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第2話:タイムスリップ

 明日香は、館の扉を勢いよく開け放つと、この館から離れたいという一心で森へと走り出した。そして館の光が見えないところまで走ると立ち止まった。


 (何なの。変な人…………。いったいここはどこなの?帰りたい、帰りたいよ!!)


 明日香は、涙ぐみながら周囲を見渡した。その時だった、館とは反対方向に霧が立ち込めているのが見えた。そしてその霧の先に光が一瞬見えたのだ。明日香は、その光の正体も分らないまま、ただここから離れたいが為にその光の先へと走った。


 そして、光の元へ近づき一瞬目がくらみまばたきをした瞬間、目の前には見慣れたドアが目の前にあった。そのドアを開けるとそこはいつもの大学のサークル棟の地下倉庫だった。


 「いつもの場所?…………さっきのは夢?」


 倉庫へと足を踏み入れ後ろを振り向くとそこにはいつもの階段があった。明日香はフラフラとした足取りで近くにあった椅子に座りこんだ。


 ドアの外からは、他のサークルの人間の声や蝉の鳴き声が聞こえている。


 (…………蝉?何で蝉の声が聞こえるのよ!!)


 「おかしい。ありえないよ。だって今は…………」


 「わっ!!」


 「きゃっ!!」


 「ははははは。びっくりした?」


 突然、後ろから声がかかり明日香は、椅子から飛び上がる程驚いた。その声の主を探して後方を振り返るとそこには、親友の有希子が立っていた。


 「はーーーーーーーっ。何だ、有希子か。もう、びっくりするじゃない」


 「ごめん、ごめん。ここまでびっくりするとは思わなかったからさ。ねぇ、悟?」


 「俺は一応止めたからな」


 「はぁ?おもしろがってやれやれって言ったのは悟でしょ?」


 明日香は、二人を軽くにらみつけると、椅子に座りなおした。


 「もう、どっちでもいいよ。二人とも座れば?」


 「うん、ごめんね」


 有希子はそう言うと明日香の隣の椅子へと座るなり正面に座った悟の足を叩いた。悟が椅子に座るなりテーブルの上に足を投げ出したからだ。


 「また、あんたは机に足乗せて。止めなさいっていつも言ってるでしょ!」


 「うるせぇな。毎度毎度、お前は俺の母親か!」


 「誰が母親よ。あんたが毎回同じことを言わすからでしょ?あたしは、図体ばかりがでかいお子様な男を子供に持った覚えはありません」


 「誰がお子様だよ!」


 「あら?その年にもなって行儀の悪さを注意される男をお子様と呼ばずしてどうするのよ!」


 座るなり口喧嘩を始めた二人は明日香の幼馴染の二人で有希子と悟と言う。二人とは小学生の頃からの友人だ。いつもだったら適当なところで二人を止めるのだが今の明日香はそんなことをしている余裕は無い。壁にあるカレンダーを見つめていた。


 「明日香?何ボケッとしてんだ?」


 悟は、何も言わない明日香を不信に思い、明日香の視線の先に手をかざしパタパタを振った。


 「明日香?おーーーーい、明日香ちゃん?」


 有希子は、反応の無い明日香にしびれを切らし耳元でパチンと手を大きく一回叩いた。


 「うわっ!びっくりした」


 「びっくりしたじゃないわよ。あんた、さっきから変よ?」


 「どうしたんだよ。魂ぬけてんのかと思ったぞ」


 「魂!?」


 明日香は、悟の言葉に過剰に反応すると黙りこんだ。


 「急にでかい声だすな。おまえ、暑さにやられたんじゃないのか?」


 「ああ、暑気あたりかしらね。次の講義代返してあげるから少し休んでなさい」


 「大丈夫」


 「有希子の言うこと聞いとけ。お前、あんま丈夫じゃないんだからさ」


 そう言うと悟は、明日香の頭をポンポンと優しく叩いた。


 「それは、子供の頃の話でしょ」


 「いいから、休んでろ。行こうぜ、有希子」


 「じゃあ、行ってくるね。講義の後は学祭の打ち合わせだから待ってて」


 二人は、そう言い残すと荷物を取り倉庫から出て行った。


 「いってらっしゃい」


 明日香の淋しげな声が倉庫に響いた。パタンと扉が閉まり二人が出て行くのを確認すると明日香は立ち上がり、壁にかけられたカレンダーとポケットから携帯電話を取り出すと画面に映る日にちを確認した。


 「おかしい。変だよ。何であたしはここにいるの?ううん、それよりおかしいのは」


 画面に映った日にちは、七月一日。


 「何で??今日は十一月一日だったはず。でも、さっきの二人のやり取りは…………。落ちつかないと。朝からの行動を思いだそう。確か、あたしは有希子からの電話で起きたのよ……」


 「もしもし、明日香?ごめんね、朝早く」


 「ううん、平気。どうしたの?」


 明日香は、布団の中でごそごそ動きながら有希子からの電話に出た。


 「それがさ、悟のやつ、編集がまだ終わらないらしいのよ」


 有希子のその言葉に驚いた明日香は、布団から跳ね起きた。


 「だって、今日だよ学祭。どうするの?」


 「とりあえず、あとはエンドロールの部分の編集だけだって言うから、手伝って来る」


 「じゃあ、あたしも行くよ」


 明日香は、着替えをタンスから出しながら答えた。


 (何やってるのよ、悟はー)


 「じゃあ、あたしも行くよ」


 「ううん、明日香は悪いけど先に大学に行って、会場のチェックをお願いしていい?後はラストのエンドロールだけだっていうから」


 「…………うん。先に行ってる」


 「お願いね。じゃあ」


 有希子はそう言うなり通話を切ってしまい、ツーツーという音が淋しく残った。その後は、急いで準備をしてそれから……。そう、近道をしようと思った明日香は、いつもの近所の公園を通り抜けようとしたのだ。


 「そして?…………あれ?あたし、それからどうしたんだっけ?」


 「それから、あんたは館に来たんだよ」


 その時、明日香の後方から、見知らぬ少女の声が響いた。


 

やっと、話の最初に到達した感じです。

以前書いたものを更に手を加えて書くのは案外難しい。

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