ミラクル & ちょっと
わたし、凹んでいたのです。べつに、誰もわるくないのですが……。
先日のエッセイ「死ぬかと思った」を読んでくださった初めましての方(星さん・仮名)から、メールを頂きました。
ご親切に「病院を受診されたほうがいいのでは?」と、わたしを心配してくださる内容でした。
私は急いで、お返事を書きました。
ソウマチ:大人(更年期)なので、お医者さまから仕方ないと言われました。治療は受けているので、大丈夫です。
星さん:ソウマチさんは、もっと若い方だと思っていました。(途中は省略)。今日は夜遅くなったので、眠りますね。スマホの音は出ないように設定してあるので、メールを送ってもらっても大丈夫です。おやすみなさい。( ← ※ 配慮の行き届いた、丁寧なお返事)
そして、メールのやり取りが終わりました。
星さんは、見ず知らずの私を心配してくださる、とても優しい配慮の行き届いた方です。それなのに私は、変な方向に暴走しました。
「あああ! 見ず知らずの方に、ご心配をかけてごめんなさい! あと、若くなくてごめんなさい! 私がもう20歳若かったら、ご期待に添えましたでしょうか!?」
今思うと思考が、変な方向に突っ走っています。一人で考えていると、思考の歪みに気が付かない。そして一日たった後も、まだクヨクヨ(!)していました。さすが! 妄想名人!
「心配かけちゃったな~。私が30歳若かったら、お友達になれたのにな~……」
星さんの預かり知らぬところで、勝手に妄想して落ち込む私。さすが、妄想大魔王☆
落ち込んで、お風呂に入る元気もありません。早く入らないと、お風呂が冷めちゃう。
クヨクヨしていると、星さんからメールが来た! えっ!? なんでっ!? 私のこと、嫌いなのでは!? (← べつに嫌われてない)
「ソウマチさんが探していた昔の一人称を、わかりやすく書いた表があったので送ります」
えええ!? 私、若くないけど、イイんですか!? (← そもそも、一度だってワルイと言われてない。勝手に妄想して落ち込んでただけ)
あわてて表を見てみると、使われていた一人称が時代別に書いてある! 私が探していた答えが、表になっている!
えっと、この表を探してくださるということは、私が昔の一人称で困っているとご存じだからで、ご存じということは、私の書いたエッセイを読んでくださっているということで、もしかしたら長文の講演会の原稿まで読んでくださった!? あの長い原稿を!? いや、読まなくてもわかるんだっけ!? え!? どこまで読んだら、わかるんだ!? いいの!? わたし、若くなくてもいいの!? スプラッタムービーくらい出血するけど、いいんですか!? (← 落ち着け!)
あわあわしながら、お礼を書きます。少なくとも、今は嫌われてないはず! (← 一度も嫌われていないことに、気づいていない)
ソウマチ:ありがとうございます! 嬉しいです! 助かります!
星さん:お役に立てたら、良かったです。以前に読んだ三谷幸喜のエッセイで「ドラマ新選組!で『僕』という呼称を使おうとしたら、その時代に『僕』は使えないことがわかって、困った」と書いてあったのを読んだりしたので、ちょっと興味がありました。
本物の星さんのメールは、もっと詳細に書いてありましたが、ここでは割愛します。
私のエッセイを読んで心配してくださったり、困っていると知って調べてくださった! あと、嫌われてなかった! 嬉しくて、ありがたくて、冷や汗が出てきます。
ソウマチ:嬉しくて汗をかいたので、お風呂に入ってきます!
ウキウキしながら、お風呂に入ります♪ さっきまでクヨクヨしていたのが、ウソみたい。ww
星さん、親切だな~! 嬉しいな~! ネットは怖いとかいうけど、優しい方もいるんだな~! 三谷幸喜のエッセイは私も読んでるけど、新選組!を書いてた頃のエッセイも読んだのに、私は読みこぼしてたんだ~。 同じ文章を読んでも、違うところが記憶に残るんだろうな~。時代的に「僕」が使えなかったていうのも読んだはずだけど、ぜんぜんおぼえてないな~!
ちょっと、待て。
「僕」だと??
いま校正中の二巻に、おもっきし「僕」を使っとるやんけえええええ!!!!
「僕」って言ってるキャラ、今回の主役やぞおおおおおお!!!!!!
どうするんやああああああ!!!!!!
えっと、えっと、どうしよう!?
どうしようって、使えへんもんは、使えへんがな!
「僕」を別の一人称に変えないと!
変えるって言ってもアンタ! 「僕」と「ワシ」じゃ、キャラの性格がぜんぜん違うやろ! 「僕」と同じノリの、別の呼称はあるんかい!?
