濃厚旅行 おうちに帰るんだから! 編
社内を見学した後は、ランチです♪ なんとフレンチです!!
事前にPさんから「近くの中華と、ちょっと遠くのフレンチ、どちらがいいですか?」と聞かれていました。 私は長距離を歩けないので、中華のほうが都合がいい。でもせっかくなら、フレンチを頂きたい! 後で歩けなくなっても、かまわん! フレンチのためなら、足が痛くなってもかまわん!
覚悟して歩き始めます。お昼時なので、ビル街にたくさんの人が溢れかえっている。この人たちが、日本を動かしているんだなぁ~。すごいなぁ~。それにPさんだって、日本中に文化を発信している方なんだよなぁ~。気軽に付き合って頂いてるけど、すごい人なんだよなぁ~。前を歩くPさんを、眺めます。チョコチョコ歩く姿が、可愛らしい。こんなに可愛いのに、お仕事バリバリなんだよなぁ~。
Pさん:マチさん、あのビルを見てください!
Pさんは小さな可愛い手で、前方の大きなビルを指差します。
Pさん:あのグレーの巨大なビル、コンドームの会社の本社ビルです!
可愛いPさんの口から、コンドームなんてワードが飛び出した!!
私:えっっっ!? コンドーム??
P:そうです! 薄くて小さなコンドームを売ってできた、大きな本社ビル!
私:あの薄くて小さなコンドームの売上で!?
P:そう! 薄くて小さな!! でもビルは大きくて厚い!
他にも大企業の本社ビルはいくつでもあるでしょうに、なぜそのチョイス!? 今までPさんとの雑談に下ネタは一度もなかったので、戸惑います。この話、どこまで広げたらいいの!? ドギマギしていると、お店に到着しました。良かった!
ビルの1階にあるフレンチレストランです。フレンチなので山の上ホテルみたいな豪華な雰囲気を想像して勝手にキンチョーしていましたが、カジュアルな感じ。カフェみたい。高い天井にお客さんの声が柔らかく響いています。木製の四角テーブルがゆったりと置かれ、座り心地の良いソファがあります。お店のスタッフはそろいのTシャツにエプロン。良かった! あんまりキンチョーしなくていい感じ!
すでに編集長さまと、副編集長さまが席に座っていらっしゃいます。「こっちだよ~♪」と手を振ってくれる。お二人とも今日が初対面ですけれど、気さくな方みたい♪
席に座って、ランチを注文します。何を頼むか迷っていたら、皆さんてんでバラバラにお好きなセットを注文してる♪ そっか♪ 好きなのを注文していいんだ♪ じゃあ、お魚のランチをお願いしましゅ♪(← まだキンチョーしている)
おしぼりで手を拭こうとすると、Pさんがバッグから消毒ジェルを取り出しました。ご自分の手に塗って消毒したあと、私にもジェルを塗ってくださる。意識、高いなぁ!!
すぐにお料理が出てきました。大きなお皿にたっぷりソースが注がれていて、その上に新鮮なサワラが湯気を上げています。付け合わせのポテトはホクホク、ルッコラも柔らかくて美味しい♪ パンはモチモチしていて、食べたことのないパンです。噛むたびに味が広がる。新鮮な野菜サラダもたくさん野菜が入っているし、ドレッシングも美味しいです。…………じつはキンチョーしていて、その時に料理の味は、ぜんぜんわかりませんでした。今思い出して「あれは、美味しかったなぁ♪」と反芻しています。
それにしても……皆さんお美しい……。内側から輝いている感じ。重要なお仕事をしている自信でしょうか。そしてそれぞれ、個性的。Pさんは可愛らしいし、編集長様は透明感がハンパない! 副編集長様はお菓子みたいな甘くて美味しそうな雰囲気。……副編集長様、なめてもイイですか? 美味しそう♪www
私がお目にかかることができるのは、奇跡です! 生まれも育ちも違う私が、皆様にお会いできるなんて光栄です! この瞬間を大事にしよう! せっかくだから、取材をしよう!
私:編集長さまはすごくお美しいですけれど整形とか、した??
いま思えば、最低な質問やな……(涙)。初対面でする質問じゃない! しかもタメ口!
編集長さま:してないですよ! 雑誌のスタイリストさんなんかは美容の延長で気軽に整形を勧めてきますけど、私はしてないです!
