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エマーランドにようこそ!  作者: 北郷 信羅
セクション2 ドSな後輩
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3,愛嬌だから

あの「美少女」が現れてから、数日経ったある日の昼休み。

「こんにちはっ」

彼女は再び3組の教室に現れた。

「ニーター先輩はいますかー?」

びくっと肩を震わせる夏海。

「に、ニーターになんか用……?」

悟が恐る恐る少女……綾香に問う。

「脇役さんには関係ないです」

彼女は早速笑顔で毒を吐く。

「わきっ……」

悟はまたも膝をつきそうになるが、なんとか踏みとどまった。

「今はな!今は脇役だが、いづれは昭裕を潰して主役になってやるさ!」

「待て待てっ」

昭裕が割って入る。

「お前熱くなり過ぎてとんでもないこと言ってるぞ!」

「うるせーっ!昭裕覚悟!」

「おいっ、やめろって!違うジャンルの小説になっちゃうから!」

悟が振り下ろした手刀を白刃どりして、昭裕は突っ込む。

「ニーター先輩、」

何時の間にか綾香は夏海の側にいた。

「なぁに……?」

平静を装っているつもりのようだが、夏海の目は泳いでいる。

「何か面白いことやってくださいよ」

「へっ?」

「面白いこと」

綾香はにこやかに言う。

「うーん、いきなり言われてもなぁ……」

夏海は腕を組んで目を瞑った。

「えーっ、ないんですかー?」

綾香は残念そうに肩を落とす……演技をした。

「そっかー、やっぱり『新田先輩は新田先輩』なんですねー」

「違う、私はニーターパンだよっ!」

叫ぶと同時に夏海は箸を取った。

「ニーター……?」

昭裕は怪訝そうに夏海を見る。……と、そんな彼の脳天に手刀がヒットした。

「!」

「これで終わりだァ!」

犯人は当然のことながら悟。

「おまっ……まだやってたのかよっ!」

「描写なくて油断したな!」

「だからそういうこと言うなって!」


一方のニーター。箸で掴んだのはウィンナー(タコさん)。

「たぁッ!」

夏海はそのウィンナー(タコさん)を投げ上げた。

「あっーーーーー」

高く投げられたタコさん(ウィンナー)はしばらくして、物理法則に則った自由落下を始める。……そして。

「!」

タコさん(ウィンナー)は見事に夏海の口に収まった。クラスが歓声に包まれる。

「……」

綾香は無表情にじっと夏海を見つめている。

「!」

夏海はVサインをしようとして……もがき出す。どうやら咽に詰まらせたらしい。

「わぁ、おもしろーい」

もがく夏海を見下して綾香は笑う。

「……あぁ、もうすぐ昼休み終わりかぁ。それじゃあニーター先輩、また来ますね」

綾香は邪悪な笑みを浮かべてそう言うと、教室を出ていった。

「……ニーター、何であいつの言うこときくの?」

ドS少女が出ていったのを確認してから、そして夏海が落ち着くのを待ってから、昭裕は夏海に問う。

「……総和、エマーランドが侵略されそうだからだよっ!」

その意味は正確に(・ ・ ・)昭裕に伝わった。何故かは分からないが、綾香は夏海の秘密を知っているらしい。

「……なるほど」

「おーい、昭裕までボケたら誰が突っ込むんだよ……?」

悟の指摘は無視して、昭裕は話を続ける。

「でもこの際、いっそのこと開放しちゃえばいいんじゃないの?」

2人の会話は、2人にしか分からない。

「でも私、愛嬌だから」

しかも夏海は相変わらずの「ニーターパン」である。

「ニーターは度胸寄りだと思うけど」

いい加減慣れてきた昭裕は即座にそう返す。因みに今の会話、夏海は「男は度胸、女は愛嬌」より、自分は女だからそんな度胸はないと言ったのである。ああ面倒臭い。

「とにかく無理っ」

夏海は席に着くと、ぶんぶん首を横に振った。

「これから毎日無茶降りに対応するよか、マシだと思うけど……」

「無理っ」

「でもさ」

「無理っ!」

夏海は勢いよく顔を伏せようとしてーーー昭裕に襟を掴まれた。

「学習しろよっ」

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