無いから困ってんねん! さんざん悩んで「僕」にしたのに、それが使えへんとは!
三谷幸喜が使えへんなら、アンタも使えんわ!
わかってるから、困ってんねん!
終了~! ぜんぶ書き換え~! ふり出しに戻る~! (号泣!)
でも星さんのおかげで出版前にわかったから、良かったです。本が出ちゃった後で「その時代に、『僕』は使われてないんですけど?」って指摘があったら、大事件ですから!
星さんは私の疑問を解決してくれただけでなく、これから起こるはずだったトラブルまで防いでくれた! すごい! これって、ミラクル☆ 星さま、神様、ありがとうございます!!
ここまで考えると、ムラムラしてきました。このお話を、エッセイに書きたい! 愛する読者さまに、読んでほしい! そのためには、星さんの許可を取らないと! でも遅い時間になってしまったし、明日になったら星さんにメールをしよう!
明日は彼の車のオイル交換へ、一緒に行きます。ディーラーさんでやっている「秋の感謝祭り」で、タコヤキをもらう予定♪ 出かける前に星さんに許可をお願いして、OKだったらタコヤキを食べた後にエッセイを書いて、すぐに公開しよう! カンペキ!
翌日。
早朝から、二巻の校正を進めます。「僕はどうするんだ問題」もありますが、それとは別に担当さまから「誰が言ったの?」「〇〇って、なに?」「この建物の形状は?」などの、ご指摘が多数。一つずつ説明してゆく。私はわたしで担当さまに「〇〇ですが、伝わりませんか?」「不明なのは1~3の、どれでしょう?」などの疑問を投げ返します。
アタマを酷使して「これ以上は、考えられません!」という状態までやる。追い込みすぎて、ボーっとします。
メールを送るのに常識的な時間になるのを待って、星さんにメールで「エッセイに書いてもいいですか?」とお願いしました。タコヤキをもらいに行くので念のため「返事が遅くなります」と書きました。でも食べてすぐに返ってくるから、お待たせするのは少しだけのはず。
彼が来たので、車に乗り込みます。ディーラーさんはすぐ近く。星さんから、すぐに快諾のお返事がありました! ありがとうございます! すぐに帰宅するから、おうちからお礼メールをしよう!
タコヤキを食べたけれど、まだお腹がすいています。50メートル先のまわるお寿司に行って、大満足! 早くおうちに帰って、エッセイを書こう!
彼氏さん:今日は天気がいいから、ちょっと紅葉でも見に行きましょうか?
まだ午前中だし、ちょっとならいいか♪ 帰りにケーキでも買って、エッセイを書いたら食べよう♪
彼氏: 到着するまで、寝てていいですよ。着いたら、起こしますね。
ありがとうございます。朝から頭を使ったので、眠くなってきました。グウウ………。
彼氏: 着きましたよ~♪
目が覚めたら、夕方でした。ここは、どこですか?
彼:九頭竜湖です♪
私:私の家から、どんくらいの距離ですか?
彼:200㎞くらいです♪
私:お前の「ちょっと」は、200㎞なのか?
彼:??? うん。
読者さま! 今これを読んでいる、あなたに問いたい!! 200㎞って「ちょっと」ですかっっっ!? 私の「ちょっと」は、2㎞です!! あなたの「ちょっと」を教えてください!!
私:確かにキレイな紅葉ですけど、ちょっと急ぎのメールをします!!
星さんにお返事を書かないと! 紅葉どころじゃない!!
私:…………。スマホの画面に、電波の表示が出てないのですが???
彼:あ! ホントだ! ここ、電波が入らないんだ!! すごいね!
すごいねじゃねぇよ! どんだけ人里離れてるんだよ!!
ボーゼンとしている間に、どんどん暗くなってゆきます。山の夜は、早い……。
なんで私、こんなところにいるんだろう??
星さん、ごめんなさい。私、拉致られたみたいです……。
その後、電波は入るようになったのですが、移動中にスマホを見ると気持ちがわるくなってしまうので、画面を見ることができない。家に帰り付いたのは、23:34分。こんな遅くにメールをしたら、ほんとに嫌われてしまう……。ってか一日お返事してないから、すでに嫌われているかも……。
ほんの一時間お出かけするだけのはずだったのに、何でこんなことになったんだろう?
空白の一日が過ぎて、今に至ります。ほんとに何だったのだろう???
星さんのミラクルを書きたかっただけなのに、ちがうミラクルに振り回された一日でした。
あなたも「ちょっと」には、くれぐれも用心なさってください!!!!!