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第5話:謝罪

 「あれから、3日。別に変化は無いし、いつもと同じ。あたしは、死んでなんかない!」


 明日香は、サークル部屋の椅子に座りぶつぶつと独り言を言っていた。コンコン。ドアをノックする音が聞こえ、ドアを見ると有希子入ってきた。


 「おまたせ!!」


 「遅かったね」


 「実行委員会が長くて。あれ? 悟は?」


 有希子は、荷物を置くと部屋の中をグルリと見渡した。そんな有希子を見て明日香は不思議そうな顔をしながら言った。


 「来てないよ。てっきり有希子と一緒だと」


 明日香の言葉を聞くと、有希子は思い切りを眉間にしわをよせつぶやいた。


 「ゲッ、逃げたな」


 「逃げた?」


 「ちょっとやっかいなことがね……」


 明日香は、そんな有希子の様子を見て頭の中にさらに疑問符があふれ出たようだ。


 「有希子?」


 首を傾げる明日香を見ながら、有希子は大きなため息を漏らした。


 「はーーーーーーーーーーーーーーーっ」


 有希子は、体中の酸素を出し切り、机に突っ伏した。そして覚悟を決めたのか、意を決し明日香を見上げ、話始めた。


 「委員会の前に、田中君と小林さんが来たの。それで……あたし達の手伝いは出来ないって。これは一年の総意だからって。だから、スタッフも役者もそれに合わせた脚本も駄目に。つまり、企画自体がおじゃん。だから、話し合いをしようと思ってたのに……、悟の奴…………つーかぶっ飛ばす」


 明日香は、有希子の話を聞き何故か雷に打たれたような顔をしていたが、有希子は下を向いていたため気付かなかった。二人、別々の事を考え込んでいた時、有希子の携帯が鳴った。


 「あっ、悟じゃん。ごめん、ちょっといい?」


 有希子は、席を立ち、携帯に出るため部屋の外へと出た。この部室は電波の通りが良くないのだ。


 「うん。…………ごめんね」


 明日香は、何かを思い出したように一人謝った。その小さな謝罪に有希子は気付くことは無かった。 有希子は、部屋のドアを閉め念の為にサークル棟の出口まで向かい明日香に聞こえないことを確認し話し始めた。


 「うん。一応話した。けど詳しくは言ってない」


 「明日香には言うなよ」


 「もちろん!!だって聞いたら絶対自分のせいだって気にするし。あっ、田中君達に口止めしておいてよ」


 「ああ、もう言った。俺これから高校の時の知り合いに当たってくるよ。スタッフは無理でも劇部の奴らなら役者やってくれるのいるだろう」


 「あたしも、学外の知り合いでスタッフやれそうな子探す」


 「だから今日の集まりなしってことで」


 「うん。じゃあ、明日ね」


 有希子は、携帯を切るともう一度ため息をついた。そして自分の頬を二、三度叩くといつも通りの笑顔を作り部屋へと戻った。


 「悟、何だって?」


 「新しい企画考えるって。だから、話し合いは明日に持ち越し」


 「そっか。じゃあこれからどうする?」


 「あたしは、委員会に事情話して少し待ってもらえるようにする。で、そのままバイト」


 「あたしは、レポートを書くからもう少し残る」


 「分った。でもあんまり無理しないでね」


 「もちろん。じゃあね」


 「うん。バイバイ」


 有希子は、自分の荷物を手にとり足早に去っていった。よほど慌てているのか、いつもなら気付くであるだろう明日香の異変には気付かない。そんな、有希子の後ろ姿に明日香はささやいた。


 「二人ともごめんね」

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