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第8話:与えられた課題

 「で、けっきょくどうなったの?」


 三千代が尋ねると、明日香は視線を床に落としながらも続けた。


 「その後は、あたしが入院している間に二人が先輩に詰め寄って……。あたしの体の事は、話したはずだって。先輩は…………病室に来て謝ってた。何度も頭を下げて……。全部、あたしの慢心が原因なのに。もちろん、詰め寄った二人も何も悪くない」


 三千代は、ふと疑問がよぎった。


 「でもさ、何でサークルを別に作る必要がある訳?」


 「他のサークルの人達から辞めて欲しいって言われたの。きっとあたしの体調を考えた結果だろうから、あたしは辞めるつもりだったんだけど」


 三千代は、その先が読めてしまった。


 「もしかして二人が?」


 三千代の問いかけにその時のことが脳裏によぎったのか半泣きになりつつ明日香は言った。


 「多分、あたしが本心ではやりたがってたのが伝わったんだと思う。…………結局それが原因で二人とも辞めちゃった……」


 明日香は、三千代に背を向けると小さく鼻をすすった。


 「でもさ、原因がそれなら手伝うのを辞めるって言わないんじゃない? 普通、そこまで人間関係がもつれる?」


 明日香は、三千代に向き直り少し複雑そうな、それでいて何かうらやましさを混ぜた顔を見せた。


 「有希子と悟はね、才能があるの。悟は、ぶっきらぼうでがさつな所があるけど、内面は繊細で悟の作り出す作品はそれがよく出てる。けっこうファンがいるし。有希子は、姉御肌で人をまとめる才能があるの。本当によく気付くなって思うくらい、少しでもスタッフ同士で不和が起こると気付いて解決していくの。だから皆に慕われる、二人が辞める時に皆必死で引きとめてた。何人かのメンバーに呼び出されて言われちゃった。いくら幼馴染だからって、二人の足を引っ張るなって…………」


 「はぁ? 何そいつら! あんたらに関係あるかっての!」


 「ふふっ。でもね、あたしもそうだなってすごく納得しちゃったよ。だって確かにあたし、甘えてたし。二人がいるから無茶できたんだなって今なら分る。…………だから今回の作品が出来たら二人にサークルに戻るように勧めるつもり」


 「…………ふーん」


 「ふーんってそれだけ? まぁいいけど。じゃあ、あたし帰るけどあんたはどうするの?」


 「そのうち帰る」


 明日香は、三千代の答えに自分の監視が仕事じゃないのかと他人事ながら心配しつつ、動く様子のない三千代に苦笑した。そして、手を振ると背を向けてドアに向かって行ったのだが、何かを思い出したのか振り向くと三千代に叫んだ。


 「あっ、あたしは絶対死んでませんからね」


 そして、部屋から出て行ったのだった。


 「…………バカな子。思い出せればって、あんたは無意識に認めてる。自分の死を」


 三千代は、明日香が出て行ったドアを見つめそう呟いた。


 「そうね、彼女は十分認めてるわね」


 突然の言葉にガタッと椅子から飛び上がると三千代は、後ろを振り向いた。


 「円先輩!? なっ、何でここに?」


 「それは、誰かさんが一向に戻ってこないから。それにしても、あなたもこりない子ね? 三千代」


 「別に暇だから話をしてただけです」


 「そう? 何かベラベラと余計なことまで話してたようだけど」


 円は、探るような目を向けた。そして三千代が視線をそらすのを確認すると嘆息をつき告げた。


 「今の彼女なら十分あちらに連れて行く条件に合っているはずよね?」


 円に図星を指されたのか三千代は、少し慌てながらも反論した。


 「でっ、でもあの子が死亡するのはもう少し先のはずです。だから、今連れて行くのは間違っています」


 「ふふっ、そんなにむきにならにでちょうだい。確かに彼女があちらに行くのはもう少し先よ。それまでは、様子を見ましょう」


 円のその言葉にほっとした三千代はせっかくの機会なので自分の疑問をぶつけることにした。


 「先輩は、彼女の記憶がない原因は分りますか?」


 「さぁ? 調べてみれば?」


 円は、三千代の疑問に答えてはくれなかった。それどころか、からかいを含んだ答えに三千代は内心、腹を立てながらも再度質問をする。


 「円先輩でも、分らないんですか?」


 「あら、嫌味?」


 「そう聞こえるならそうだと思います。で?」


 「あら、かわいくない。…………そうね。知っているわ。あまりにも昔のことだから忘れる所だったけど。三千代、あなたも知っているはずよ?」


 円のどこか意味深な言葉に怪訝になりつつも三千代は自問した。


 「知っている? あたしが?」


 三千代が真剣に考え始めたのを見て、円は唐突に切り出す。


 「せっかくだから、試験をしましょうか?」


 「試験!?」


 三千代は、円の突然の言葉にただ口をあんぐりと空けて間抜けな顔を見せるしかなかった。


 (あら、おもしろい顔)


 「昇級試験よ。彼女が、あちらに行くことになるまでが試験期間。それまでに答えを見つけなさい」


 「…………本気ですか?」


 「本気よ。これは課長からの命令でもあるの。頑張って」


 円は、そう言うと明日香が出て行ったのと同じドアを開いた。しかし、そのドアの先はサークル棟の廊下ではなく、鬱葱と木が茂った森だった。そう、明日香が迷いこんだあの森だ。


 「そうね、一つだけヒントをあげるわ。彼女の本とあなたの本に共通点があるかもね。じゃあね」


 円は、それだけを言い残すと立ち去った。


 「あの子の本とあたしの本の共通点か。…………調べるしかないか」


 三千代は、そう決めるとドアを開いた。三千代の開いたドアは、あの館の書庫へと続いている。

 課長からの命に腹をくくった三千代は、自分に与えられた課題に取り組むべく館に戻ることにしたのだった。

 

今回はけっこうすんなり書けました。

そして、作っていたホームページも作成完了しました。

素人作なのでまだまだ改良しなければ・・・。

頑張った、自分。

この調子で次回更新も頑張らねば・・・。

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