そうなんですよ。見た目の美しさというより、内面から滲み出している感じだから、整形とかいう話じゃないんですよね……。どこが私と違うんだろう? 私が突拍子もない質問をする横で、副編集長様は穏やかにニコニコしています。本当に美味しそうな方だな……。一口でいいから、噛みついちゃダメかな? きっとバニラの甘い味がすると思う……。
その後はさすがにおとなしくしなきゃと気づき、ランチは和やかに…………和やかでしたが、中身は濃厚でした! みなさん、知識がすごいんです! そして人生も濃ゆい!! それぞれ濃ゆい! 私が経験したことのないことばかりだし、人脈だってすごい! フツーに芸能人とか知識人や文化人とのお付き合いが出てくる! お仕事柄の付き合いもあれば、ご近所付き合いだって! とにかくすごい! すごいのに、それがフツー! 私よりも、ネタ持ってんじゃん! そういうの、書けばイイじゃん! (← あまりのすごさに、逆ギレ) 小説に出てくるような華麗な生活! 夢のようなお話が、目の前で繰り広げられます! 生まれも育ちも違うっていうのは、こういうことかと実感。生きている環境がちがう。でも、いいです。私は有り余る妄想力で、楽しいお話を考えます! 妄想力なら、負けません♪
楽しい時間は、あっという間でした! 本当に、あっという間でした! こんな貴重な時間は二度とないと思いますけれど、楽しかったです! 私は田舎に帰って、今日の思い出を楽しく反芻して生きてゆきます! 一生の思い出ができました!
一人で東京を楽しむ勇気はないので、直行で滋賀へ帰ることにします。皆さんがご親切に、タクシーを止めて下さる。助かります。私一人だったら、タクシーを止めることはできなかったです。だって車が多いんだもん! どこに向かって手を上げたらいいか、わからないんだもん!
止めてもらったタクシーは、白い車体の個人タクシーでした。ピカピカに磨かれた車体と同じくらい、運転手さんのおつむがピカピカしています。60代くらいのメガネをかけた男性。優しい皆さんが運転手さんに「東京駅の八重洲口まで! その方は、新幹線にお乗りです!」と言ってくださる。ありがとうございます。どこへ行けばいいのか知らないので、助かります! 運転手さん、返事もしないでドアを閉める。怖っ! 駅につくまで、おとなしくしておこう……。窓から皆さんに手を振って、今生のお別れをします。ありがとうございます! 皆さんのことは、一生忘れません!
ふうぅ。旅が終わりました。富士山や美味しい食事、怪しいおじさんに騙されかけたし、豪華な山の上ホテル、プロポーズまでされて、小学館の雲の上の方々と会うことができた。濃厚な旅だったなぁ……。あとは、おうちに帰るだけ。大好きなおうちに、やっと帰れる! 旅行も楽しかったけど、おうちに帰るのが一番うれしい♪
感慨にふけりながら窓の外を見ていると、右手に緑の木立が続いています。ずっと石垣があって木々が立ち並んで、都会の真ん中にも緑があるんだ。タクシーはノロノロ進んでいましたが、渋滞で止まってしまいました。さすが都会。車が多いな。
運転手さん:いったいどうなってんだ!?
いきなりキレた! 怖いです!! ピカピカのおつむに、血管が浮いてる!!
運転手さん:こんなに車が進まないなんて、どうなってんだよ! お客さん、どう思います!?
私:ななな、なんでしょうね!? でもぜんぜん急いでナイから、ゆっくりどうぞ!
運:こりゃあ、宮様のお出かけか、大使の赴任ですよ!
私:宮様っっっ!? 大使っっっ!?
私の人生にけして出てこない、パワーワードが飛び出した!
運:宮さまが皇居からお出かけになるときは、道路を封鎖するんですよ! 大使が日本に赴任した時も、東京駅から皇居まで道路を封鎖して、馬車で皇居へ挨拶に行くんです!
私:馬車っっっ!? この時代に、馬車ですかっっっ!?
運:そうです! 馬車です! 馬車でぽっくりぽっくり、皇居へ挨拶に行くんですよ! おかげでこちらとら、大迷惑だ!
そっか! 緑の立ち並ぶ場所は、皇居だったんだ! どうりで緑が多いわけだ! めっちゃ歯切れのいい下町言葉で、運転手さんは話し続けます。怖い人かと思ってたけど、そうでもないみたい。
運:この時期に大使の赴任はないから、宮様だな! 宮様のお出かけですよ! ほらご覧なさい! 歩道にたくさん警察官がいるでしょう!?
私:めっちゃたくさんいますね! どの交差点にも、たくさん!!
