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世界は彼女のために在り  作者: ヨルイチ
第一章 すべてを失った、その場所で
1/11

プロローグ

人外百合『世界は彼女のために在り』


暗く鬱々とした展開の百合です。

上位存在である女神の掌の上で翻弄される女騎士の物語。

プロローグ



――女神は、ただ眺めている


 

私は、創った。


それだけだ。

誰かに命じられたわけでも、救済を求められたわけでもない。

理由は単純で、退屈だったから。


無は静かすぎる。

変化も、揺らぎも、感情もない。

永遠とは、思考を摩耗させるだけの空白だ。


だから私は、指先で虚無を掬い上げ、形を与えた。


大地を敷き、空を広げ、光を走らせる。

闇を残したのは、対比がなければ美しくないから。

時間を流し、始まりと終わりを定義した。


壊れる余地を残すことも、忘れなかった。

完全なものは、つまらない。


次に、生命を置いた。

増え、減り、失われ、また生まれる存在。

痛みを覚え、恐れ、喜び、絶望する――人間と名付けた、その存在。


彼らは実に忙しない。

短い命の中で、意味を探し続ける。

理解できない運命に怒り、都合のいい神を夢見る。


私はそれを、高みから眺めていた。


祈りは届かない。

だが、聞こえないふりをしているだけだ。

気が向けば、応えることもある。


嵐を起こしたこともある。

豊穣を与えたこともある。

疫病を流したことも、戦争を長引かせたこともあった。


善悪で区別したことは、一度もない。

変化が生まれるかどうか、それだけが基準だ。


人間は、どんな状況でも意味を見出そうとする。

その足掻きは、見ていて飽きない。


――そんな中で。


私は、一人の少女に目を留めた。


名は、アリア。

彼女は生まれた時から、輝いて見えた。

こういう人間は、得てして英雄に育つ。


私は、少しだけ微笑んだ。


だからこそ、壊しがいがある。

――いいえ、誤解しないで。壊すこと自体が目的なのではない。


変化だ。


この少女が、どこまで変わるのか。

どこまで耐え、どこで揺らぐのか。

それを、私は知りたくなった。


小さな出来事を配置してみた。

ほんのささやかな選択。

少しの不運。

避けようのない理不尽。


アリアは、悩み、迷い、それでも進んだ。


ああ。

やはり、目を離せない。


私は理解している。

人間の尺度で見れば、私は残酷だろう。

慈悲も救済も、彼らの望む形では与えない。


だが、それが何だというのだろう。


世界は、私の掌の上にある。

人間は、私が配置した駒でしかない。


それでも――

私は、アリアを気に入っている。


彼女が笑う時も。彼女が俯く時も。

彼女が必死に何かを守ろうとする時も。

彼女に心を奪われていると言ってもいいかもしれない。

ただ、彼女から目が離せない。


だから私は、今日も眺めている。


彼女の日常を。彼女の選択を。

彼女がまだ知らない未来を。


これから何が起きるのか。

それを、彼女は知らない。知る必要もない。


ただ、生きなさい。もがきなさい。選び続けなさい。


その姿こそが、私にとっての――

何よりも甘美な物語なのだから。



私は女神、マーテリシア。

この世界の創造主であり、そして、あなたを見届ける者。

 

読んでくださってありがとうございます。

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