬉しそうに言う。

「AKDな感じもするでしょう?」

「AKD?」

当然、昭裕は突っ込む。突っ込まずにはいられない。

「なにソレ、アイドルグループ?」

「なにゆーてんねん」

夏海はぎこちない動きで突っ込み返した。

「いやそれ、コッチの台詞だから」

昭裕は冷静に指摘する。

「てか、ベタベタなツッコミだな、おい」

「AKDは略語だよー」

「え、無視っ!?」

「何の略でしょーか?」

夏海はマイペースに話を続ける。

「……」

「秋葉寺!」

悟が叫ぶ。

「どこの寺だよ!」

昭裕に休む暇はない。

「残念っ!」

夏海は首を横に振る。

「秋葉堂!」

悟が再び回答する。

「『秋葉』から離れろよ!」

昭裕も再び突っ込む。

「ストライク!」

夏海が叫ぶ。

「え、当たり!?」

「違う、空振り」

「野球かよっ」

「ファウルだろ」

悟が訴える。

「何を基準にファウルだよ!?」

「正解はねー……」

夏海はそこで一旦言葉を切った。

「長い間はいらねーぞ」

過去の経験を基に昭裕は言う。

「焦んなくても大丈夫だよ、総和」

夏海はフッと息を吐く。

「ちゃんと教えてあげる♡」

「いや、そこで色気出されても……」

昭裕は引き気味に言う。

「AKDはね……『危なく』『危険で』『デンジャラス』の略だよ!」

「全部同じじゃん!」

昭裕は呆れながらやっぱり突っ込む。

「やだなー、強調だよ、強調」

「そんな分かりにくい強調なんているかっ」

「……おい昭裕。それよりさ、」

息を切らしている彼に悟が言う。

「出し物、ニーターの劇に決まったぞ」

「え」

何時の間にか黒板には、他の案をぶっちぎって決定した「木綿豆腐殺人事件」が書かれていた。

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