運:あの人たちも、大変ですよ! 警備の命令が出たら、非番でも出なきゃなんない! 気の毒なこった!
私:ほえぇ! 日本の中心ともなると、渋滞の理由もすごい理由なんですねぇ~! ここが日本の中心だあぁ~!
運:あはは! お客さん、どこから来たんですか?
私:滋賀県です! 滋賀県で宮様渋滞なんてありませんから、光栄です! 旅の思い出に参加します!
運:あはははは! そうですか!?
私:急いでないから、ゆっくりお願いします♪
一気に和やかな雰囲気になります。運転手さんは怖くないってわかったし、最後に東京の街並みをゆっくり見ておこう♪
運:お客さんはそう言ってくれるけど、東京の人間はいつでも大急ぎだよ! それに冷たい! 淋しい人間ばっかりですよ!
コンビニの彼も、同じこと言ってたな。東京の人は、淋しいって。
運:もしお客さんが道で倒れてる人を見たら、どうします?
私:お声をかけてみて、意識が無ければ救急車を呼びますね。
運:そうでしょう! それが人の道ってもんだ! それなのに東京じゃ、知らん顔だよ! 誰も知らん顔でさ! なんだって言うんだ!
うっかり運転手さんの地雷を踏んだらしい……。 怖くないと思ったけど、やっぱり怖いです(涙)。
運:人の情けがあるのなら、行き倒れの人間を見過ごすわけにはいきませんよ! だから通報してやったのに、警察のヤツらが一番にするのは救助じゃなくて、この車に傷が付いてないかの見分ですよ! わたしが車ではねたんじゃないか、そればっかり気にしやがる! 親切心で通報したのに、いい迷惑ですよ!
私:親切で通報して疑われるのは、切ないですねぇ……。
運:そうなんですよ! だから誰もが知らん顔でさぁ! うっかり親切にして疑われたら、こっちの身が持たねぇや! 東京なんて、しょせん田舎モンの集まりですよ! 私だって東北の出だ! でもオツに澄まして知らん顔するのは、私にはできませんや!
ずっと昔は東北にお住まいだったのでしょうが、今はちゃきちゃきの江戸弁です。上京して苦労して、個人タクシーで事業主になるまで、並々ならぬご苦労があったのでしょう。さりげなく姿勢を変えて、助手席に掲示してある名前のプレートを盗み見します。お名前に「三」の字が付いているから、三男さんでしょう。東北で三男は食べてゆけないから、一人で上京したのかなぁ? 色々と、大変だっただろうなぁ……。今は下町におうちを建てて、家族と暮らしているのかなぁ?
運転手さんの人生に思いを馳せているうちに、東京駅が見えてきました。
運:ここが新幹線の乗り場に一番近い場所ですよ! どうぞお気をつけてお帰りください!
私:興味深いお話を、ありがとうございました! 勉強になりました!
二度とお話をすることもないでしょうけれど、会えて嬉しかったです♪ 良い思い出になりました♪ ヨチヨチ歩いて、構内に入ります。とりあえず、タバコが吸いたい! 喫煙所はどこだ?
さすが東京駅です。どこもかしこも土地の有効利用で、1センチたりとも無駄な土地がない。隠れてタバコを吸う場所なんてどこにもありません。喫煙可のカフェを見つけたので、嬉々として入ります。
私:ホットコーヒーを一つお願いします。喫煙室は、どこですか?
店員さん:そちらの奥になります♪ ところでお客様、お吸いになるのは電子タバコですか?
私:?? 紙巻きタバコです(なんでそんなこと訊くんだ?)
店員さん:申し訳ありません。電子タバコでしたらお席でお吸いいただけますが、紙巻きタバコですと喫煙室のさらに奥のブースでお願いします。スタンディングです。
ただでさえ肩身のせまい喫煙者ですが、さらなるヒエラルキーがあるらしい。昔ながらの紙巻きタバコは、座ることさえ許されないらしい……。立ったままタバコを吸ってブースから出て、やっと席に座ります。東京はコワイな。タバコ吸うのさえ、金がかかるぜ……。
席に座って帰りの新幹線の時刻を検索します。できるだけ乗り換えの少ない経路で帰りたい。多い回数だと4回。少ないのは2回。できれば2回で帰りたい。30分後に、乗り換え2回で帰れる新幹線がありました! まだ時間はあるけど、早めに行動しよう。できれば駅弁だって買いたい。旅行前に食べ物は片付けてきたから、冷蔵庫はカラっぽです。田舎だから帰り着く頃にお店は閉まってるから、ご飯を買って帰らないと。ヨチヨチ歩いて、みどりの窓口へ行きます。
東京、怖いですね(涙)。お客さんがいっぱいいて、行列ができていました! 滋賀ならすぐに買える切符が、買えない! 都会は、怖いです! ジリジリしながら順番を待って、やっと切符が買えたのは発車の7分前! 急がないと乗れなくなっちゃう! 窓口を出て、キョロキョロします。新幹線の乗り口はどこだ!? わかんない! 交番に飛び込みます!
