職場でのハプニング☆彡
朝。
そらを送り出してから、日向ママはお仕事用の落ち着いた服に着替えた。
小柄な身体にシンプルなスーツジャケットを羽織り、髪をまとめれば立派な社会人。
……のはずなのに。
「今日こそ、絶対に子ども扱いされない!」
と気合を入れて家を出た。
ママの職場は地元の事務センター。
電話対応と書類整理が主な仕事だが、職員はみんな優しく、働きやすい。
ただし——
ママを見ると毎回「えっ」と固まるという欠点付き。
今日は、新人さんが入る日だった。
その影響か、いつも以上に“視線”が刺さる。
「……あの、日向さんよね?」
デスクで待っていると、部長が恐る恐る声をかけてきた。
「はい。おはようございます」
「その……今日は……付き添いの……お母さんは?」
「わたしが“お母さん”ですよ!」
部長の目が泳ぐ。
(またこれだ……)
ママは頭を抱えたくなる気持ちをぐっと押し込み、仕事を始めようと椅子に座った。
すると、職場の奥でざわざわ。
「新人さん来たって」
「今日の子、めっちゃ礼儀正しいらしいよ」
「え、どこどこ?」
ママも何気なく視線を向けると、スーツ姿の若い女性が丁寧に頭を下げていた。
「本日からお世話になります、森川優奈です!」
明るい声に職場がほわっと和む。
その瞬間。
「あの……」
新人の森川さんが、ママの前で立ち止まった。
「もしかして……私の“後輩”ですか?」
ママは即座に否定する。
「違います。あなたの“先輩”です!」
「え、えっ!? ご、ごめんなさい! すごく落ち着いてて……でも見た目が……えっと…………」
「言いづらいことは飲み込みなさい!」
森川さんはしどろもどろになりながら、
「すみません、年下の方だと思いこんで……」と恐縮しまくる。
そこへ部長が割って入った。
「森川さん、この方が“本当の先輩”ね。
今日あなたの仕事を教えるのは、日向さんです」
「えっ!? えっ!? この……ちいっ……いやっ……あの……!」
「言い方!!」
ママは即座にツッコむが、部長は少し困惑顔で続ける。
「でも……実は……さっき誰もが『日向さんは新人だ』と思ってて……」
「やめてぇぇぇ!!」
職場が笑いに包まれ、森川さんは真っ赤になりながらペコペコ頭を下げ続けた。
「本当にすみません!!」
ママが深くため息をつき、資料を手に立ち上がる。
「じゃあ、森川さん。今日から一緒に頑張りましょう。
仕事の流れはわたしが全部教えるので、ついてきてください」
「は、はいっ!!」
……しかし。
その後の一日中、森川さんはママを見るたびに「かわいい……」とつぶやき、
メモを取るときも何度も二度見した。
「本当に……先輩なんですよね……?」
「見た目で判断しないこと!」
お昼休みには他の先輩社員たちまで寄ってきて、
「ちっちゃい先輩、教え方うまいじゃん」
「今日も小学生が紛れてるのかと思ったよ〜」
「仕事場で“紛れた”扱いしないでぇぇ!!」
日向ママは机に突っ伏したくなる気持ちを押し殺し、
必死に大人らしく振る舞い続ける。
そんな帰り道。
「……なんかすごく疲れた……」
とママがため息をついて歩いていると、そらが迎えに来ていた。
「母さん、今日も子ども扱いされた?」
「うっ……まあ……」
「見た目はどう見ても子どもだからなぁ」
「なぜそこで誤魔化しゼロの正論を出すの!?」
そらは淡々と言いながら、ママの荷物を持ってくれた。
「でもまあ、母さんが先輩なのはちゃんと伝わったんでしょ?」
「……たぶん……うん。
森川さん、すごい良い子だったし」
そらは小さく笑う。
「じゃあいいじゃん。今日も無事、大人として仕事できたんだし」
「うっ……励ましてるの? それ?」
「事実を言っただけ」
ママは口をとがらせたが、心の中はちょっとだけ温かい。
今日もまた、
“合法ロリお母さん”は、見た目の壁に負けず頑張るのであった。




