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濃厚旅行 東京で右往左往! 編

お話の前に、誤字脱字ご指摘のお礼を。昨日、公開したお話で、読み仮名の設定間違いを教えてくださった方、ありがとうございました! まだ小説家になろうの扱い方に慣れていないので、どなたが教えてくださったのかわからないので、この場を借りてお礼申し上げます! 助かりました!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 今思い返せば絶品だったサンドウィッチとワイン、その時はお店の豪華な雰囲気に圧倒されて、まったく味がしませんでした。白ワインでサンドウィッチを流し込んでいる時に、お店の奥から料理長様が出てきた! なぜ料理長とわかったのかというと、ありえない高さのコック帽を被っていたから。コックさんの序列は、コック帽の高さでわかるそうです。帽子が高いほど、偉い。でももし帽子をかぶっていなくても、彼が偉いというのは一目でわかる。美食の限りを尽くしているであろう食生活のおかげで、お肌がツヤツヤのピカピカ☆ 真っ白なコックコートには、シミ一つ付いていません。よほどお料理が上手でないと、保てない白さ! 料理長様は足早に店内を歩くと、お店の外に出ました。そしてクルリと方向を変えると、店内のお客様の食事のようすをじっと見つめています。私以外のお客様は、料理長様に気づかず楽しそうに食事をしている。なごやかな店内を、真剣なまなざしで観察する料理長。偉くなっても、現場主義! プロの仕事の一端を、垣間見ることができました。


 無事に昼食を食べ終えたら、大事な用事を思い出しました。ホテルに宿泊の領収証を、お願いしておかないと! 

 …………このお話、してもいいのかな? もしかしたら小学館から「それは秘密! エッセイに書いちゃダメ!」って言われるかもしれない…………(← 考えている)。 書いちゃダメかもしれないけど、読者のあなたに喜んでほしいので書きます♪ もしダメって言われたら、その時点で削除します♪ 今はまだダメって言われていない(そもそも書いていいか、訊いてないww)ので、書きます♪


 いくら長年の夢だったと言っても、高級な山の上ホテルに自分のお金だけで宿泊するのは無理です。今回泊まることができたのは、お仕事で上京したおかげです。小学館さんが、宿泊費や交通費の一部を負担してくれるから。そのためには、領収証が必要です。小学館さんが負担してくれる金額の数字を書くのは、さすがに自粛します。出版社や作家の実績によって違うでしょうし、私が超売れっ子作家なら、一部負担どころか全額負担してくださるでしょうから。ってかそもそも、超売れっ子なら編集さまが自宅まで来てくれるはず。呼び出されている私は、まだまだ駆け出し作家です☆


 私はヨチヨチ歩いて、フロントへ行きました。さっきチェックインの儀式をしてくれた美しい女性が、にこやかに対応してくださいます。領収証をお願いしていると、バックヤードから30代くらいの男性が出てきた。今まで眉目秀麗なホテルスタッフばかりでしたが、この男性も同じようにシュっとしている。さらに加えて、偉い人って感じがする! この方きっと、偉い人だ! その偉い方は女性に小声で「私が対応します」とつぶやくと、カウンターから出て私に近づいてきた! 誰か助けて! 偉い人、こわい!

 

偉い人:山の上ホテルへようこそ。わたくし、東田でございます。先ほど〇〇から、ソウマチ様がご到着とお聞きしました。お会いできて、光栄でございます。


 うええ!!! 親切なメールをくださった東田さんって、偉い人だったんだ!! お忙しいのに、浮かれたメールを送ってしまって、申し訳ございませんでした! 今となっては、反省と後悔しています! そしてイケメン・ドアマン! ついでの時でいいって言ったのに、ソッコーで東田さんに伝えてくださってたんだ! 仕事の速さと配慮がハンパない!! 色々、ごめんなさい!!

 私の反省と後悔も知らず、東田さんはニコニコです。


東田さん:ホテルは、お気に召して頂けましたでしょうか?

私:うぇ、うぇい。しゅごくキレイなホテルでしゅ……。内装も、しゅごいでしゅ……。


 動揺のあまり、日本語がおかしい。それなのに東田さんの目が、輝きました!


東:そうでございましょう! このホテルは、ヴォーリズの設計なのです!

