表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エマーランドにようこそ!  作者: 北郷 信羅
セクション3 魔性な転校生
18/28

4,魔症

昭裕たちが教室で途方に暮れている頃、夏海は廊下をとぼとぼ歩く奈菜を見つけていた。

「待って、待って……」

息を切らしながら夏海は言う。

「新田さん……?」

「ニーター!」

息を切らしていても、夏海は訂正を入れる。

「えっと、ニーターさん、何で……?」

「心配だったからっ!」

夏海は叫んだ。

「そう……ありがとう」

奈菜は申し訳なさそうに言った。

「どうして恋愛しちゃいけないの?」

夏海は問う。

「……」

奈菜は迷っているような素振りを見せていたが、しばらくして夏海の手を引いた。

「んっ?」

「ちょっと……、場所変えない?」


奈菜は夏海を校舎裏に連れていった。

「おぉう、なんかむっちゃヤバイ感じ……」

夏海は身を竦ませながら言う。

「あっ、あ、ごめんね、別にそういう怖いことはないからっ……」

奈菜はペコペコと頭を下げた。

「それで……ここでなら話せるの?」

夏海はマイペースに話を進める。

「う、うん……」

奈菜はそこで一旦深呼吸した。

「……私、マショウみたいなの」

「魔獣?」

魔性(・ ・)!」

「あー……ハーレム体質のことだよね?」

夏海は首を傾げながら言う。

「そう。……人によっては嬉しい体質なのかもしれないけど」

「だって、人気者になれるよ?」

不思議そうに夏海は問う。

「そんな単純な話じゃないの」

奈菜は溜息をつく。

「私が特定の誰か1人に特別な想いを抱いたりすれば、必ずその人は酷い目に遭うんだよ……」

「何で?呪い?」

夏海は小首を傾げる。

「ある意味、呪いだよ……」

奈菜は俯く。

「私を好きになってくれるたくさんの人たちの中には、怖い人もいるの」

「その怖い人たちが、逆行列の好きな人を虐めるんだね?」

夏海の問いに、奈菜は頷く。

「前に一度、そういうことがあって……だから」

奈菜は目元を拭った。

「だから私にとってこの体質は、生まれてからずっと私を苦しめる……病気みたいなものなの」

魔症(・ ・)ってわけだね?」

夏海は地面に漢字でそう書いた。茶化しているのではない。彼女は大真面目である。

「あは、」

奈菜は思わず目に涙を浮かべながら吹き出す。

「そうだね。私、魔症患者なんだ」


◆ ◆ ◆


「あー、つまんない」

綾香は、昭裕たちの教室を出た。

このところ彼女は、男を奈菜に奪われてオモチャがない状態なのである。

「おい、」

そんな彼女に、声をかける者があった。

「ん」

顔を上げると、1人の男子生徒が綾香を見ている。体型、態度から察するに3年であろう。

「何です?」

「奈菜ちゃんは教室にいるか?」

どうやら、奈菜の教室から出てきた綾香を、彼女のクラスメイトだと勘違いしているらしい。

「ああ、奈菜チャン……」

綾香は不機嫌そうに呟く。その名はもう聞き飽きた。

「いるか?」

「いませんよ……あ!」

いいことを思いついた。無論、彼女の思いつきが「良いこと」なわけない。

「なんだ?」

男は怪訝そうに綾香を見る。

「っていうか、もう奈菜先輩は諦めた方がいいですよ」

「何?」

「だって奈菜先輩、『昭裕君が好き』って言ってましたから」

綾香は不気味な笑みを浮かべて言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