ママ、スーパーで保護される
夕方。
「今夜はそらの好きな唐揚げにしよう!」と、
日向ママは鼻歌まじりでスーパーへ向かっていた。
しかし——
このスーパーは、ママにとって“危険地帯”である。
理由はただひとつ。
毎回、ほぼ100%の確率で迷子扱いされる。
今日こそは大丈夫、と気合いを入れて入店すると、
早速パートのおばちゃん達の視線が集中した。
「あらっ……かわいい子がひとりで……」
「え、危なくない? 親御さんどこ?」
「保護したほうがよくない?」
「しなくていいです!!!」
ママはカゴを手に全力で逃げるように青果コーナーへ。
しかし油断はできない。
キャベツを手に取った瞬間、背後からそっと声がした。
「ねえねえ、迷子なの?」
振り返ると、小学校低学年くらいの男の子が本気で心配そうにママを見ていた。
「迷子じゃありません。あなたより年上です」
「えっ!? ほんと???」
「ほんとよ!!」
男の子は首をかしげながら、店内放送のある方向へ走っていった。
「迷子コーナーに行かないでぇぇぇぇ!!!!!」
慌てて追いかけるママだが——
遅かった。
館内放送が流れる。
『迷子のお知らせです。
お名前は……えー……わからない小さな女の子で……
身長は百三十センチほど……
とても可愛いお顔をしていまして……』
「誰よその“可愛い小さな女の子”って!?!? わたしよね!? 絶対わたしよね!?」
周囲の客がママを見て「え、あの子じゃない?」とざわざわ。
ママは震える声で叫ぶ。
「わたしは迷子じゃありません!!!」
その瞬間、優しい店員さんが近づいてきた。
「大丈夫よ、一緒にお母さん探そうね」
「探さなくていい!! わたしが“お母さん”!!」
「はいはい、怖くないからね〜」
話が通じない。
ママは強制的に手を握られ、
迷子センターの隣にあるベンチへ連れて行かれた。
「ちっ……違うのに……!!」
ママは涙目で抗議する。
そこへ、買い物帰りの近所の“ママーズ”が通りかかる。
「まあ〜〜〜また保護されてるの!?」
「日向ちゃんほんと可愛いわねぇ」
「今度お菓子持ってくる?」
「いらないぃぃぃ!! 大人扱いしてぇぇぇ!!」
店員は依然として微笑んだままだ。
「大丈夫、すぐお母さん見つかるからね」
「だからわたしが母なの!!」
そこへ、そらが現れた。
「母さん。……またか」
そらは事情を聞きもしないで店員に学生証を見せる。
「この人、俺の母です。しょっちゅう保護されるんで」
「本当に……!?!?」
店員が絶句した瞬間、放送が切れた。
ママは床にしゃがみこみ、うなだれた。
「なんでわたし、買い物するだけで事件になんの……」
そらは呆れたように言う。
「スーパーって“子どもしか来ない時間帯”とかあるから、母さんは完全に該当するんだよ」
「該当したくない!!」
そらはママの袋を持ってくれながら言う。
「でもまぁ……迷子扱いされても、俺は母さんを迎えに行けるし。
困ったら呼べよ」
「……そらぁ……優しいけど、それだと迷子みたいじゃない……?」
「事実だろ」
「ひどい!!」
泣きながら笑うママの手をそらが引いて、
二人は夕焼けの中を帰っていく。
今日の唐揚げはいつもよりちょっと涙の味がするかもしれない。
いや、ママの涙じゃなくて“笑いすぎの涙”かもしれない。
“合法ロリお母さん”の奮闘は、
また次の事件へ続くのであった。




