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エマーランドにようこそ!  作者: 北郷 信羅
総まとめ 天然な幼馴染
26/28

5,いと暑しんぐ

 多少(?)のトラブルはあったものの、バーベキューは楽しく行われた。そして日は暮れ、街明かりの届かないこの辺りは薄暗くなり始めた。

「えぇぇっ!?風呂入らないの!?」

叫んだのは悟である。この頃やかましい男である。

「どこにお風呂があるってのよ!?」

風音が言い返す。

「あんたがドラム缶でも担いできたなら話は別だけど!?」

「いやあるさ!」

悟は食い下がる。

「ただでさえ、海じゃなくて山に来てんだ!ここで温泉でも湧いてなきゃ、読者に厳しすぎる!」

「だから『読者』とかやめろって」

昭裕が半分投げやりに突っ込む。

作者(かみ)よ!温泉をっ!」

しかし悟は無視して叫び続ける。てか無理だから。

「ここだと、あってもちょっと入られないかな……」

奈菜の(トドメの)一言で、悟はがっくりと肩を落とした。

「寝よ寝よ」

風音が手をひらひら振って話を終わらせる。

「みんなー、テント割り決めよ」

「そうだな」

悟があっという間に立ち直って言う。

「あんたはもう決まってるでしょーが!」

風音が怒鳴る。テントは2人用が3つ。悟と昭裕がテント割りに関係ないのは言うまでもない。

「私、悟先輩と同じでもいいですよー?」

綾香が妖艶な笑みを浮かべて言う。

「えー。お前はやだよ」

悟が目を逸らしながら言った。もちろん血祭りにあげられた。


 「じゃ、おやすみー」

風音が言って、テントの中に入る。

「うぅ……いと暑しんぐ」

彼女とペアになった夏海が呻く。

「あは、何それ。エマ語……だっけ?」

風音が寝袋を広げながら言う。

「そだよ。とっても暑いって意味だよー」

夏海が説明する。

「すご、古語と英語が合体してるんだ」

風音は笑う。

「……」

不意に、夏海は風音をじっと見つめた。

「え、何……?」

「……し、総和」

「総和?……ああ、悟か」

もちろん、風音は真面目に会話している。

「違うよ」

「え、あっ、昭のことか!」

「うん」

「……それで、昭がどうかしたの?」

「……あの、なんか総和、弧度と話す時」

「ちょっと待って」

風音が制止する。

「ん?」

「弧度って?」

この2人の会話はなかなか前に進まない。

「君のこと」

夏海は風音を指差す。

「あっ、私か!」

「うん」

「えっと、それで?」

「……あの、弧度と話す時、総和の様子変じゃないかって……」

夏海の声は尻すぼみになる。

「あー、確かにね」

風音は頷く。

「……まあ、心当たりはあるかな」

「あるの!?」

夏海は身を乗り出す。

「多分だけどね」

風音は遠い目をして答える。

「……私と昭は、中学の時」

「入っちゃダメだよ!」

突然、奈菜の声が聞こえた。

「えっ、まさかあの(バカ)……!」

風音はテントを飛び出した。

「あっ、ちょっと待って……」

夏海としては、ここで待ては辛い。しかし彼女が声を上げた時には、風音はテントの外に消えていた。


 「奈菜大丈夫!?」

テントを飛び出した風音は叫ぶ。

「あ、熊谷さん……」

奈菜はテントの外にいた。

「私は全然……。でも小林君が……」

「へ?」

「いッてェェッ!」

悟の悲鳴が聞こえた。

「何なに、どういうことっ!?」

風音は混乱している。

「闇討ちですよー」

悟たちのテントから出てきた綾香が言う。

「え、何、テントに入ろうとした……っていうか入ったのは綾香なの!?」

「えへ、そうですよ」

綾香はバットをぶん回しながら笑う。

「なんだ、私てっきり悟が奈菜襲ったのかと……よかった」

「よくねぇッ!」

テントから出てきたボロボロの悟が叫んだ。

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