エピローグ
□エピローグ□
ここから見上げる空は瑠璃色で、空気もまだ冷たかった。
――日が上る。
シェフィールドは白い息を吐いて、マントをより強く身に巻き付けた。
目の前の墓標には何も刻まれていなかった。彼を表現する言葉なんて誰にも思いつかなかったからだ。
代わりに、一本のぼろぼろの剣が墓の前に寝かせてあった.
「モレリ……」
墓は小高い丘の上にあった。墓標の向こうに風車が回っているのが見える。
邪悪意識との戦いは終わった。もう、人々は魔物を恐れずに暮らしていける。
世界は目覚めようとしていた。
シェフィールドは手袋に包まれた自分の手を見下ろした。
……あまりに多くの血で汚れた手。
触れることの許される物が残っているのだろうか。
だけど。
モレリがその身をかけて救った、この世界。
立ち止まるな。
モレリの低い声が聞こえた気がした。
――そうだ。
涙なんて出なかった。代わりにシェフィールドは微笑んだ。
――私は歩き続けよう。立ち止まりなんかしない。
これから忙しくなるだろう。
復興のための人手はいくらあっても足りない。
シェフィールドは墓に背を向けた。
そこで、はっとして足を止めた。
……モレリの行動はいつも人の意表をついた。そして、シェフィールドはモレリの埋葬に立ち会わなかった。
シェフィールドはゆっくりと振り返る。
「……モレリ……」
言葉に出して、尋ねずにはいられない。
「おまえは本当にその墓の下で眠っているのか?」
……それとも?
モレリの墓は空だったりしないのか?
頭上で樹々がざわざわと音をたてた。
知る方法はなかった。
モレリが笑うかのように、モレリの墓も笑っているように見えた。
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