私:えっ!? ヴォーリズだったんでしゅか!? 知らなかったでしゅ!


 ウィリアム・メレル・ヴォーリズは、アメリカ出身の建築家です。建築家であると同時に、リップクリームのメンソレータムを日本に紹介した実業家でもあります。この人、アホほど仕事が好きだったようで、滋賀県には彼の設計した建物がアホほどあります。アホな私でも知ってるくらい、滋賀では有名な人です。


東:このホテルはヴォーリズが設計しまして、長年あちこち改修しております。このホテルのすぐ近くに、ヴォーリズの設計事務所がございまして、そこに残されていた設計図をもとに大規模な改修も行いました。例えばこの床のレリーフ、これは建築当時の物です。


 東田さんが指さす床には、羅針盤をモチーフにした精緻な模様が、タイルで描かれています。


東:ここは長いあいだ絨毯貼りでしたけれど、大規模な改修を行った際に絨毯を剥がすと、このタイルが出てきたのです。

 

 そして彼は、優雅な仕草で天井を指差します。


東:床のレリーフを元にして、同じモチーフで天井にデザインを施しました。


 天井には床と同じ羅針盤のデザインが、真っ白な漆喰で細工してあります。そして気づけば、流れるように始まる館内ガイド!!


東:こちらの幅木や階段のタイルは、手描きの陶器です。


 やっぱり幅木とか手描きだったんだ。すげぇ金かかってんな……。


東:改修の際には、すでに割れていたタイルもございまして、それらと同じ風合い、色を再現したタイルを使用しています。


 げ。わざわざ古いタイルを再現するために特別注文したんだ! どこが新しくて、どこが古いかぜんぜんわからない……。職人ワザ、すげぇ……! そして山の上ホテル、すげぇ……!

 その他にも建物の説明をしながらさりげなく、本当にさりげなく東田さんの足が、バー・ノンノンの方角へ踏み出しました。ヤバイ! このままだと、本格的な館内ガイドツアーが始まってしまう! 今のガイドだけでも、十分に特別扱いです! すべてのゲストに同じ説明をしていたら、ホテルの業務が止まってしまう! みんなにできないサービスを、私一人が受けるのは違う! 逃げなきゃ!


私:しゅ、しゅごいでしゅね! それに東田さん、とてもお詳しいのでしゅね!

東:私は古い建物が好きでして、それで山の上ホテルに惚れ込んで就職した口ですので♡


 さっきのドアマンといい東田さんといい、このホテル、どんだけ愛されてるんだ……。


私:あ、あちこち見て、わかんないコトあったら、また教えてもらいましゅ! さいなら~!


 脱兎のごとく、逃げだす私。たった一泊しかしないのに、皆さん親切すぎる! 恐れ多いです!

 部屋へ逃げ帰って、一息つく。ふぅ。高級ホテルは、すごいなぁ! こういうのをホスピタリティと呼ぶのでしょう。勉強になります! 大きなベッドにダイブして、大の字になって寝転ぶ。この部屋、一泊の料金が私のボロアパートの一か月分の家賃より高いんだよなぁ……。最初は高いって思ったけど、これだけ配慮が行き届いてたら、高くはないよなぁ……。でも貧乏な私には、高いんだけど。知らない世界が、たくさんあるなぁ……。


 そうこうしているうちに、夕飯の時間になりました。喫茶室に予約をしているので、時間通りに伺います。さっきメニューを見て気になっていた、小海老のロングマカロニグラタンを注文する。それと、白ワイン。金はないが、酒は飲む!

 ワインをすすりつつ、お料理を待ちます。店内は満席ですが上品なお客様ばかりなので、和やかな雰囲気です。上等なお洋服を着た方たちが、いかにも慣れたようすでお食事をしている。家族連れだったり、恋人同士だったり、楽しそうです。その中に二人、ようすの違う人を見つけました。どちらも一人で食事をしている女性です。お二人とも30代くらい。お昼に見かけた退屈そうなセレブと違う違和感を感じる。日曜日の夜に、高級ホテルで一人で食事をする女性……。熱心にずっとメニューを見ているようすから、常連さんとは考えにくい。お一人はワインを、もうお一方はプリンアラモードを、食事の途中で追加注文したことからも、お店に慣れてないようすが伺える。この二人、何者だろう?


















