第9話:本の秘密
館に戻って来た三千代は、館の地下にある書庫に来ていた。
三千代の本は、50年以上前の本なので、上の図書室には置いていないからだ。
「ううーー、埃が積もってタイトルが見えないし。えーっと、ここら辺だと思うんだけど……」
何冊か、手に取りタイトルを確かめていると、棚の下の方にあるのを発見した。
「ふぅー。あった、あったと」
三千代は、本に白く積もった埃を叩き落とすと本を持って図書室へと戻った。図書室の机には、先に用意した明日香の本が置いてあった。
「さてと、調べますか……何この本。空白のページがある。確かにあの子の死ぬ日は、書いてある。でも…………?」
三千代は、何かひっかかるのだろう、その空白のページに見入っていた。その為か、部屋に入って来た人物には気付かなかった。
「…………何読んでるの?」
「うわーっ!! なっ、何であんたがいるのよ!?」
そう、部屋に入って来たのは、明日香だった。これには、三千代も心底驚いたらしく叫んだ後は絶句していた。
「知らない。家で寝てたはずなんだけどね。……それで何読んでるの?」
明日香は、三千代の手から本を奪うと題名を見た。そして、眉を思い切りしかめたのだった。
「げっ!! これあの時あった気味悪い本じゃない」
「気味悪い言うな。これは大切な本なんだから」
三千代は、明日香から奪い返し、大切そうに腕に抱え込んだ。
「大切ね。…………何が書いてあるの?」
「部外者には教えられない。…………まぁ、あっちに行った時の必須アイテムとだけ言っておく」
そんな三千代の様子を見て明日香は少し皮肉な笑みを浮かべ笑った。
「あら? あたしは死ぬんでしょ? だったら別にいいじゃない」
「あんたが死んだ時に分るわよ」
「でも、死んでるんでしょ? あたし」
「確かに死ぬ、それは本当。でも今のあんたは、死ぬ前の時に戻っている。だから、厳密に言うと死人じゃない。だから、知らないほうがいい」
三千代の何時になく真剣な表情に明日香は内心ためらいつつも再度尋ねた。
「そうまで言われると人間知りたくなるものよ。………大体、人にあんたはもう死んでいるとかさんざん言ったくせに。今さら何よ」
全然引く様子がない明日香に根負けしたのか三千代は口を開いた。
「これは、本よ」
「そうね、見るからに本だわね」
三千代の答えに思わず、つっこみをいれる明日香。
「この本は、誰でも一冊持っているもの。その人間が、生まれた瞬間から死ぬまでの人生が書かれた本。人は死ぬとこの本を持ってあちらに行き、役所で印をもらいそして本を館に納める」
「そんな大事な本が何でこんな所にあるわけ?」
明日香の問いにまさか自分に出された昇級試験のことは話せないので適当にごまかすことにした。
「あんたが死んだ時の記憶を無くし、あまつさえ過去にまで戻ってしまった。だから、その原因を探るべく本を読んでいたのよ」
「じゃあ、この本を書き換えちゃおう」
「はぁ? 書き換えるって……」
「だって、もしあたしの人生が書かれているのなら書き換えたら変わると思わない?」
「ありえないから。この本は書き換えなんて無理。その人の人生が始まった瞬間からすでに終わりまで書かれているの!!」
三千代は、自分の言ったことではっと気が付いた。
(じゃあ、なんでこの子の本は、一部空白なの?)
三千代は、自分の考えに入り込んでいたため、急に静かになった明日香の様子には気が付かなかった。明日香は、三千代が抱えている本を一心に見つめながらぶつぶつと呟いている。
「人の一生が記された本。書き換え不能な本…………書き換える? …………本を…………書き換える」
明日香は、頭が痛みだしのか頭をおさえた。そんな明日香の様子に気付いた三千代は怪訝な顔をして彼女に呼びかけた。
「ちょっと、あんた大丈夫なの?」
「…………そう、あの時あの本を見た。あたしは、あの人に会った。そして…………約束したんだ。行かなきゃ、行って約束を果たさなきゃ」
「橘 明日香!!」
突然、一喝され明日香は我に返った。
「ちょっと、どうしたの?」
「行かなきゃ、あたしもう行かなきゃ。じゃあね」
そう言うと明日香は、わき目も振らず部屋を飛びだして行った。
「おいおい、何だっていうのよ。……まぁいっか。そろそろ向こうは朝だし、目が覚めるでしょ」
三千代は、気を取り直し自分の本を取り出し読み始めた。
ここから、スピードアップして書ければいいと思います。
作者紹介のページで戻りさきにしていたアドレス間違って登録してました・・・・。直しました。
よろしければ、遊びに来てください。
携帯では見れません、ごめんなさい。