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刺突

「騒ぎになる前に廊下の男を隠さなきゃな」

ベッドの角度を調整するリモコンのコードで右腕を締め上げ、簡易的に止血をしながら2型が言う。

「そうだね、私は何にも手伝えないから頑張ってくれ」

ベッドの有線リモコンを取られて不服そうな1型は、他人事のように返した。

直後に病室のドアをドンっと叩く音。

2型は立ち上がり、急いでコードを結んだ。

ドアの外からは、フーッフーッと荒い呼吸が聞こえる。

手摺りを掴み、ドアノブを掴み、大男はドアを隔ててゆっくりと立ち上がった。

左手だけで応戦するのは難しいだろう。

ドアが開いた瞬間にこちらから仕掛けるしかないか。

ドアが少し開き、大男と目が合う。

向こうより一瞬早くこちらから仕掛けようとした瞬間、壊れたハサミが大男の首に刺さった。

状況が理解出来ない。

何かが接近しているのはわかる。

タタタタッと早い足音、そして飛び蹴りで刺さったハサミを更に押し込んだ。

気道が塞がり、もがきながら病室に倒れ込む大男。

「間に合ったか」

息を整えながら、大男にハサミを刺した人物が言う。

刺さったハサミを引き抜いて、苦しむ大男の首に腕を回すと、体重を乗せて首を捻る。

ゴギッと嫌な音が響き、大男は動かなくなった。

「お前、院長のモルモットじゃないのか?」

入院服を真っ赤に染め上げたユズに、2型が言う。

「モルモットじゃなくて娘だ」

ユズはそう返すと、2型をまじまじと見回す。

「な、なんだよ」

傷口を心臓より高い位置に保持した2型はこちらを警戒しながら言う。

「俺が言う事でも無いが、2人とも戦い方が捨て身だな。もっと殺し方を工夫しないと」

「なんだと!?」

「実際にそうなっている。1型は両腕が使えず、2型は左手のみ。短期決戦しか考えてないだろう?」

「それは…」

口籠る2型。ベッドの上の1型も、流石にバツが悪そうに視線を逸らした。

「まぁ、説教しに来たわけじゃないんだ。ここにコイツを仕向けた組織があるとしたら、それはとても悪い状況だ。2人ともわかるだろ?」

沢井医院。ここは裏の世界の人間も診てくれる数少ない病院だ。どんな患者でも断らない代わりに、この病院の敷地内での揉め事は御法度である。

過去に駐車場で乱闘騒ぎを起こした組織は、両者共壊滅させられた。

それは沢井医院が差し向けたのではなく、裏の組織全体で、乱闘騒ぎを起こした組織を抹殺したのだ。

そういった自浄作用があって、絶妙なバランスを保っている。

「大丈夫ですか!?」

こういった事に慣れた様子の若い女性看護師が、季節に見合わない厚着で部屋に駆け込んできた。

「ユズちゃん!?」

血まみれのユズを見て、足下に倒れた大男を見る。

「これ、ユズちゃんが?」

「いや、この男がやった。俺がやったのは最期だけ」

「敷地内でのトラブルは面倒なのよね…」

厚い上着の中からサイレンサー付きの拳銃を取り出すと、大男の頭に2発撃ち込んだ。

躊躇う様子も無いスムーズな動作、そして微塵も変わらない表情。

頭から赤黒い血だまりが広がっていく。

「ひとまず3人ともこの部屋に居てね?私は院長と話して来るから。念の為ユズちゃんは2人の護衛を頼むわね」

そう言ってユズに持っていた拳銃を渡す。

「ナイフも無い?」

「欲張りねぇ」

困ったように言いながら、ダガーナイフを脇腹辺りから抜いて渡す。

「普通のナイフは無い?」

「それしか無いわよ、私は近接戦はしない派なの。じゃあよろしく」

看護師の足音が遠くなっていく。

ドアを跨ぐように倒れている大男を、部屋の中に引き摺り込む。そしてドアを閉めてようやく気が緩んだ。

「ほら、止血し直すから見せろ」

「あ、ああ」

ベッドの脇の椅子に座らせると、雑に巻かれたコードを解き改めて止血し直す。

「これで良し。さて、この病院の中で襲撃が起きたのは結構まずいね」

「そうね。私は当分仕事が出来ないし、今再び来られるとまずいわね」

「とりあえず指示待ちだな。誰か来たら俺が対処するから、怪我人二人組は今のうちに休んでおきな」

意地悪に笑って言うと、2型は何か言いたそうだった。

1型はありがとうと言うと、すんなり目を閉じて休んだ。


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