 私と同じ、駆け出し作家だな…………。




 

 彼女たちに確認したわけではありませんが、出版社の建ち並ぶホテルの立地や日曜日ということから、まず間違いないと思います。さりげない風を装っているものの、内心動揺しているようすが伺える。遠くの方は見えませんが、近くの方はバッチリ見える。彼女が着ているブラウスと長いスカートに少しだけシワが寄っていることから、スーツケースに服を入れて移動してきたのがわかる。フォーマルな服装なのに、腕にはゴツイG-shockの時計、足元はゴツイローファー。きっとこの日のために、フォーマルなお洋服を用意してきたのでしょう。そして一人の食事に耐えられないのか、ずっとスマホでツイッターをしています。画面を見ながら「いいね」を連打して、運ばれてきた料理を撮影してアップして、フォークで料理を口に運びすごい勢いで食べている。インスタでなくツイッターというところが、私の心に響きます。インスタ、お洒落だもんね。私もインスタのオシャレな世界に馴染めず、ツイッター派です(涙)。でもね、せっかく精一杯のオシャレをしていらしたのですから、お食事中にスマホを見てはいけません。それ、作ってくださった方にもサービスしてくださるお店の方にも、とっても失礼ですから(涙)。慣れないセレブな雰囲気にキンチョーするのはわかるけど、スマホは見ちゃダメ……。

 まるで自分を見ているようで、胸が痛い……。この場の空気も不安ですが、明日のお仕事も不安なのでしょうか。私だって、同じです。はるばる滋賀から出てきて、面と向かってダメ出しをされるためにノコノコ出かけてゆくのですから……。


 明日のことを考えて落ち込んでいると、ホカホカのお料理が運ばれてきました。メニューにわざわざ「小海老」と書いてあったのに、親指くらいの大きなエビがゴロゴロ入っています。そして量が多い! これでもかと敷き詰められたチーズと、ふんだんに生クリームを使ったホワイトソース、パスタは普通の長さの半分くらいで、太さは2倍。こんな高級なパスタ、食べたことありませんから!


 一所懸命に食べましたが、5分の1しか食べられませんでした。スマホは失礼なんて他人様をディスっておいて、料理を残すという一番やっちゃいけないことをしてしまった。私が一番、最低や(涙)。


 スーツを着た黒服の女性に、チェックをお願いします。その後もチョビチョビ食べてみたけど、明日の不安で胸が一杯で、食べられない。落ち込んでいると、可愛らしいメイドさんが近づいてきました。


メイドさん:お昼はご予約を、ありがとうございました♪ すぐにご挨拶に来たかったのですけど、お食事がお済みになってからで、申し訳ありません。


 昼に予約をお願いしたメイドさんが、わざわざご挨拶に来てくれた!


私:おかげで晩御飯を食べられました。でも、ごめんなさい。明日の仕事のことを考えていたら落ち込んできて、お料理をたくさん残してしまいました。シェフには最高に美味しかったとお伝えください。お味はすごく良かったのですけれど、私サイドの問題で食べられなかったと、伝えてください。


 可愛いメイドさんは小首をかしげると、ニッコリ笑って言いました。


メイドさん:明日のお仕事、頑張ってくださいね♡ わたし、応援しています♡


 うわああああ!!! 君のその笑顔と応援で、明日は頑張れるよおおお!!!! 優しさを、ありがとう!!!! そしてこのホテル、どんだけ配慮が行き届いているんだあああああ!!!!!

 優しさに倒れそうになりながら、部屋に戻ります。最初は文豪たちが愛したホテルという動機で決めたホテルですが、今はスタッフの皆さんの人間力にメロメロです! 山の上ホテルと書いて、ホスピタリティと読むのが正解! ここは気遣いと優しさの殿堂!!!


 一息ついたら、タバコが残り少ないのに気付いた。買いに行かなきゃ! コンビニは、ホテルから90mの距離です。杖をついてヨチヨチしながら、夜道を歩く。夜道と言っても滋賀とちがって、あちこちに電灯があるので、明るい夜道です。


 お店に入ると、ガッシリした中近東の顔をした外国人男性がレジにいました。さすが都会。店員さんは、外国人! なんか、カッコイイぞ!


 私:502番のタバコを、2つお願いします。


 外国人男性は無言でタバコを取ってくれます。


 私:ごめんなさい。1万円札でお願いできますか?


