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幕間1

幕間 ――マーテリシア


わたしは、瓦礫の中に立つその子を見ていた。


泣き叫ぶでもなく、誰かの名を呼ぶでもない。

崩れ落ちた世界の中心で、ただ呆然と立ち尽くし、それでも倒れない。


ああ、なんて――

健気なのだろう。


生き延びてしまったことを、恥じるように。

何も守れなかった自分を、許さないと決めて。

その小さな身体に、世界の終わりすべてを背負い込んで。


逃げてもよかった。

忘れてしまってもよかった。

誰かのせいにして、折れてしまってもよかった。


それでも、この子はそうしなかった。


「復讐」


その言葉を、まだ声にすらしていないのに、

胸の奥で静かに燃やしているのがわかる。


――かわいい。


胸が、少しだけ温かくなる。

この感情を、人間は何と呼ぶのだったか。


愛?

庇護?

それとも期待?


どれでもいい。

わたしにとって重要なのは、結果だけ。


この子は、歩き出す。

壊れた世界を踏みしめて、それでも前へ進む。


わたしが与えた試練を、嘆くのではなく、意味を見出すために。


どれほど失えば、どこまで堕ちれば、折れてしまうのか。


それを、知りたい。


そしていつか――

すべてを捨てきったその先で。


この子が、どんな目でわたしを見るのか。


恐怖か。

憎悪か。

それとも、崇拝か。


想像するだけで、口元が緩む。


大丈夫。

まだ、時間はたっぷりある。


この世界は、最初から、この子のために用意したのだとすら思える。


さあ、行きなさい。

アリア。


あなたの復讐は、

わたしが、最後まで見届けてあげる。

読んでくださってありがとうございます。

奇数話のあとは幕間としてマーテリシア視点の短い話が入ります。

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