初登校
俺は、今年から高校生だった。
学校へ行く途中、他の生徒や歩き行く人とすれ違う度、頭の中を不安が過ぎる。
しかし、俺の体格から顔つきまで、きわめて女に似てる為、気づく者は一人として居なかった。
・・そもそも、気づかれちゃシャレになんないんだけどさ。
少し歩くと、門の前に、一人のおばあさんに会った。どうやら、困って居る様だった。
「どうかしたんですか?」
俺は、優しく笑いかける。
「娘が、お弁当を忘れて行ってね・・。」
あまりにも普通な理由だ。それも、初日から弁当を忘れるとはな。
「娘さんの、お名前を聞いても良いですか?届けておきますよ!」
「斉藤 芽衣と言います。どうぞ、宜しくお願いします。」
走り出そうとした俺を、おばあさんは引き止めた。
「あなた、お名前は?」
「れ・・っ、雨宮 花音です!」
一瞬、漣 と云いかけてしまって、冷や汗をかく。
「花音さんですか、近々お礼させていただきます。」
俺は、“いえいえ”と云って、校舎へ走って行った。
自分のなかでも、良いスタートだと思った。
確か、斉藤 芽衣って云ったよなぁ・・?
歩きながら、名簿に目を通し、斉藤 芽衣に名前を確認する。
-----------------ドンッ。
「きゃっ、ごめんなさい。ごめんなさい。」
「いや、だいじょう・・・ぶ。」
目の前に居たのは、一人の女の子。紅茶色の髪に青色の瞳。
恐らく、カラーコンタクトをしているのだろう。
「あ、あの。おばあちゃん。お弁当ー!」
テンパって居る、彼女に、俺は冷静に話す。
「もしかして、斉藤 芽衣ちゃん!?」
彼女は、ぼんやりと口を開けている。
「何で、私の名前知ってるの?あー!何で、お弁当持ってるの?」
ますますテンパってしまった様だ。どうやって説得させようか・・。
「門の前で、貴方のおばあさんに会ったの。だから、探してたのっ!」
「あら、そうだったの・・ありがと♪」
と云って、俺にウインクした。
ウインクは禁止だって・・っ。
俺、ちゃんと女になれてるよな・・?
「あ、芽衣って呼んでっ!1年A組だよね?行こ!」
「あ、うん。」
・・・この顔つきといい、さっきのお婆さんといい。何か見覚えがある。
ま、気のせいか・・。
はい。第3話まできました。
コメントは、特に無いですね・・。
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