 彼は無言で1万円札を受け取ります。万札なんか出してごめんなさい。私も福沢諭吉と別れたくはないのですが、お財布に彼一人しかいないんです。さよなら、諭吉。いつかまた再会しましょう!

 1万円札を渡した私は、お釣りの9千円を待ちます。でも彼は、するどい目つきで私をニラんだまま無言です。


彼:………………。

私:………………。


 彼は1万円札をレジに入れ、私にタバコを渡したまま、1ミリたりとも動きません。私たちはニラみあったまま、空気が固まります。





















私:お釣り、返せやぁ~! 

彼:うひゃひゃひゃひゃ!


 二人だけの店内に響き渡る、彼の笑い声!


彼:あなた、お金持ちでしょう!? お釣りは、いらないでしょう!?

私:いらんことあるかぁ! こちらとら、クソ貧乏やぞ! その9千円なかったら、家に帰れへんわ!

彼:あなたは、どこから来ましたか? 仕事ですか?

私:滋賀から来ました! 仕事で東京に来ました!

彼:ボクは、ウズベキスタンから来た〇〇です! シガ?? どこですか?

私:田舎です! 京都のお隣!

彼:おお! それは遠い! ウェルカム! トーキョー!

私:サンクス! 

彼:トーキョーは、どうですか? シガとは違う?

私:ぜんぜん違う! 東京は、人が多い! 都会です!

彼:トーキョーの人はね、淋しいです。

私:淋しい? なんで?

彼:トーキョーの人はね、話しかけても返事がない。

私:人が多いからね。 たくさん人がいるから、毎回お話してると大変なのよ。

彼:あなたはね、あったかい!

私:うはは! ありがとう! サンキュー ソウ マッチ!

彼:家族は?

私:家族? お母さんがいるよ。

彼:どこに?

私:(えらい、突っ込んで訊いてくるな)お母さんは、福岡県にいます。

彼:それだけ?

私:兄と、兄の奥さんと、二人の子どももいるよ。

彼:それだけ?

私:うん。それだけ。(何でそんなこと、知りたいんだろ?)

彼:夫は?

私:夫は、いないよ。


















彼:じゃあ、ボクと結婚しましょう! ボクと、結婚してください!

私:はああっっっ!?


 いきなりプロポーズされた! ツイッターには「会って5分でプロポーズ」って書いたけど、こうやって書いてみたら5分もたってない! 2分くらいっっっ!? 会って2分でプロポーズ!!


彼:ボクは、あったかい人と結婚したいです! だから、あなたと結婚したい!

私:ちょっと待って! 待って! 私、夫はいないけど、彼はいるから!

彼:カレ? カレって、何ですか? ボクには、わからない!


 ウソつけ! 今まで流暢に日本語しゃべってたやんけ!!


彼:ボクと、結婚してください!

私:ムリムリムリムリ! だいたいあなた、何歳なの!?

彼:ボクは27歳です!

私:私、50歳だから! あなたの倍の年齢ですから!

彼:ボクは、ムリじゃない!

私:だから私がムリだっつうのっっっ! それに彼氏がいますから! 彼氏、恋人、ステディ!!


 その時、お店にお客さんが入ってきました。今がチャンス!!


私:お釣り! 9千円! ちょうだい! 返してっ!!


 彼はイヤイヤお釣りを渡しながら、なおも食い下がります。


彼:この後、待ってて! 一緒に帰ろう!

私:ムリだから! 一緒に帰るのも、結婚もムリだから!!

彼:ちょっと、待ってぇ~……!


 ダッシュで店から逃げ出します! なんでこんなことになったんだ!?


 ホテルへ逃げ帰って、ボーゼンとします。今まで東京へ来るたびにナンパされたけど、私が若かったからだと思ってた! 50歳にもなって杖ついてスッピンの私が、まさかプロポーズされるとは!!! 過去最高記録更新! ナンパどころか、プロポーズされた!! 東京、コワイ! コワすぎるっっっ!!!!!! これだけでもコワイのに、明日は小学館の本社へ突撃! 帰りたい! 真っ暗で静かな誰もいない滋賀県に、今すぐ帰りたい……!!


おうちに帰りたいよおぉぉぉぉぉ~!!!


(つづく)

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