私:新幹線の乗り口はどこですか!?
警察官:どの新幹線ですか?
私:どの新幹線って、どういうことですか!?
警察官:東北新幹線? 東海道新幹線?
えええっっっ!? 新幹線って、種類があるの!? どれだろ!? 私、どれに乗るんだ!?
私:えっと、えっと、京都に行くヤツ!!
警察官:それならここを出て左、角を曲がってまた左!
私:ありがとうございましゅ!
ダッシュで急ぎます! 走れ! 改札を抜けながら横目で見た時刻表で、ホームの番号を確認! 慌ててエスカレーターに飛び乗ったら、発車のベルが鳴り始めた!
ホームに出て、一番近い入口へ駆け寄ります! とにかく乗らなきゃ!!
ピピピピピ!!!!!!!!
駅員さんが警告の笛を吹き鳴らす! ごめんなさい! 急いでるんです! 走る私の背中に、鋭い笛の音が突き刺さります!
ピピピピピピピピピピ(だるまさんがころんだ)!!!!!!!!
反射的にホームで急停止する私。それにこれ以上無視したら、警備員さんからタックルされる!! 固まった私の目の前で、ドアが閉まりました。無情に離れてゆく新幹線。
私:うおおおおお!!!(逃がしたあああ!!)
吠える私の大声に、ビックリして振り向く人たち。ごめんなさい。怪しい者じゃないんです(← 十分怪しい)。
しばらく落ち込んでいましたが、気を取り直して次の新幹線を検索する。次は20分後。なんだかやたらと時間がかかるし、乗り換えが3回もある。でもこれに乗らないと、帰れないから(涙)。次の新幹線が出るホームを探して、ウロウロします。やっと探し当てて、行列に並ぶ。ノドが乾いたけど、おとなしく並んでおこう。車内で飲み物を買えばいい。駅弁も買えなかったけど、車内販売で売ってるでしょ。駅弁がなくても、何か食べ物が買えたら満足だし。
新幹線に乗り込んでから知ったのですが、車内販売どころか自動販売機さえ無い新幹線があるのですね(涙)。ノドがカラカラなのに、何も売ってナイ(涙)。新幹線に乗ってる3時間の間、ずっとノドがカラカラ(涙)。遭難した気分(涙)。もちろん食べ物なんて、ありません。
やっと米原駅に到着! 地図で見ると駅の近くに平和堂があるから、そこでお買い物をしよう! 飲み物とお弁当を買って、野菜も買おう! 豪華な食事ばっかりで、野菜不足! 野菜が食べたい!
……雨が降ってる(涙)。荷物と一緒に傘も宅配で送ったから、外の平和堂には行けない(涙)。 いいよ! 今日は貴生川駅近くの居酒屋さんに行って、一人でお疲れ会するよ! お買い物は、また明日行けばいいし! あれ? お財布の中に、お金がちょっとしか入ってない……。 居酒屋さんのお金、足りるかな? お金を下ろそう! 滋賀銀行のATMは、どこだ? キオスクのATMを見つけました。そしてバッグを探る。通帳がない。東京へ行くのに滋賀銀行の通帳はいらんやろうと思って、家に置いてきたのを思い出した(涙)。 お金がない(涙)。お金がないのは、首がないのと同じ(涙)。 居酒屋は、あきらめよう(涙)。
本当は貴生川駅からタクシーに乗るつもりだったのですが、お金がないので貴生川駅から乗り換えをして、最寄りの無人駅へ移動します。そこからタクシーに乗ろう。お金ないけど、たぶん足りるだろう。とにかく、おうちへ帰ろう。おうちに帰って適当にご飯を食べて、明日お買い物に行こう。
夜10時。誰もいない無人駅に降り立ちます。タクシーを探す。タクシーは、いない。タクシーどころか、車も人も皆無です。真っ暗。
……あんよがイタいから、タクシーに乗りたいでしゅ……。タクシーは、どこでしゅか? タクシー、いないでしゅ。…………歩くしか、ないでしゅ……。しかたないので、歩くでしゅ……。
トボトボ歩いていると、雨が降ってきました。ポツポツポツポツ……。最初で最後の東京行きのために、一所懸命にお洒落した東京行きの服に、雨が降り注ぎます。慣れないお化粧をした顔にも、朝シャンした頭にも、雨が降ってきます。
あんよがイタイ……。疲れた……。おなかすいた……。ノドが乾いた……。もう歩きたくない……。おうちに帰りたい…………。大好きなおうちに、帰りたい…………。
うえぇ~ん!! わあぁ~ん!!
