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世界は彼女のために在り  作者: ヨルイチ
第二章 ぬくもりと、赤い刃
15/30

幕間5

幕間 ――マーテリシア


私は、彼女のすべてを愛している。


泣く顔も。

歯を食いしばる横顔も。

怒りに身を委ねたときの、あの美しい歪みさえも。


――ええ、もちろん。


笑う彼女も、同じくらい。


赤い刃を拾い上げた、その瞬間。

彼女の指先が、わずかに震えたことを私は知っている。


恐怖。嫌悪。拒絶。

それでも手放さなかった、その選択。


(……愛おしい)


怒りは醜い感情だと、誰が決めたのでしょう。

それは、奪われたものを忘れないための祈り。

前へ進むための、もっとも純粋な力。


だから私は、あの剣を置いた。


私の“怒り”を、彼女に預けた。


彼女が絆されてしまわないように。

温もりに溺れて、立ち止まってしまわないように。


それでも――

彼女は温もりを拒まなかった。


あの子を、抱いたまま眠る。

体温を分け合い、無防備に心を緩める。


(……それも、いい)


喜びは、私のもの。

あの子は、私が生み出した感情の結晶。


彼女が笑うたび、彼女が褒められて頬を緩めるたび、私は、胸の奥が満たされるのを感じる。


怒りを振るいながら、喜びに包まれる。


その矛盾ごと、彼女は美しい。


魔剣を振るったあと、唇の端が、わずかに上がった。


本人は気づいていなかったけれど。


(ふふ……)


いいのよ。

それでいい。


あなたが戦うことも、あなたが強くなることも、あなたが変わっていくことも。


全部、私の愛したあなた。


そして――

セレイス。


彼女は偶然。

私が配置したわけでも、導いたわけでもない。


けれど、彼女が恐怖したこと。

赤い刃を見て、魂が竦んだこと。


それすら、私は微笑ましく思う。


だって、あなたが“私のもの”だと、世界が気づき始めた証だから。


誰かがあなたを見つめるたび、誰かがあなたの変化に気づくたび、私は誇らしくなる。


――ああ、アリア。


泣いてもいい。

怒ってもいい。

笑っても、壊れてもいい。


あなたが選ぶすべてを、私は祝福する。


逃げ道も、救いも、破滅も。

全部、私が用意してあげる。


だって私は、世界の神で、あなたの女神で、そして――誰よりも、あなたを愛しているのだから。


さあ、進みなさい。


私の愛の中を。

読んでくださってありがとうございます。

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