ムカムカムカ!!(怒)
私は心がせまいです。自分で書いてちょっと凹みますけれど、残念ながら心がせまい。
ちょっとしたことでムカムカして、一人で「ムキイイイ!」って怒っています。
そんなおチョボの私が、とある温泉に行きました。クツをロッカーに預けて、裸足で廊下を進みます。
喫煙所(私は心がせまい上に、ヘビースモーカー)に行ってみると、そなえつけのスリッパを履いて、外でタバコを吸うようになっていました。
置いてあるスリッパは、あちこちにバラバラしてあります。
「もう! まったく!」とブチブチ言いながら(← 私は心がせまい)スリッパをはいて、外に出ました。
ベンチに座ってタバコに火をつけると、バタバタと足音がしました。
「ギャハハ! バカじゃねぇの、オマエ!!」 「しねよ! オマエ!」と言いながら、20代の男性が2人来た。うるさい。
大声で話しながらバラバラになったスリッパを蹴飛ばして、さらにバラバラにしながらスリッパをはきます。そういうコトするから、バラバラになるんだよ!(← 私は心がせまい)
2人のガキんちょは根元が黒い中途ハンパな金髪で、安っぽいニセモノのアクセサリーをジャラジャラつけて、派手な花柄の短パンに、ダルダルのTシャツを着ています。全体的にだらしなくて、不潔な感じ。
キン〇マが見えそうなほど大きく足を広げてベンチに座って、タバコに火をつけます。
ブっっっ!
何の音かと思ったら、ガキAがオナラをしました!
さすがに心のせまい私でも、出ちゃったもんは仕方ナイか……と思っていると、また音がします。
さすがにB君が私を気にして「おい、オマエ」って言ってくれたのですが、ガキAは「ギャハハ!!」とバカ笑いしながら、再びやらかしました! 3回もって、ワザとじゃん!
レディ(← 私のことです。反論は、受け付けます)の前で、ワザと放屁を!! なんて失礼な!
私は心がせまいので、鬼のような顔になりました。でもこんなバカに、文句を言う価値はない!
無視! 無視! ムキイイイ!!!
ガキAのスマホが鳴りました。バカなので、着信音も無意味にデカイ。
「はああっ!? タオルっ!? 洗濯機の使い方がわからへんってか!? バカか、オマエ! ギャハハ!!」
バカの友達は、バカ。類は友を呼ぶ。洗濯できないバカ。そしてバカに訊いてくるバカ。ググレカス。
「んなもんテキトーにナベとか茶わんブチこんで、スイッチ押せよバカ! ギャハハ!」
5万円賭けてもイイがオマエ、食器洗い機のこと言ってんだろ? 電話の向こうのバカが訊いてるのは、洗濯機の使い方だよ。食洗器じゃねぇよ。ってかこのバカ、私が持ってナイ食洗器持ってるんだ。私なんか、お湯さえ出ないのにキイイ!! (← 私は 以下略)
バカが人目もはばからずバカっぷりをご披露していると、新しいお客さまが入ってきました。
げ! バカたちの親玉か!? バカのボスか!?
その男性は40代くらい。派手なシャツと短パンで、髪の毛はフツーの黒色だけど、金のネックレスを付けている。さすがにガキと違って本物の金だけど、見た感じは似たりよったり。
うわぁ……バカのボス来た~……と思っていたら、なぜかガキたちは静かになりました。
人目も気にせずスマホで話していたAは、そそくさと電話を切った。
あれ? 見た目は似てるけれど、お知り合いではない??
その男性が静かに近寄ってくるとガキBはあわてて立ち上がり、男性にベンチを譲りました。
そしてバカAの横に、ちょこんと座る。さっきまでキンタ〇が見えそうなほど足を開いてデカイ態度で座っていた2人が、足を閉じておとなしくなってる!!
あまりの変わりようにビックリではありますが、わからないでもない。
だってその男性、どう見てもカタギに見えません。ヤ〇ザみたい。見た目がヤク〇っぽいというより、纏っている空気が、カタギじゃない。けして大きな身体ではありませんが、無駄な肉は一つもないし、何より隙がない。ケンカをしても、勝てる気がしない。会社員ではゼッタイないし、職人さんにしては目つきが鋭すぎる。殺し屋? お仕事は、殺し屋さん??
ガキんちょたちはビビったらしく、早々にその場を離れてゆきました。
だから! スリッパをバラバラするなよ!!
ムカつくバカたちがいなくなって、私は心の中で男性に拍手を送ります。ありがとうございます! おかげで平和が戻ってきました!
落ち着いてタバコが吸えるようになったので、私は二本目のタバコに火を点けました。
ふうう。タバコがおいしい!!
彼はタバコを一本だけ吸うと、静かに喫煙所から離れてゆきました。
が、スリッパの所で急にかがんだ。なんですか? 何か落とし物ですか?
彼はバラバラになっていたスリッパ(約10足)を一つひとつ拾うと、ぜんぶ!
ぜんぶ! きちんと揃えて、その場を後にしたのです!!!!!
なんて素敵! なんて奥ゆかしい!! あなたは人の鑑です!
誰がはいたかわからないスリッパを、自分がはくワケでもないのに、きちんと揃える!
しかも10足も!! できません! 私には、できません!!
たとえ見た目がヤ〇ザでも、あなたは素晴らしい方です!!!
私も、あなたのような素晴らしい人物になりたいです!!
なりたいですが、ムリです。
だって私、心がせまいから。