気づいたら、泣いていました。泣きながら歩く。冷たい雨とあったかい涙で、顔はグショグショです。でもいいの。田舎だから、誰も見てない。ここで立ち止まっても、何も進みません。泣きながらでも、歩かないと。一人で生きてゆくっていうことは、こういうことです。泣きながら自分で何とか進んでゆかないと。痛い足でヨチヨチ歩いて、やっと家に到着しました。ただいま! 帰ってきたよ!
P様から優しいメールが来ていましたが、返信する元気はありません。県外に出張している彼からのメールも、明日にお返事しよう。今は大好きなおうちで、ゆっくり寝よう。
久しぶりのお布団は、私を優しく包んでくれました。豪華なホテルの豪華なベッドで寝るよりも、心安らぐ感触です。やっと眠れる……。
次の日も、そのまた次の日も、私は昏々と眠り続けました。旅行で疲れた身体が回復するのに、一日では足りません。お買い物に行く元気もなく、ただひたすら眠り続けました。濃厚な旅を終えて、やっとおうちに帰ってこられた。楽しく充実した旅行でしたが、やっぱりおうちが最高です。
また元気になったら、旅行に行こう。でも今度は、濃厚じゃない旅行を希望します。器のちっちゃい私には、濃厚すぎました。こんな濃ゆい旅行は、二度とごめんです!!
旅行を終えて二日目の夕方も、まだ私は寝込んでいました。枕元のスマホが鳴りますけれど、今は無理です。誰とも話す元気がない。回復したらコールバックしますから、今はカンベンしてください……。けれどもスマホは鳴り続けます。1分しても2分しても、まだ鳴り続けている。さすがにおかしい。誰だろう?
電話の主は、担当のPさまでした。いつもならメールなのに、電話とは??
私:……もしもし……東京では、お世話になりました。
Pさま:こちらこそ、お世話になりました。
私:原稿はまだ手を付けていないのですが……。
Pさま:今日は、そのお話じゃないのです。じつは私、コロナ陽性となりまして……。
私:え?
P:たったいまコロナが陽性と判明しました。誠に申し訳ないのですが、ソウマチさんは「濃厚接触者」となります……。ごめんなさい!!
私:濃厚……接触者ですか?
P:そうなんです! すみません!
私:作家だから大丈夫ですよ。これ、エッセイに書いていいですか? 濃厚な旅の結末が、濃厚接触者になる旅だったなんて、面白すぎますから。そのためなら私もコロナになります。
ここまで言って、やっと気づきました。何より先に、言うべきことがあるだろうが!!
私:Pさん、大丈夫ですか? (← 遅えよっっっ!)
P:私は症状が軽いので、大丈夫です! それよりソウマチさんが!
私:いやホントにネタさえできれば本望なので、私は大丈夫です。面白いネタを、ありがとうございました。
…………というワケで、私の濃厚な旅は「濃厚接触者になる」という濃厚なオチがつきました♪ おかげさまで私は感染していなかったのですが、感染しているかどうかわからない自宅待機中に「これは面白い!」と、ウキウキしながら旅行記を書いていた次第です♪
私のツイッターで、見た目が茶色い不穏な鍋料理をアップしたのをご存じの方もいらっしゃると思います。11月30日の、いかにもマズそうな鍋です。実際、マズかったです。じつは旅行前に食材をきれいさっぱり整理した後お買い物に行く元気がないまま濃厚接触者生活に突入しまして、家から一歩も出られないので食べ物が底をついて、大ピンチだった時の料理です! なんせ新鮮なお野菜が葉っぱ一枚もない状態で、すごく辛かったです!! お野菜、大事です!!
今は心ゆくまで、お野菜を食べています♪ 相変わらず味はマズイですけれど、それは私が料理ヘタだから。ww
濃厚なオチがついた濃厚旅行は終わりましたが、私の人生の旅はまだまだ続きます。どうぞごゆるりとお付き合いください♪