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エマーランドにようこそ!  作者: 北郷 信羅
総まとめ 天然な幼馴染
24/28

3,全手動洗濯機

 中間試験が終わった。この「終わった」が「最後」を意味するのか、或いは「最期」を意味するのかは人によるわけだが、とにかく「終わった」のだ。


 「山に行きませんかっ」

夏休みが近づいたある日、奈菜が唐突に言った。

「えっ?」

未だ昭裕に例のことを訊けずにいた夏海は顔を上げる。

「何で」

悟が言った。

「あの、私今まで例の病気のせいで、あまり友達とどこかに遊びに行くこととかなかったから……」

「病気?」

昭裕が首を捻る。

「『魔症』だよ」

夏海がノートにそれ(・ ・)を書いて説明する。

「あぁ、マショウ、ね……」

昭裕は曖昧に頷いた。

「字違うよ、ほら」

風音が電子辞書を見せながら言う。

「わざとだぞ、それ」

悟が指摘する。

「え、そーなの!?」

「てか、俺が訊きたかったのはそういうことじゃなくて」

悟は身を乗り出した。

「何で海じゃないの?」

「そこかよっ!」

昭裕が突っ込む。

「どーせ、悟は女子の水着姿見たいだけなんでしょ?やらしい」

風音が呆れ顔で言った。

「否定はしない!」

悟は胸を張って言い返す。

「しろよ」

昭裕が冷ややかなツッコミ。

「……が、起伏に乏しい奴にキョーミはない!」

悟は続けて言った。

「なッ!?」

風音は顔を真っ赤にする。

「わっ……私は着やせするタイプなのっ!」

「お前のこととは言ってませんけど?」

「~ッ!」

悟の指摘に、風音の顔はますます煮上がった。

「……埋めてェッ!」

夏海に飛びついて風音は叫ぶ。

「穴に入るだけじゃ足りないのっ!埋めてぇっ!」

「はーい」

「いやいやいや……ちょっ、ストップ!」

昭裕が、どこからかスコップを取り出した夏海を羽交い締めにする。


 「あの、海は、その……」

奈菜が控えめに言う。

「すごく目立っちゃうから……」

「だろうね」

昭裕が納得したように頷く。

「安藤さんに水着は危険すぎるよ」

「でも、山って不便だろ?料理とか、洗濯とか……」

悟は食い下がる。

「いや、料理は分かるけど、洗濯はいいだろ」

昭裕が指摘する。

「洗濯なら、洗濯機使えば少しは楽になるんじゃない?」

夏海が言った。

「おま、洗濯機担いで行く気かよ……」

昭裕が呆れ顔で言う。

「全手動洗濯機なら大丈夫だよ」

「それ洗濯板だろ!」

昭裕が素早く突っ込んだ。

「でも、他にも風呂とか寝るとことか……あ!」

言いかけて悟は何かを思いついたように声を上げた。

「あーやっぱり山でもいいかな、俺」

「何考えてんのっ!」

風音が悟の頭を教科書で殴った。

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