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エマーランドにようこそ!  作者: 北郷 信羅
セクション3 魔性な転校生
21/28

7,Max

 「へっ?」

夏海の衝撃発言があった翌日。登校してきた包帯だらけの昭裕は混乱していた。

「だからさ、お前、ニーターのこと好きなの?」

悟が登校してくるなり、突然そんなことを訊いてきたからである。

「いや、何でいきなりそんなこと訊くの?」

昭裕にしてみれば、全く不可解である。

「ニーターがそう言ってたんだよ」

「??」

ますますわけが分からない。

(俺がニーターを好きなことをニーターが知ってる?意味が分からんぞ……)

「ホントだって!」

悟は楽しそうに(間違いなく面白がっている)言う。

「な、ニーター?」

「Maxだよ!」

夏海は慌てた様子で即答する。

「え」

「自信満々ってことだろ?」

昭裕は頬杖をつきながら解説する。

「てか、どんだけ自信あるんだ……」

「てか、実際どーなのよ?」

悟が再度問う。

「……うーん」

昭裕は首を捻る。

「分かんないな」

「なんだよそれっ!?」

悟がずっこける。

「今はまだ、分かんねーの」

昭裕は繰り返した。


『おはようございます。放送委員会です』

突然、アナウンスが入った。

『今日は2年3組の安藤奈菜さんより、皆さんにお話があります』

「来たか」

悟が言う。

「何の話?」

昭裕が訊いた。

「あー……お前はこの話知らなかったっけ」

「この話どころか、何で自分が私刑に遭ったのかも、何でニーターがわけの分からん発言したのかも知らねーよ」

昭裕は悟に訴える。

「ニーターがわけ分からん発言するのはいつものことじゃん」

「ベクトルの方向が違うの!」

『あ、あの……。あ、もうこれ聞こえてますか?』

2人が言い合っている間にも放送は進む。

『あの、おはようございます。安藤奈菜です』

学校全体(の主に男子)がざわめく。

『先日は、その、色々誤解があって……。あの、御迷惑をおかけしました。ごめんなさい』

「誤解?」

昭裕が首を捻る。

「奈菜ちゃんが謝ることなんか何もないのに!」

悟が怒気を露にする。

「悪いの綾香じゃん!」

『……でも、ニーターパンさんの告白のお陰で、その誤解も解けました』

「ニーターパンの、告白?」

昭裕はそのままを繰り返す。

『もうこんなことが起こらないように、私はこの場を借りて宣言します』

そこで放送は、しばらくの間静かになった。

「綾香のせいで誤解が生じて、でもニーターの告白で解決……か」

昭裕の頭の中で、大凡の事情が見えてきた。

「おい悟、だいたい分かって……」

「静かに!」

夏海が昭裕の口を塞いだ。

『……私、は……』

躊躇いがちな奈菜の声が聞こえてきた。

『私は、もう、……誰ともお付き合いはしません』

「ええっ!?」

昭裕は思わず声を漏らす。

「総和みたいな被害者を、これ以上出さない為だよ」

夏海が呟くように言った。

「恋愛禁止のアイドルみたいだよな……」

悟も呟く。

「かわいそすぎだろ……」

「そうでもないと思いますよ」

いつの間にか、教室の出入口のところに綾香が立っていた。

「おま……!」

悟の表情が険しくなる。

「お前が言うかッ!」

「いやほら、だってあれ」

綾香が指差した方向から男たちがやってきた。

「!?」

男たちに担がれているのは奈菜だった。

「何やってんの!?」

昭裕が叫ぶ。

「ありがとうございます」

教室の前まで来た奈菜は、男櫓を降りて彼らに礼を言った。

「すごーいっ!」

夏海が拍手する。

「宣言しちゃったら、気が楽になったの」

奈菜は照れ笑いしながら言う。

「近づきすぎないように、じゃなくて、みんなの傍にいればいいんだって」

「なんか、急に積極的になったな……」

昭裕が呟く。

「綾香ちゃんが教えてくれたの」

「お前かよっ!」

悟が叫ぶ。

「私は、片っ端から全員と付き合えばいいって言ったんですけどね」

綾香はあっけらかんとした様子で答える。

「それはちょっと……ね」

奈菜は顔を赤く染めて下を向く。

「無茶苦茶なアドバイスだな……」

昭裕は呆れ顔で言う。

「まあ、今回はさすがにやりすぎかなーって私も思ったので、ちょっとしたお詫びです」

綾香は偉そうに言う。

「へー、お前なんかでもお詫びとかするんだ」

悟が少し感心した様子で言う。

「ちょっと待て、俺へのお詫びは?」

昭裕が声を上げる。

「うん?……ああ、喧嘩シーンカットされてたんで、忘れてましたっ」

綾香は笑顔で答える。

「カットとか言うなァッ!」

昭裕が盛大なツッコミを入れた。

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